小田急切りつけ男 フェミサイド事件とのアピール
小田急線車内で乗客を刃物で切りつけた対馬悠介被告には懲役19年の判決が下されています。殺人未遂事件としては重い判決なのですが、この事件を「女性に対する憎悪犯罪」、「ミソジニー犯罪」、「ヘイトクライム」、「フェミサイド(女性に対する憎悪から殺害しようとする犯行)」であると主張している側からは不満が出ています
判決文の中で「対馬被告が抱える女性への蔑視」にことさら触れようとしなかった点が、活動している女性たちの怒り、失望を招いたためです
以下、週刊金曜日の記事から一部を引用します
小田急線刺傷事件で実刑判決 女性狙う「フェミサイド」の視点訴えるアクション
公判中に「幸せそうなカップルや、きれいでムカつく感じの女性を探した。乗り込んだ車両にそういう人はいなかったが、時間はかけられないと思い、近くにいたピンクの目立つ服を着た女性をターゲットにした」「いわゆる“勝ち組”の女性を探した」と話したことも報道されたが、判決では被害者の性別や女性を狙ったと思われる点に触れられることはなかった。
判決の日、東京地裁前では「フェミサイド(女性であることを理由にした殺害。女性嫌悪殺人とも)は、ある」「フェミサイドは社会問題だ」などのプラカードを持った男女がスタンディング。判決後にその場で行なわれたスピーチでは、「無差別という言葉にモヤモヤした」「フェミサイドである点へのクローズアップが足りないのではないか」など参加者たちが口々に判決への違和感を語った。事件1周年時のスタンディングにも参加したという20代の女性は「フェミサイドの根源には女性差別の思想があります。それは想像以上に社会の中に組み込まれていて、取り除くのは根気のいる作業です。私たちはフェミサイドとその根源にある女性差別に一緒になって声を上げなければいけないと思います」とスピーチした。
このアクションを呼びかけたのは皆本夏樹さん(25歳)。皆本さんは事件当時大学生で、被告人が人生にうまくいかず「勝ち組の女性を殺したいと考えるようになった」などと供述したと報じられたことから「これはフェミサイド未遂事件だ」と考え、行動を始めた。
事件後、初めてツイッターアカウントを作り、韓国の「ポストイット運動」(注)をまねて小田急線構内に「#フェミサイドを許さない」などのメッセージを書いた付箋を貼ることを呼びかけた。また、内閣府男女共同参画局など宛てに、原因究明などを求める要望書を提出し、ネット上で署名キャンペーンも始めた。 ツイッター上では「#StopFemicides」のハッシュタグで連帯を示す人もいたが、誹謗中傷も多く「クソが!」「卵巣詰めんぞ」などの暴言のほか「本物のフェミニストは絶対にこんな非常識な事はしません」といった決めつけもあったという。
(以下、略)
この小田急刺傷事件がフェミサイドであるかどうか、との判断については、当ブログでの過去記事
小田急切りつけ男 女性憎悪犯罪なのか?
で言及していますので繰り返しません
ただ、上記の記事にもある「小田急線車両内にポストイットを貼り付ける運動」で世間の関心を喚起し、理解を促そうという行動は「?」です
韓国で「ポストイット運動」という先例があるにしても、日本では「何やっとるんじゃ?」と思われるだけでしょう
彼女たちが「フェミサイド」を訴え、行動するのを批判するつもりはないものの、方向性が定まらず迷走している感があります(それぞれの方が自発的に、自分が思った方法でアピールしようとすればこうなります)
かといって共産党方式で「中央委員会を設置し、その指示に従って組織的・計画的に活動せよ」というのも違う気がします
話を戻して、小田急刺傷事件の担当判事は「女性蔑視による殺人」との側面を視野に入れつつ、判決文を書いたのでしょう。が、そこにフェミサイドとかミソジニーといった用語は登場させなかったのは、過去の判例でもそうした専門用語が使われた判決文が見当たらなかったのか、あったとしても極めて少数だったからではないかと推測します
つまり、裁判官達の了解の中にフェミサイドとかミソジニーといった概念が定着していなかったためでは?
女性蔑視殺人だと認定したら懲役刑を加算する、といった法律上の規定は存在しないのですから、裁判官の理解を変えるのは容易ではありません
対馬被告の場合、ナンパを繰り返して女性をモノにしセックスするのが生き甲斐のような男です。恋人を作って結婚したいのではなく、新しいオモチャを手に入れ、飽きたら捨てて別のオモチャを求めるようなものです
女性蔑視というより、女性が自分と同等の存在であり、人生を共にするパートナーだとの自覚が欠落しているように思います。周囲からそう指摘された所で、対馬被告には何を言われているのか理解できないのでしょう
誰かが「人間関係とはかくあるべし」と説教すれば頷くとしても、「女性がナンパの対象であり新しいオモチャである」との思いは捨てられないままであり、上記の記事にある活動家の女性たちから批判を浴びても変わらないのでしょう
むしろ彼女たちを眺めて、「どの娘なら簡単にモノにできるのか」を考えてニヤニヤしているだけ、だと思います
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