女性アナウンサー脅迫 72歳の男逮捕
プラグマティズムの思想家の1人とされるG.H.ミードの著作集を読んでいるのですが、人格というのは個人そのものに宿るのではなく、社会との関わり(職場、教会、家族など)の中で形成され規定されるものという考え方をしているようです
ただ、そこで問題になるのが社会から孤立した人物の人格はどうなるのか、です。引きこもりや、家族と不仲で孤立した生活をする人たちがいます。所属集団を失い、他者との関わりが薄れてしまった場合、その人格は徐々に壊れてしまう危険があると推論できます
そうした典型の1つが、孤独な老人が引き起こす犯罪でしょう
72歳の老人が報道局の女性アナウンサーに脅迫状(自筆の手紙)を送ったとして逮捕される事件を取り上げます
放送局に勤務する女性に「ヌード写真を撮りたいので停留所に来てください」「もし来なかったりしたらコンクリート詰めにして海に捨てるので覚悟しておけ」などと強要したとして、72歳の男が逮捕されました。
強要未遂の疑いで逮捕されたのは、住居不定・無職の池田久幸容疑者(72)です。
警察によりますと、池田容疑者は今年8月、放送局に勤務する40代の女性に対して、直筆の手紙を郵送して脅迫し、義務のないことを行わせようとした疑いが持たれています。手紙には、次のようなことが書かれていたということです。
『ヌード写真を撮りたいので8月29日午後8時に市バスの烏丸今出川の停留所の堀川今出川方面に行く停留所まできてください』
『もし来なかったり誰かと一緒に来たりこの話を誰かにしたら後日貴女を誘拐してからホテルに連れ込んで強姦した後に体をボコボコに殴ってからコンクリート詰めにして海に捨てるので覚悟しておけ』
警察によりますと、池田容疑者と被害女性との間に面識はなく、女性の勤務先から警察に電話で相談があって事件が発覚しました。手紙の差出人には偽名が使われていたということですが、文面が特徴的なことなどから、警察が過去の犯罪データなどを確認。その結果、池田容疑者が過去に東京や名古屋でも女性アナウンサーに同様の手紙を送って逮捕されていたことがわかり、筆跡確認などの捜査から今回も池田容疑者の関与が浮上したということです。池田容疑者が6年前に東京の女性アナウンサーに宛てた手紙にも「あなたを誘拐してコンクリート詰めにして海に捨てる」などと記されていました。
警察の調べに対して池田容疑者は容疑を認め「ほかにもたくさん送りました」と供述しているということです。実際に、今回の被害女性と同じ職場の別の女性にも、同じ内容の手紙が送りつけられていたということで、警察はほかにも複数の余罪があるとみて捜査を進めています。
(毎日放送の記事から引用)
脅迫状を送り付けて何事かを要求するというのは古典的な犯罪の1つです。ただ、警察がそうした脅迫状を収集し、文体や筆跡など細かなところまで分析し、データベース化に近い状態で整理しているのを自分は初めて知りました
そこから垣間見えるのは、脅迫状を送りつける手口の犯罪をなす者は、それを繰り返すということです。おそらく逮捕されるまで、断続的に繰り返さずのはいられないのでしょう。フランスの精神分析家ラカンは、「欲望はそれが望む形で満たされるまで、何度も衝動に駆り立てる」と指摘しています
上記の記事を読めば、脅迫状の内容が池田容疑者の欲望ダダ漏れ…というのが判ります。テレビで目にする女性アナウンサーを脅し、あんなことやこんなことをしたいとの欲望に溢れているわけで
「住所不定」となっていますので、時折日雇い労働のようなことをしながら東京や大阪、京都など転々とする生活を送っていたのかもしれません。偽名で脅迫状を送り、居場所が変わるので「オレは捕まらないぞ」との自信があったのでしょう
前科があれば指紋から特定されてしまので、指紋を残さないくらいの注意は払っていたのか?
ただ、手紙であれ脅迫状であれ、文章にはその人の特徴が出ます。何通もの脅迫状を書き送っていたのなら、同一人物と特定できるだけの材料となり得ます。おそらく過去に脅迫状を送付した容疑で警察の取り調べを受ける機会があり、人物の特定に繋がったのでは
池田容疑者の場合、脅迫状を送りつけるだけに留まっていたようですが、中には標的と定めた女性を尾行して住所を特定したり、路上で刃物を手に襲いかかる者もいますので、最初から脅迫状=「軽微な犯罪」と決めてかかるのは間違いです
本件のような脅迫状の場合、犯人が単なる脅しとして書いているのか、実行を伴う危険な人物なのか、見極めることが重要です
今では手紙などの文章から書いた人物の心的力動を探る文章心理学という分野もあり、研究が進んでいます。捜査段階の供述調書を分析し、それが自発的な供述によるものか、捜査官による誘導や脅しによる供述なのかを分析している研究者もいます
幸い、池田容疑者は実行を伴うような粗暴な人物ではなかったようです。社会の片隅で生きる老人が、権力や暴力を背景に自らの欲望を満たしてやろうという夢想をあれこれ描き、それを脅迫状という形で投射して愉悦を味わう…といった形なのでしょう
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