仙台女子中学生刺傷事件 尾張被告の初公判
2022年7月の朝、仙台市太白区で登校途中の女子中学生2人を刃物で切り付け大けがをさせた事件で起訴されていた尾張裕之被告の裁判が始まっています
逮捕時、(犯行について)覚えていないと供述していた尾張被告ですが、取り調べの段階では犯行についてあれこれ供述していたようです
去年7月、仙台市内で女子中学生2人を包丁で刺して、殺害しようとした罪などに問われている男の裁判員裁判で、男は被告人質問で、女子中学生を狙った理由について、「小さく抵抗されずに殺せると思った」と話しました。
殺人未遂などの罪に問われているのは住所不定・無職の尾張裕之被告(45)です。
起訴状によりますと、尾張被告は、去年7月7日、仙台市太白区の路上で登校中の女子中学生2人を包丁で刺し、全治1ヵ月の大けがをさせるなどしたとされています。
17日、仙台地裁で開かれた被告人質問で、検察側に女子中学生2人を狙った理由について聞かれた尾張被告は、「背が小さく、抵抗されずに殺せると思った」などと答えました。また、犯行を思い立ったのは、当日の朝だったと話しました。被告は17日の被告人質問の中で「人を殺して死刑になりたかった」と繰り返し、弁護側や検察側からの質問に対しても受け答えがあいまいで、弁護側は、尾張被告が長年、統合失調症を患っていて、犯行時は心神喪失や心神耗弱の状態だったため無罪または減刑されるべきだと主張しています。
判決は11月29日に言い渡されます。
(東北放送の記事から引用)
16日仙台地方裁判所で開かれた初公判で、被告は起訴された内容について発言を求められると「ありません」などと述べました。
続いて弁護側は「事件当時、被告は統合失調症で心身喪失、もしくは心身耗弱の状態だったため無罪か減刑するべきだ」と述べたうえで、中学生1人に対しては事件の記憶がなく、故意ではないため犯罪は成立しないなどと主張しました。
これに対し、検察側は「被告は統合失調症を患っていたが、症状である被害妄想は犯行に影響せず、責任能力に問題はなかった。いずれの中学生に対しても故意だった」などと主張しました。
今後の裁判では、事件当時、被告に責任能力があったかどうかや2人のうち1人について故意だったかどうかが争点になる見通しです。
(NHKの記事から引用)
検察側が起訴に踏み切ったからには、精神鑑定の結果として犯行時被告は妄想など統合失調症の影響下にあったとは考えられないとする鑑定結果が出たのでしょう。何でもかんでも統合失調症のせいにして刑罰を免れようとするのは許容されるものではありません
ただ、裁判の受け答えを記事で読む限り、統合失調症の影響で思考力が低下し、明確な受け答えができていないように伺われます。もちろん、思考力が低下しているからといって前後不覚のまま女子中学生を切りつけたりはしないのであり、尾張被告なりの意図をもって犯行に及んだのでしょう
それが「人を殺して刑務所に入るため」と供述されたり、「死刑になりたかった」との供述になって語られています。つまりは犯罪をなし、罰せられるのが目的です。明確な目的のための犯行とすれば「故意」と判断されます
しかも、背丈が小さく抵抗されない女子中学生を選んで襲いかかったと述べているのですから、襲う相手を選ぶだけの分別があったものと解釈できます。なので、まったく無分別なまま誰彼もわからず、刃物をで襲いかかった通り魔事件ではないと考えられます
が、そうした形式的な責任能力論や、殺意の有無といった議論より、尾張被告の中で犯行当時何が起きていたのかが問題でしょう。常日頃から女子中学生を刺殺しようと思い描いていたのではなく、犯行当日思い当たったと述べており、その日の朝にきっかけとなる何かがあったのでは?
一般的(?)にあるのは、ニュースで強盗やら殺人、通り魔事件などの報道を見て、その刺激が誘い水となって犯行を思い立ってしまうケースです
年末に郵便局強盗事件のニュースが流れると、借金に追われ精神的に思い詰めている人はニュースに刺激を受け、郵便局強盗に着手してしまう場合があります。もちろん、尾張被告がどのような刺激、きっかけに犯行に踏み切ったのかは有罪・無罪の判断に直接は影響しませんし、裁判官は興味を抱かないのでしょうが
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