大阪カラオケパブ殺人 控訴棄却後もモヤモヤ

先日取り上げたように2021年、大阪・天満のカラオケパブで25歳のオーナー女性を刺殺し、1審で懲役20年を言い渡された宮本浩志被告が量刑を不服として控訴していたものの、大阪高裁は控訴を棄却しています
いくつかの報道を読んで、自分がモヤモヤとした点を取り上げます
その1つは、関西のテレビ局の女性ディレクターが放送で使える「画になるシーンを撮ろうと躍起になっていた」というものです。現場に居合わせた週刊文春の記者が以下のように伝えています


判決の日、真優子さんの母・由美子さんは大阪高裁の外周で在阪テレビ局の取材を受けていた。被告が罪を認めたことに関する質問を繰り返す女性ディレクターに対し、由美子さんは困惑の表情を浮かべ、素直な感情をうまく言葉にできないでいた。
業を煮やしたディレクターは被告に対する暴言を並べ、由美子さんから直情的な、怒りの言葉を引き出そうと躍起になっていた。
しかし被害者遺族の感情は、それほど単純なものではないのだろう。宮本被告に対する憤怒の感情が消えないのは当然としても、2年という時間の中で宮本被告に対する感情も不安定に変化し、思いがけぬ“交流”に発展することもあるのだ。
(文春オンラインの記事から引用)


テレビ局としては被害者遺族に寄り添うフリをしながら、「宮本被告を強い口調で批判する母親の姿」を撮影したかったのでしょう。テレビにおける事件報道のあり方として正しいとか、間違っているとか断定する気はありませんが、気色悪い場面です。「ありのままを伝える」のではなく、視聴者の反応を計算した上での演出を混じえ、発言を誘導しようとしているのですから
もう1つは、宮本被告が自宅マンションを妻に贈与し、妻はそれを売却してさっさと新居に引っ越したと伝える現代ビジネスの記事です
おそらく逮捕された後、宮本被告は妻から離婚を請求されるとともに財産分与を求められたのでしょう。本来は被害者遺族への賠償に充当されるべき宮本被告の資産は、大部分が妻に渡ってしまったのであり、遺族は宮本被告の元妻に対して賠償請求するのは困難です
元妻の側にすれば、夫が稲田真優子さんに惚れ込んで連日店へ通い、給料のほとんどを注ぎ込んだのが許せないのであり、夫の財産(マンション)を処分して新居へ移るのは当然の権利という話になります


殺人犯の妻は、自宅を売り払って即日新居を購入した…大阪カラオケパブ殺人犯「3000万円賠償金払わず」
(前略)
裁判では、その情状のために宮本被告の財産を開示している。真優子さんの遺族が宮本被告に対して別途起こした民事訴訟では、損害賠償金として2980万円の支払いを命じる判決が出ている。
支払いは実際に行っていないものの、宮本被告は「私有財産を遺族に開示したので、量刑を軽くすべき」と信じがたい訴えをしていた。
しかし判決は「財産開示で量刑を考慮する必要はない。賠償もしておらず、そう支払うのかも明かしていない。遺族は許しがたいと言っており、被害弁償はされていない」とにべもないものだった。
差し押さえも不可能…遺族の怒り
この日の判決前に、被害者遺族として真優子さんの母、由美子さんは意見陳述でその点に触れ、宮本被告が「情状」とした損害賠償請求について、こう主張している。
「(宮本被告の口座にある)銀行の定期預金、微々たる金額を差し押さえられているだけ。(宮本被告の)年金は差し押さえが不可能である。また被告の元妻は(犯行当時住んでいた)家を売却し、即日新居を購入している。私たち遺族の感情として大変許しがたい」
宮本被告の犯行に加えて、損害賠償への対応についても舌鋒鋭く非難したのだ。
元妻が自宅を売却し、即日新居を購入したとはどういうことか? 宮本被告は犯行当時、兵庫県西宮市の83㎡の分譲マンションに妻と子ども2人と暮らしていた。
だが、逮捕後に妻と離婚している。不動産登記簿を見ると、宮本被告は所有している分譲マンションをこの元妻に贈与している。そして、2022年4月に不動産会社に売却されたと同時に、元妻は別の物件を購入していたのだ。その点について、由美子さんが怒りを露わにしたのである。
(以下、略)


殺人事件や強盗殺人事件の被害者が犯人側から十分な賠償を受けられないのは、今に始まった話ではありません。むしろ、犯人側から賠償を受けたケースの方が珍しいのでしょう
宮本被告の妻(あるいは元妻)の側にも言い分はあるわけで、ある日突然「殺人犯の家族」という立場を押し付けられ、マスコミに追い回され、近所からは好奇の目で見られるのですからたまったものではない、と推測します
宮本被告への怒り心頭で、おそらく警察に逮捕された後は面会も差し入れもしていないのでは?
その後、警察が家宅捜索に入り家の中を引っ掻き回し、家族は何度も事情聴取を受ける羽目になったはずです。なので離婚し、娘たちを連れて別の住居へ移ろうというのは自然な選択だと理解できます
ただ、遺族への賠償をどうするかという問題は残ります。妻の側は被害者家族との面談は拒否し、話し合うつもりはないものと想像します
宮本被告はこれから服役し、仮釈放を受けられるかどうかは定かではありませんが、17年から18年は服役します(裁判の判決が確定するまで被告として勾留された期間=未決の期間は服役したものとして算入されるのが通例です)。その間、刑務作業に従事して得られる作業報奨金を貯めて賠償に当てるのでしょうか?
自分の予想だと遺族には今後、1円たりとも払う気がないように思われます
年金は受給権利者が服役した場合、受給資格が停止されますので支払われません。刑務所から出たら、服役した間の年金をまとめて受け取れると思い込んでいる人がいますが、間違いです。刑務所から出所し、受給資格の停止が解除された時点から年金を受け取ることになります
自分の単なる推測なのですが、遺族側が請求した2980万円という金額はカラオケパブ店の開店資金としての借り入れや店舗閉店にともなう撤去費用など、実質的な経費であり、本来の慰謝料というのは含まれていないのでは?
最後に、裁判でのやりとりなど、報道されているところを読み限り、宮本被告が周囲の人と噛み合っていない点が気になります。控訴審は1審と別の弁護士がついたのですが、文春オンラインの記事では「宮本被告と事件の話はまったくできなかった」と語られています
総合すると宮本被告は徳島大卒で住友電工社員という経歴ながら、ある種の発達障害を抱えた人物であり、コミュニケーション能力に難があったのではないか、と考えられます。実際に会ったわけでもなく、話す機会もなかった人物を発達障害だとレッテルを貼るような真似は控えるべきところですが、宮本被告の噛み合わなさは際立っており、人の話を聞いて理解する能力に難があったと仮定するのが一番しっくりきます
追記:宮本被告は控訴棄却を不服として最高裁に上告はしませんでした。なので、懲役20年の刑が確定しています

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