離婚調停中の妻殺害 米国人夫に懲役22年求刑

国際結婚(特に欧米人との結婚)に強いあこがれを抱く女性がいます。国際結婚そのものが悪いわけではありませんが、生活習慣の違いや価値観の違いなど、折り合えない部分があるのは確かで、離婚に至る場合も少なくないのが実際です。こどもの親権を巡って揉めたり、こどもを連れ去ったりするケースもあり、なかなかに厄介です
2019年3月、東京家庭裁判所の玄関で離婚調停中だった妻をナイフで切りつけ殺害した、米国籍のジェイコブ・ウィルソン被告の公判があり、検察は懲役22年を求刑しています。殺人事件でも懲役20年を超える求刑というのは目をひきます
事件を報じた記事と、求刑公判を報じた記事の2つを貼ります


東京・霞が関の東京家庭裁判所で3月、離婚調停中の妻を殺害したとして、警視庁は15日、米国籍の会社員ジェイコブ・ウィルソン容疑者(32)=東京都板橋区小豆沢2丁目=を殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕し、発表した。事件直後に殺人未遂容疑で現行犯逮捕した際に両手首を負傷しており、入院のため釈放していた。同庁は自殺を図ったとみているが、15日に退院したため改めて逮捕した。
組織犯罪対策2課によると、逮捕容疑は3月20日、千代田区霞が関1丁目の東京家裁1階玄関で、妻のウィルソン香子(きょうこ)さん(31)=埼玉県所沢市元町=の首を折りたたみナイフで切りつけるなどして殺害したというもの。「弁護士の説明を受けてから答える」と認否を留保しているという。香子さんは離婚調停のために家裁を訪れており、同課はジェイコブ容疑者が待ち伏せしていたとみている。
(朝日新聞の記事から引用)

2019年に東京家裁を訪れていた離婚調停中の妻=当時(31)=をナイフで切り付けて殺害したとして、殺人などの罪に問われた米国籍の無職ジェイコブ・ウィルソン被告(37)の裁判員裁判の論告求刑公判が6日、東京地裁であった。検察側は「一方的な怒りによる犯行で、反省の態度も見られない」として懲役22年を求刑。弁護側は「心神喪失状態だった」として無罪を主張し、結審した。判決公判は20日。
検察側の論告に先立ち、妻の両親が被害者参加制度を使って意見を述べた。父親は「被告のことを記憶から消し去りたい思いが今も続いている」と怒りをにじませ、母親は「真実を知りたかった。犯した罪に向き合ってほしい」と無念そうに語った。
被告は公判で一貫して黙秘。向井香津子裁判長から「最後に言いたいことはありませんか」と聞かれても、「何も言いたくありません」と述べるだけだった。
検察側は論告で、被告は子どもを連れて家を出た妻から離婚を求められて怒りを募らせ、犯行後に逃げたことを指摘し、「動機の形成過程に異常な部分はない。犯行後の行動も合理的」と完全な責任能力があると主張した。起訴後の精神鑑定で統合失調症による妄想や幻聴の影響が指摘された点には、「被告が妄想を鑑定医に説明したのは事件から2年8カ月後。不自然で信用できない」と述べた。
弁護側は最終弁論で、精神鑑定は信用できるとした上で、「統合失調症の影響を受けず犯行に及ぶことはあり得ない」と主張した。
(東京新聞の記事から引用)


別の報道によれば、ウィルソン被告は職場での悩みなどから医療機関に通院して薬の服用するようになり、その後は次第に妻に暴言を吐くようになったそうです。離婚を言い出した妻に怒りや不満を募らせるようになり、4回目の離婚調停の際、ナイフや火炎瓶を用意して東京家庭裁判所内で待ち伏せし、犯行に及んだ経緯があります
ただ、上記の記事に書かれているように、事件から2年8月後になって妄想による影響を打ち明けたというのはいかにも不自然です。つまり、妄想念慮にとらわれるようになったのは犯行の後ではないか、との疑念が湧きます
職場での問題で悩み始めた時点では妄想がなく、妻が離婚を言い出した時点でも妄想がなく、4回目の離婚調停を目前にした辺りで妄想に支配されるようになったのでしょうか?
上記の記事だけではそこらの事情は不明です
ただし逆に、妻を殺害しなければならない必然性というのがあったか、という問いも湧きます。離婚すれば済んだ話なのに、わざわざ妻を殺害するというのは正常な判断力を有する者の行動ではありません。離婚に至るケースは多くあれど、配偶者を殺害するまで憎悪し逮捕されるケースというのは稀です
となれば、ウィルソン被告の犯行は常軌を逸するものであって、精神障害の影響と言える可能性も出てきます
裁判所はどう判断するのでしょうか?
追記:東京地裁はウィルソン被告の心神喪失を認め、無罪判決を言い渡しています

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