新居浜一家殺害事件を考える 無期懲役求刑

現在の日本の司法では精神障害の影響で心神喪失(善悪を判断する能力が失われた状態)と判断された場合は無罪を言い渡し、心神耗弱(善悪を判断する能力が衰退した状態)と判断された場合は刑罰を減じる扱いとなっています
新居浜市で高齢者夫婦とその息子をナイフで刺殺した河野智被告については、犯行時の刑事責任能力をどう判断するかが争点となっています
検察側は河野被告が妄想を伴う統合失調症の影響で心神耗弱状態にあったとし、本来なら死刑を求刑すべきところを無期懲役の求刑としています


愛媛県新居浜市で一家3人をナイフで殺害したとして、殺人などの罪に問われている住所不定・無職の河野智被告(56)の裁判で検察側は12日、無期懲役を求刑しました。
起訴状などによりますと、河野被告はおととし10月、新居浜市垣生の住宅で岩田友義さん(当時80)と妻のアイ子さん(当時80)、職場の元同僚だった、三男の健一さん(当時51)の胸などをナイフで突き刺し、殺害したとして殺人と銃刀法違反の罪に問われています。
裁判は今月6日から始まり、河野被告の刑事責任能力の有無やその程度などを争点に審理が進められていました。
12日の公判で検察側は、犯行当時被告は、統合失調症を患いその影響を受けていたが、判断能力を完全に失っていたわけではなく心神耗弱だったと改めて主張。
そのうえで「強固な殺意があり、凄惨な犯行で被害結果は重大、遺族も厳重な処罰を望んでいる」などとして無期懲役を求刑しました。
一方の弁護側は、犯行時の被告は心神喪失状態で、刑事責任は問えないとして、無罪を主張しました。
その上で、被告人は妄想型の統合失調症を発症していたことから「生活は妄想に支配されていたといっても過言ではない」
さらに、“電磁波攻撃”されていた元同僚の健一さんを殺害する目的に対して「行動を制御できるほど正常な心理が残っていない可能性があった」と説明しました。
判決は今月18日に言い渡される予定です。
(iTVあいテレビの記事から引用)


繰り返し書いたいますが、河野被告は統合失調症による妄想に苛まれるようになってすぐに犯行に至ったわけではなく、それまで相当の時間が経過しています
警察署は被害者からの通報を受け、河野被告の件を保健所に5度も連絡していたものの、コロナウィルス対応に忙殺された保健所は河野被告を放置した(何らかの対処をしたのかどうか、報道されていないので不明です)のでしょう。こうした行政の不作為がなければ防げたかもしれない事件です。3人もの被害者が出た殺人事件ですが、保健所は何も感じず何も思わないのか、と言いたくなります
河野被告個人に責任を押しつけるのは簡単ですが、河野被告とて自ら進んで統合失調症になったわけではありません
こうした事件が起こらないよう事前に対処する仕組み・法制度がありながら、機能しなかったのが問題です。保健所の側にも言い分があろうかと思いますので、地元メディアには事件の本質を考えた上でもっと突っ込んだ取材をしてもらいたいものです
公判でのやり取りを記事にするだけが報道ではないはずです
さて、裁判官は検察の求刑をどう受け止めるのでしょうか。3人殺害の事件だけに心神喪失を認めて無罪を言い渡すのは難しく、求刑通り心神耗弱として無期懲役を言い渡すものと予想します

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