練馬区職員に3700万円賠償請求 納税手続き怠る
毎年、夏に成ると学校のプールの水を出しっぱなしにしたため、高額の水道代が請求される事案が発生します。担当者、責任者に一部負担を求め、支払わせる学校もあれば、不問に付して市町村が全額負担するケースもあります。ただ、公務員が職務上のミスをしたのに不問となり、1円も払わないとなれば住民から不満が出ます
法律上は職員に故意があったり、重大な過失があれば職員個人に損害を賠償させると規定されていますが、どこまでを「重大な過失」と認定するかは自治体の判断に委ねられているのが実際です。当然ながら地方議会で職員の過失を問う質問が議員からあれば、自治体側としても説明しなければならず、重大な過失だったのか、職員個人に損害賠償を負わせる必要があるのかないのか、答弁することになります
練馬区役所では職員の期末手当(ボーナス)から源泉徴収した所得税を期限までに納付しなかった過失があり、区は追徴課税処分を受ける事案がありました。担当職員が納付期限をきちんと把握していなかったミスによるものです。練馬区は担当職員2人に、3700万円を請求するとしています
10月4日、東京都練馬区は、2021~2023年の夏の職員のボーナスに課される源泉所得税の納付ミスにより、約3700万円の追徴課税が生じたと発表。当時、支出を管理する立場にあった40代課長と60代の元管理職(退職済み)の2人に、全額の損害賠償を求める方針を示した。
6月支給分のボーナスへの源泉所得税は7月10日までに納付する必要があるが、担当職員が誤って8月10日に納付していた。9月に税務署から指摘を受けて発覚。区がさかのぼって調査したところ、2021年分から同様のミスがあったことがわかったという。
担当者が、銀行の事務処理方法が変更された際に、納付期限を勘違いしたことが原因。区は今後、監査委員に諮ったうえで、正式に賠償請求する。2人は、公務員がミスをした際に生じる損害を補償する保険に個人で加入しているという。
地方自治法では、「故意」か「重大な過失」により役所に損害を与えた場合、職員に損害賠償を請求できると規定している。「重大な過失」に当たるかどうかの判断は、自治体の裁量に委ねられている。
「神奈川県川崎市は、5月に市立小学校のプールの水を出しっぱなしにしたとして、男性教諭と校長に損害額の半分にあたる95万円の賠償を請求。9月15日に2人が自腹で全額を支払いましたが、『個人に支払わせるのはかわいそう』といった批判が殺到しました。
一方で、9月には、宮城県富谷市のプールでやはり水を出しっぱなしにして204万円の損害が出ましたが、市は賠償請求しませんでした。
宮城県では、2022年夏、仙台市で源泉所得税の納付遅れで約5000万円の追徴課税が発生したものの、こちらも『重過失とまではいえない』として賠償請求していません。
ただ、その後、市民オンブスマンが市長に対し、担当職員らに約1500万円請求すべきだとして提訴しています」(政治担当記者)
自治体職員への損害賠償請求が相次ぐ状況に対し、SNSでは危機感が広がっている。
《行政機関が追徴課税されるというあってはならないミスなのはわかるけど、これだけの賠償請求されたら、今の管理職の給与水準では全然割に合わないし、管理職になりたい人なんていなくなるだろうな》
《住民からの個人求償を想定して既に公務員賠償責任保険入っていますが、まさか職場から求償される日常がやって来るとは思いませんでした。この流れ、誰か止めてくれ~》
《業務上のミスを職員に請求する公務員社会なんて成り手いなくなりますね。そのための個人加入の保険があるなんて、なんてブラックな職場なのか》
(FLASHの記事から引用)
自分が元公務員だったという事情から、この記事に反応し取り上げています。一般の方には興味の湧かない話だと思いますが
記事の末尾にSNSでの反応が書かれているのですが、「業務上のミスを職員に請求する公務員社会なって成り手いなくなりますね」との反応は不可解です。民間企業でも職務上のミスで会社に損害を与えた場合、賠償を求められるのは珍しくありません。さらに懲戒解雇になったり、他の部署へ移動させられたり(経理担当ならお金を扱わない部署へ飛ばされます)、遠隔地への転勤を命じる懲罰もあります。なので、公務員だけ損害賠償責任を負わないなどという事態はあり得ない話です
多額の公金を扱うのであれば、当然、相応の注意義務が求められます
記事の中にある仙台市のケースも源泉徴収した税の納付期限に遅れたもので、追徴課税された分は職員に請求していません。が、職員が事務処理を誤ったのは事実ですから、期末手当と併せて支給される勤勉手当の査定は最低ランクに落とされたはずであり、数万円の減収というペナルティが課せられたものと推測します。市民にすれば本来支払う必要のない5000万円を市民の収めた税金で負担しておきながら、職員個人は数万円程度のペナルティでお茶を濁すのか、と呆れるでしょう
さて、損害賠償を求められた練馬区の職員は「公務員損害賠償保険」に加入していると記事には書かれていますので、自己負担はなく3700万円を支払えるのでしょう。自治労共済とか、損保ジャパンとかが提供している保険です。公金の扱いのみならず、個人情報の流失で責任を問われる場合もありますので、こうした保険に加入しておくべきかもしれません
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