宮城県涌谷強盗殺人 松川被告に無期懲役判決
ストーカー男による殺人事件の場合、懲役20年から16年くらいが相場です。遺族はとても納得できないわけですが、判例という縛りがあってどれほど理不尽な犯行でも、過去の判例を大幅に上回る判決は出ません(であるからこそ、判例による縛りをどうにかする必要があります)
他方で、強盗+殺人となると基本的に無期懲役です。被告が未成年者だと懲役25年の有期刑になる場合もありますが。被害者が複数人いれば死刑判決もあり得ます。これは過去の時代背景や社会の風潮が影響しており、怨恨による殺人よりも金銭目的の強盗+殺人を重罪として処罰すべきとの考えが一般的だったためでしょう
長々とした前置きはここまでにして、強盗致傷事件で無期懲役判決が言い渡された裁判を取り上げます
宮城県涌谷町の住宅に金銭を奪う目的で押し入り、ハウスクリーニング業の三川栄治朗さん(64)の上半身を刃物で刺すなどして、殺害した疑いで逮捕・起訴された松川雄太郎被告(27)に、仙台地裁は無期懲役を言い渡しています(求刑も無期懲役)
2022年11月、宮城県涌谷町の住宅で自営業の男性を包丁で切りつけ死亡させた罪に問われている男の裁判員裁判が、仙台地裁で始まった。周囲の人が「人当たりが良かった」と語る被害者は、なぜ亡くならなければならなかったのか。法廷で被告の男の口から語られたのは、「借金があり生活を立て直そうと強盗を企てた」という身勝手な動機だった。
か細い声で容疑を一部否認
強盗致死の罪に問われているのは、住居不定無職の松川雄太郎被告(27)。
起訴状によると松川被告は、2022年11月19日の午後7時45分ごろ、宮城県涌谷町の自営業の三川栄治朗さん(当時64)を、現金を奪う目的で包丁で切りつけるなどして、死なせた罪に問われている。三川さんの死因は出血性ショックだった。
11日、仙台地裁で開かれた初公判。
送検時とは一転、丸刈り頭で、紺色のジャージ姿で入廷した松川被告。
体の前で手を組み検察官の起訴状朗読をじっと聞いていたが、仙台地裁の宮田祥次裁判長から何か言っておくことがあるかと尋ねられると、「三川さんの前に立ちはだかったことや、右手に持った包丁の刃先を向けた点については、やっていない。」と、か細い声で起訴内容の一部を否認した。
強盗致死罪が適用されれば、量刑は死刑か無期懲役となる可能性が高い。弁護側も、「強盗と被害者の死亡が密接には関係しておらず、強盗未遂罪と重過失致死罪を適用するべき」と主張した。
口座に1500円…金に困っていた
続く検察側の冒頭陳述では、松川被告と亡くなった三川さんの関係性が明らかになった。
2人は清掃業を通じて知り合い、松川被告は三川さんから仕事をもらうことがあったという。
「三川さんの金の支払いが遅く不満を持っていた」という松川被告。3つの銀行口座には合計で1500円ほどしか残っていなかったこと、消費者金融3社に対し、150万円の借金があったこと、元婚約者との民事裁判で80万円の慰謝料の支払いを命じられていることも、証拠調べで明らかになった。
検察は、強盗をして現金とキャッシュカードを奪い生活を立て直そうと1カ月ほど前から犯行を計画していたと指摘。包丁を持って三川さんと玄関で対面した時点で強盗が成立し、抵抗する被害者を刺した、計画的で危険な犯行であると強調した。
また、事件直前に包丁や目出し帽、ブルーシートなど、犯行に必要な物を周到に準備していたこと。犯行後には、仙台市内に、犯行に使った物を埋めたことなども明かされた。
(以下、略。FNNプライムオンラインの記事から引用)
「計画的な犯行でなおかつ、被害者が松川被告に向かってきた際に包丁の刃を向けており、加害の意志があったのは明らかだ」とする検察側の主張に対し、弁護側は「死亡は被害者が被告にタックルしたことに起因していて、強盗の実行行為中に発生したものではない」などとして、重過失致死と強盗未遂が成立すると主張していました
判決では、「目出し帽をかぶり右手に包丁を持つなど脅迫行為をしていて、遅くとも玄関先で被害者と対面した時点で強盗を開始したと認められる」と指摘し、「被害者を刺したのは強盗の開始後で、強盗の機会に死亡の結果が生じた」と強盗と死亡の関係性を認め、求刑通り無期懲役の判決を言い渡しています
松川被告はハウスクリーニングの仕事をしており、同業の三川さんから仕事を回してもらう関係でもあったようです。しかし、仕事の代金が三川さんからなかなか支払われず恨みを募らせていた…と供述しています。が、借金を抱えていた点を考えると独立して自営を始めるのが早すぎたのではないか、という気もします
雇われて仕事をするより独立した方が稼げるとの考えもあるのでしょうが、事業を継続するだけの資金を貯めておかないと長続きしません
なお、松川被告は無期懲役の判決を不服として控訴しています。弁護人の主張するところの、「強盗行為は未遂であるから強盗未遂罪を適用すべきであり、三川さんの死亡は三川さんが体当たりをしてきたことに起因し、偶然包丁に刺さってしまったもの」として大幅な減刑を求めるのでしょう。「これで無期懲役とか、冗談じゃない」と松川被告は言いたいのかもしれません
が、どう見ても強盗行為に着手した松川被告が原因で三川さんが死亡しているのですから、強盗致死罪に問われるのは当然です
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