京王線刺傷事件を考える いじめ被害が原因なのか

京王線の車内で刃物を振るった上、ライターオイルに火をつけて乗客を殺害しようとした容疑で起訴されている服部恭太被告は明日、判決を受ける予定です
その前にあらためて各種報道を読み返していたのですが、現代ビジネス記載の記事が「服部被告のいじめられた体験こそ事件の根幹である」と強調しており、他のメディアと大きく異なっています。記事は渋井哲也という、いじめ問題や虐待問題を主に取り上げているジャーナリストによるものです


【懲役25年求刑】京王線ジョーカー事件の裁判から見えてきた「いじめ」と「無差別殺傷事件」の因果関係
(前略)
これまで裁判が続き、事件の輪郭が明らかになってきた。そんななか、服部被告が過去に「いじめ」を受けていたことに注目するのはジャーナリストの渋井哲也氏だ。
服部被告は過去に同級生から「いじめ」を受けていたと語っている。小学校の時に始まり、中学校ではさらにエスカレートしたという。自殺未遂を起こし、カウンセリングにも通っていた。
クラスメイトから無視され、物やごみを投げられる。子どもにとって耐え難い状況だ。服部被告に限らず、いじめや虐待など心に傷を受けた経験はトラウマとなり、その後の人生に大きな影響を与える、と渋井氏は指摘する。
「一番重要なのが『いじめ後遺症の治療』なんです。カウンセリングを受けていたとはいえ、後遺症の治療までは行われていなかったのではないでしょうか。いじめ、虐待など、心に受けた傷については何らかの治療が行われなければならないんです」
人間関係への不安は残り続ける
渋井氏によると、いじめの事実が明らかになり、加害者が謝罪したとしても、被害者の心の傷は残ったままなのだという。いじめ後遺症の治療をして、専門家がなんらかのケアをしない限り、その傷は後年まで残り続ける。特に対人関係においては不安が残り、人間関係をうまく構築することができない状態に陥る。
「心を傷つけられた経験から『また嫌われたらどうしよう』とか『裏切られるのが怖い』という恐れが残る。相手を信じられないことから、何か困ったことがあっても誰かに相談することが難しくなる傾向が出るとされています。さらには『自己肯定感の低さ』や『自信のなさ』があるため、幼いころに受けたいじめは、対人関係にずっと影響し続けるんです」(渋井氏)
服部被告は、中学時代には交際相手もできたと明かしている。高校では空手部の主将を勤め、公私ともに順風満帆な人生を歩んでいたかのように思えるだろう。
だが、幼いころのいじめが原因となり、人間関係に対する不安がずっと残り続けていたことは想像に難くない。
その影響もあってだろう。職場でトラブルを起こし、退職。自殺未遂も起こしていた。この時、同僚の一人から存在自体を拒絶されるといったかなりきつい経験をしていたという。中学時代と同じ状況、過去のトラウマがトリガーとなって呼び起された可能性は高い。
その後、服部被告は職を転々とすることとなる。
(以下、略)


服部被告は起訴前に精神鑑定を受けています。鑑定の中で過去のいじめがどう扱われ、犯行への影響について考察されているのか、鑑定書を読んでいないので不明です
ただ、鑑定医は「被告が事件前に仕事のミスで異動となったことや、交際相手から別れを告げられたことなどを挙げ、情緒的なストレスがかかると死によって逃げようとする傾向がある」と指摘しており、一方で精神疾患や薬物などによる影響はなかったと述べています
おそらく渋井氏にすれば、過去のいじめ体験を軽視するか無視している精神鑑定結果は大いに不満であり、「これでは事件の核心をスルーしているも同然」と感じてのではないかと想像します
小中学生時代のいじめ体験が無視できないものだとする考えには賛同しますが、そこにだけ焦点を当てるのもどうかと言いたくなります
自分は服部被告が公判で別れた彼女の話ばかりする点にひっかかりを覚え、「いや、語るべきところはそこじゃないだろ」と思いました。同棲していた彼女が別れてすぐ別の男と結婚した事実に服部被告は深く絶望したのですが、そこは本人にしか分からないところです。だとしても、それが過去のいじめられた体験とどう結びつき、大量無差別殺人に結びつくのかは謎のままです
記事の中ではいじめられた体験⇒人間不信、他者への攻撃といった渋井氏の仮説が開陳されているのですが、服部被告にその自覚があったのかどうか?
服部被告はジョーカーという悪の化身になりきることで、「無差別殺人の悪者として処刑される」のを望んだと考えられます。いじめ体験の反動だと言えば、あまりに乱暴なまとめ方でしょう
明日の判決ではおそらく服部被告のいじめられた体験について裁判官は言及することなく、反社会的な犯行を強く咎め、批判する内容となり、懲役25年の求刑に対し懲役21年から22年くらいの判決を言い渡すのではないかと予想します
この判決を、「被告の過去のいじめられた体験を無視しており、不当だ」と服部被告は思うのでしょうか?
おそらく、「結婚を前提に同棲していた彼女と別れることになり、その彼女がさっさと他の男と結婚してしまった時の辛さ、絶望感を裁判官は分かってくれなかった」と思うのでは。服部被告にとってはいじめられた体験より、彼女との別れの方が遥かに重要な体験であり、心の傷となっているように想像します
いじめの被害、それが与える心の傷は決して小さくはないと考えるものの、いじめに遭った人間が100万人以上いる中で、大量無差別殺人をやらかそうとした人間は数えるほどしかいないのですから、いじめ以外の要因にも目を向ける必要があると考えます

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