札幌女子大生殺害 小野勇被告に懲役9年求刑

札幌市内のアパートで女子大生を殺害し、遺体を遺棄したとして逮捕された小野勇被告に検察は懲役9年を求刑しています
嘱託殺人の場合、法律では懲役7年以下の刑と定められており、小野被告には遺体遺棄罪と併せて懲役9年を求刑したのでしょう
初公判での被告人質問を報じた記事が見つかりましたので、その記事と求刑を報じた記事の2つを貼ります


殺害についての逮捕時の容疑は殺人でしたが、小野被告は「女子大生に頼まれた」などと主張。
検察は「女子大生の依頼が真意でないと立証できる証拠を集められなかった」として、小野被告の主張どおり、嘱託殺人に切り替えて起訴していました。
嘱託殺人の法廷刑は、6か月以上7年以下の懲役または禁錮で、死刑が上限の殺人より刑罰が軽くなっています。
また、殺人罪の裁判には、裁判員が参加しますが、嘱託殺人罪では裁判官3人による審理となります。
事件発生から約11か月となる31日午前の初公判…小野被告は、黒のTシャツにジーンズ、眼鏡をかけて法廷に立ちました。
そして、裁判官に罪状認否で「間違っているところはありますか?」と問われると「いえ、ありません」とこたえました。
このあと、冒頭陳述などで、下記の事実関係などが明らかにされました。
<証拠調べで明らかにされた事実関係>
・女子大生が過去に複数回の自殺未遂 
「お金のことで、こんなに苦労すると思わなかった」などの遺書
・その後、妊娠するも、交際相手から中絶求められる
・自殺未遂で流産
「疲れちゃった。みんな、ありがとう」などの遺書
<検察の冒頭陳述>
・小野被告は高校卒業後、陸上自衛隊に入り、除隊後、職を転々
・9月上旬、女子大生の「殺して」の投稿に「いいね!」
・自殺願望のある若い女性を探していた
・DM開始後、あたかも自殺を手伝った経験があるかのように説明
・9月27日、直接会って本当に死を望んでいるか確認
・10月5日、JR手稲駅で待ち合わせ
・犯行が警察に発覚しないよう、DMを消去するよう指示
・遺体の解体料金などとして、5万円を要求
・睡眠薬や精神安定剤を飲ませ、殺害実行
・深い眠りにならず
・睡眠薬の消費を惜しみ、意識ある状態で頸動脈を圧迫
・女子大生は「苦しい」と述べるが、そのまま締め上げる
・浴室で遺体の解体試みるも、上手くいかず
・知人の求めに応じ、遺体の一部の画像を送る
・10月7日、女子大生の妹が行方不明の通報
・携帯電話の位置情報などで事件発覚、逮捕
検察は、ほぼ3か月に及んだ鑑定留置の結果、小野被告に刑事責任能力があると主張。
<弁護人の冒頭陳述>
・小野被告も3度の自殺未遂
・自殺に対するハードルが低く、正当化
・出会いの経緯は、検察の陳述と同じ
・ナイフを見せると、女子大生は「安心した。ありがとうございます」とこたえる
・死にたいという女子大生の願望が強かった
弁護人は、事実は争わないが、犯行時、心神耗弱だったとし、執行猶予を求める。
<女子大生の父親の供述調書>
・最後の日、思いつめた様子なく、いつも通り
・「行ってくる」と言って手を上げて外出
・7日の通報後、8日に警察から「若い女性の遺体が見つかった」と連絡
・写真を見て、言葉を失う
・霊安室で対面時「怖くなかったのか、苦しくなかったのか」と問いかけた
・悩みもあり、小野被告に「殺して」と言ったのかもしれない
・22歳の女性が「死にたい」と言って、真に受けるはずがない
・千葉県で就活して、就職先も決まり、死ぬ気がなかった
・過去の自殺未遂も、自殺の真似事
・年上に話を聞いてもらい、助けて欲しいの意思表示
・犯人のことは絶対に許さない
・自分の罪から逃れるため、ウソをついている
・死刑になって欲しい
さらに、このあと、弁護人、検察、それぞれから被告人質問が行われました。
・弁護人
「この法廷で伝えたいことは?」
・小野被告
「殺害して許されることではないと思う」
「ただ、彼女の強い希死念慮は、かなりのレベルに行っていた」
「正当化するわけでは全くないけれども、できることなら殺害はしたくなかった」
(以下、略。北海道放送の記事から引用)


札幌市で令和4年10月、依頼を受けて大学生の女性=当時(22)=を殺害したなどとして、嘱託殺人や死体損壊などの罪に問われた住所不定、無職、小野勇被告(54)の論告求刑公判が4日、札幌地裁(井下田英樹裁判長)であり、検察側は懲役9年を求刑した。弁護側は被告が心神耗弱状態だったとして、執行猶予付きの判決を求めて結審した。判決は22日。
検察側は論告で、被告はSNS上で殺人の経験があると装っていたことに触れ「自己の存在意義を高めようとする、ゆがんだ思考の下に犯行に及んだ」と指摘。経験がないことを伝えれば「女性が嘱託を思いとどまった可能性が高い」と非難した。
弁護側は最終弁論で「心神耗弱で強固な殺意がなく、計画性は弱かった」と主張した。
被害者参加制度に基づき意見陳述した女性の父親は「娘の将来をめちゃくちゃにされて、本当に悔しい」と訴えた。
(産経新聞の記事から引用)


被害者である女子大生は就職も決まっていたとの話です。小野被告は彼女が死にたいとする理由は訊かないまま殺害しており、結局なぜ彼女が死を望んだのか、直接の動機・事情は分からないままです。家族は彼女が過去に自殺を試みたのを承知していたのですが、本当に死ぬとは思っていなかったようで、「なぜ」、「どうして」との思いがいつまでも尾を引きます
さて、小野被告が「これまでにも幾人もの自殺を手伝った」などと嘘をつき、犯行に及んだのはブログにも書いてきたところです。実際、人を殺したのは本件が初めてだったのでしょう
いまさら「嘘でした」と白状するわけにもいかず、半ば義務感で女子大生を殺したのか?
解釈はいろいろあるのですが、小野被告自身が無力感や厭世感に苛まれ、自殺志願者(過去に3度の自殺未遂)であったのも影響した可能性があります
つまりは代理行為であり、自分で自殺する替わりに彼女を殺害した…とも考えられます。もちろん、明確にそれとは意識しないままに
上記の被告人質問の記事を読む限り、応答はしっかりしており、嘘やでたらめを口にしているようには感じられないのですが、どこか投げやりで諦めきった感が漂います。これを心神耗弱による判断力の低下と見るか、あるいは罪悪感の鈍麻や生命を尊重しようという意識の欠如と判断するか、裁判官次第です
拘置所でテレビ局と面会した際には、初公判で「自分だけが悪者にされた」と不満を述べています。依頼を受けた殺害しただけなのに、自分ばかりが罪に問われるのが納得いかないとの思いがあるようです
弁護人はそれでも執行猶予付き判決を求めていますので、「実刑を科すべきではない」という被告思い(不満)を汲んで弁護したのでしょう
過去の判例をざっと調べてみたところ、自殺の幇助や同意殺人など事件の形態はまちまちではあるものの、執行猶予付きの判決もありますし、懲役3年程度という短期の実刑を科したものもありました。なので、嘱託殺人と遺体遺棄罪との併科ではあるものの、懲役9年の求刑は特異なケースに挙げられます

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