鳥栖市両親殺害 懲役24年判決

鳥栖市の両親殺害事件で元九州大学生、宮崎優希被告に対し佐賀地裁は懲役24年を言い渡しています(求刑は懲役28年)
量刑だけを見れば求刑から4年も割り引いており、それなりに情状を汲んだ判決と考えられます
が、判決内容(あくまで報道されている判決の要旨)を読むと事件に至った経緯を単純にとらえすぎており、宮崎被告を歪めてしまった両親の責任を無視したものと思われてなりません
厳しく育てるとの方針だったとは思われますが、性格まで歪めてしまったのでは教育ではなく虐待でしょう
一部の報道には両親が息子に期待し、九州大学に入った息子を自慢していたという親戚の者の発言がありました。が、宮崎被告自身は親に褒められたという経験はなく、叱責と人格否定ばかりだったと回顧しているのですから、親の言動によって相当に歪められてしまったものと受け取れます。両親が彼を歪めなければ今回の殺人はなかったわけで、事件の責任の半分以上は殺害された親にあるのでは?
そう考えると、懲役24年の判決は宮崎被告の心情に理解を示すものではなく、親殺しだから厳罰という、杓子定規な判決に思えてなりません


背景に教育虐待の“報復”、起訴内容に争いも
起訴状によると、九州大学工学部に通っていた長男(19)は今年3月9日、佐賀県鳥栖市にある実家で、両親をナイフで刺して殺害したとされる。これまでの審理で、長男は幼少期から学業などに対する説教や暴力を受けた“報復”として、父親を殺害したことを認めた。母親については、仲裁に入ったのを「排除するため刺した」などと述べ、殺意を否定した。このため、裁判の主な争点は▽母親への殺意の有無、▽刑罰を科すべきかだった。
争点の“母親への殺意”7か所刺され、4か所が致命傷
検察側は、母親が7か所も刺され、うち4か所が致命傷だったことなどから「殺意が認められる」と主張。その上で「2人の命が奪われた結果は極めて深刻。反社会性と反倫理性は著しく、保護処分を社会的に認めることはできない」として、懲役28年を求刑した。弁護側は父親から受けてきた“虐待”が事件の原因だと訴えた。そして、遺族が処罰を望んでいないことなどを踏まえ、少年院送致などの保護処分か刑罰であっても懲役5年が相当と主張していた。
判決で、佐賀地裁は検察側の主張を採り入れた上で「母親への殺意」があったと認定した。
(要旨)
・高い殺傷能力のナイフで人体の枢要部を複数回、手加減することなく短時間で刺している
・相当に強い力で突き刺したといえる
・死亡する危険性が高い行為だとわかっていなかったとは考えにくい
・父親を確実に殺すためには邪魔をする母親はどうなってもいいと考えていたとしか思われない
「いつか仕返し、高校生になってから殺してやると考えた」
(中略)
(判決要旨)
・特定少年である被告人を少年院に収容した場合、収容期間は最長で3年となるところ、更生を図るためには十分ではないと考えられる
・虐待の影響や家庭内の事件であることを考慮しても、保護処分を許容できる特段の事情があるとも認めがたい
・ほぼ無抵抗の被害者らに一方的に攻撃を加えたもので、計画性も認められる
・犯行結果は極めて重大
・幼少期から父親から心理的、身体的な虐待を受けるなどしたことが、殺害の決意に大きく影響
・父親の虐待がなければ被告人が本件犯行に及ぶことはなかったといえる
・自分で叱責を受ける機会をつくるなど、犯行を誘発した側面があることは否めない
・父親を殺害することに集中するあまり、母親を巻き添えにしてまった
・母親が制止しようとする事態は当然、予測できたはず
・動機や経緯は身勝手で自己中心的と言わざるを得ない
岡崎忠之裁判長は判決の宣告後に「この期間はあなたにとって決して短い期間とは言えないかもしれません。罪の重さに改めて向き合い、深く考える期間にしてください。裁判であなたは残りの人生は消化試合みたいなものと言いました。しかし、妹や親族、そして父や母も望まれていないはずです。いつか目標を持って生きてもらいたい」と説諭した。
(RKB毎日放送の記事から引用)


宮崎被告は控訴し、あらためて高等裁判所の判断を求めるべきでしょう
事件の原因を作った親の責任を裁判所はきちんと認めたのであれば、量刑云々は別にして宮崎被告は納得できるのでは?
かつて日本には尊属殺人を他の殺人より一等重く罰するべし、という刑法上の規定がありました。こどもが親を殺すなどとんでもない、とする当時の価値観、家族観を反映したものですが、現在この規定は削除されています
削除されるきっかけとなったのは、父親が娘を強姦し、こどもを産ませていたという家庭で、娘が父親を殺害して逮捕された事件がきっかけでした。父親が娘を強姦しなければ、父親を殺害したりはしなかったのであり、原因を作った父親の行状に世間の批判が集まったためです
長い話になってしまいますので、この件を取り上げた記事を下記に貼っておきます。関心のある方は一読ください

「父殺しの女性」を救った日本初の法令違憲判決
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/120100058/120200001/#

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