戸田市中学校襲撃 少年院送致決定
埼玉県戸田市の中学校に刃物を持って侵入し、男性教員を刺して逮捕された少年の事件については、今年6月にさいたま地検から家庭裁判所に送致されたところまでブログに書きました。家庭裁判所の審判結果について言及するのを漏らしていましたので取り上げます
6月30日付けでさいたま家裁は少年院送致を決定しています
先にも述べたように、被害者が死亡していたら検察官に逆送となり、刑事裁判を受けて服役する展開だったでしょう。ただ、脇腹を刺された教師は腕も切りつけられ、動きに一部麻痺が残っているとも報じられており、決して軽微な怪我では済まなかったと書き添えておきます
2月に戸田市で猫1匹を殺害し、3月には同市の中学校で男性教員をナイフで刺し殺害しようとしたとして、殺人未遂と動物愛護法違反容疑で家裁送致された元少年(18)について、さいたま家裁(加藤学裁判長)は3日までに、初等・中等(第1種)少年院送致とする保護処分を決めた。決定は6月30日付。
決定理由で加藤裁判長は、殺人未遂事件について「他者の生命身体を顧みない身勝手かつ理不尽なもので、非常に悪質。あと数センチ深く刺していれば致命傷になり得た」と指摘。猫を刺殺した事件に関しても「殺した上、足や顎を胴体から切断した行為は残虐で足や顎を人目に付く場所に置いた」と説明し、「本件は世間の耳目を集め、社会に大きな衝撃を与えた」と述べた。
その上で「殺人未遂は検察官に送致することも検討の対象となり得るが、一連の手続きの中で自己の問題性と向き合い始めていて、矯正教育の効果が期待できることを考えると保護処分に付すべき」と指摘。少年院に3年収容し、矯正教育も2年6カ月程度が必要と見込まれるとした。
決定などによると、元少年は2月12~13日午前7時半ごろ、戸田市の道路付近で猫1匹の頸部(けいぶ)を刃物のような物で突き刺すなどし殺害。3月1日午後0時20分ごろ、戸田市立美笹中学校で試験中だった教室に侵入し、男性教員=当時(60)=の胸や腹などをナイフ(刃渡り約13・3センチ)で突き刺し、加療約6カ月を要する重傷を負わせた。
(さいたま新聞の記事から引用)
概ね21歳に達するまでの間、収容するよう家庭裁判所が処遇勧告を付けたものと推測されます。自分が少年院に勤務していた当時は、標準で12か月の収容期間で処遇計画を組むのですが、その後の院内でもトラブル(少年同士のけんか、教官への反抗など)で謹慎を喰らい13か月から14か月で仮退院という流れでした
当時と比べると、長期間の収容となるケースが目につきます。ただ、収容期間が長いから良いとか、短いから悪いとは一概に決めつけられません。少年院での経験が響かない子はまったく響かないままで、内面に大きな変化もなく仮退院を迎えます。他方で劇的に変化する子もいます(内面的な変容)
「矯正教育など効果はなく、無駄だ」という人もいますが、実際に仕事をしている側からすればそれは現場を知らない人、彼らや彼女らと接した経験のない人の言い分に聞こえます。少年院での教育は洗脳教育ではありません。彼らや彼女らの頭の中に手を突っ込んだり薬物を投与して人格を改造したりはしないので、限界があるのは否めないのですが、未熟だった「どうしようもないガキ」が一人前の大人へと成長する過程を目にする機会もあります
本件の少年の場合はどうなのでしょう。本人が「自分を変えるのだ」という自覚と強い意志をもって臨むなら、少年院の生活は無駄にならないはずです
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