韓国が「量子コンピューター戦略」をブチ上げるも?

韓国政府はやたら▢▢ビジョン、◯◯構想、△△戦略というものを打ち出します。しかし、数年もしないうちにまったく別の◇◇計画を提唱するようになり、前の構想がどこまで実現できたのかは謎のままです。政権が交代するたび、前政権の政策を否定し新たにビジョンやら構想を提起するため、こうした事態が起こります
代表的な例が「ノーベル賞(科学部門)での受賞者を輩出させるプロジェクト」であり、2010年代から何度か似通った国策が提起されましたが、いまだにノーベル賞受賞者は出ていません。「5年以内にノーベル賞受賞者を出す」などと、無茶な目標を大真面目に掲げていました
今度は量子コンピューター技術を中核とした「大韓民国量子科学技術戦略」だそうで、中央日報が社説で取り上げています


韓国科学技術情報通信部が一昨日「大韓民国量子科学技術戦略」を発表した。韓国が独自技術で量子コンピュータを開発・活用し、世界最高水準の量子センサーで海外市場を先取りし、国防・先端産業と融合して2035年に世界的量子経済中心国家時代を開くという内容だ。このため2035年までに官民合同で最小3兆ウォンを投資して量子技術を先導国の85%水準まで高めるという計画だ。この日戦略発表に参加した尹錫悦大統領は「クオンタム(量子)技術はデジタル基盤社会をさらに発展させ、経済・科学・医療・保安・エネルギーあらゆる分野で途轍もない革新をもたらすものだが、機会と挑戦を同時に抱かせるだろう」と話した。
科学技術情報通信部が明らかにした戦略と尹大統領の話のように、量子科学技術は人類の生活に革命的変化をもたらす見通しだ。21世紀の科学技術の発展は破壊的だ。発展のスピードが速いというより既存の技術と産業を無力化して新しい生態系を開くためだ。「破壊的技術」の波にタイミング良く乗ることができなければ永遠の二流として残るほかない。量子コンピュータはスーパーコンピュータが1万年かかる演算をわずか3~4分で終えることができる。この恐るべき能力の余波は想像以上だ。これまで技術で解決できなかった予測と計算を通じて多様な分野の新たな世界を開ける。量子コンピュータの演算能力はこれまでのデジタル暗号システムも無力化する。このため金融を筆頭に全産業分野のセキュリティに一大変革が避けられなくなる。
しかし韓国の現実は憂鬱だった。米国はIBMとグーグルが量子コンピュータを開発し、中国も2018年にすでに世界初の量子通信衛星である「墨子」を通じた量子情報通信に成功した。これに対し韓国の量子科学技術水準は先導国の63%水準にすぎない。
韓国政府のビジョン通り「2035年世界的量子経済中心国家」に到達するために専門家らは次のような提言をしている。まず韓国科学技術の慢性病である「研究開発パラドックス」に閉じ込められずに事業化まで続けなければならない。このためサムスンなど韓国の大企業と最初から目標が明確な協業をしなければならない。大統領が企業オーナーらと直接額を突き合わせなくてはできないことだ。米国で量子コンピュータの「イオンQ」を作ったデューク大学のキム・ジョンサン教授のような在外韓国碩学との緊密なネットワークも必須だ。
トレンドにだけ乗るいいかげんな専門家を警戒しろという助言も出ている。2年前に50人ほどにすぎなかった韓国の量子科学技術専門家は最近数百人水準と議論される。チャットGPTが話題に浮上すると書店にはいわゆるチャットGPT専門家らの本があふれるような様相だ。まだ遠くに見えるが、必ず行かなくてはならない道がまさに量子経済だ。
(中央日報の記事から引用)


毎度ながら「韓国の量子科学技術水準は先導国の63%水準にすぎない」と書いている意味が理解不能です。一体何を計算したら63%という水準が提示できるのか、謎の計算式があるらしいのですが、どうにも見当がつきません
韓国の量子コンピューター開発については当ブログでもこれまで取り上げてきたところですが、実用化ベースの量子コンピューターを1機も作ってもいない(実績がない)のに、63%の技術水準にあると主張したところで「?」と思うだけです
以前取り上げたように、理研の量子コンピューターのような超低温の冷却を必要としない、常温で稼働できる計算素子の開発に韓国は取り組んでいるようです。取り組んでいるとした元の報道が2020年ですが、いまだに実用化できたという報道はありません。実験室であれこれやっている段階なのでしょう
先日は、「韓国語で質問すれば韓国語で回答してくれるチャット式の人工知能開発に成功した」との報道がありました。が、これも既存のチャットGPTを韓国語で使えるようにしただけ、のようです
小手先の「やっている感」だけを出し、進捗しているように見せかけるだけでは何も達成できません
量子コンピューターといってもさまざまな方式が提案・研究されており、どれが本命になるかはまだ分からない状態です。であるからこそ、日本もさまざまな方式を大学や企業が研究しています。こうした基礎研究が重要であり、実用化には至らなくてもさまざまな研究成果、工夫のノウハウが残ります
しかし、韓国は本命とされる方式を見極め、そこに人員も資金もありったけ投入し、トップランナーに躍り出ようという戦略です。彼らはこれを「選択と集中」と称していますが、基礎研究をしないまま勝ち馬に乗ろうという考えです。「韓国は基礎研究が弱いのでノーベル賞をとれない」とさんざん指摘されてきたにもかかわらず、またもや基礎研究をすっ飛ばしていきなり結果を手にしようと企んでいるわけです
上記の記事では2035年までに3兆ウォンを投資すると書かれていますが、約3000億円にすぎません。単年当たり300億円弱の投資でしかないのであり、桁が一つ足りないのでは?
また、量子コンピューター関連の専門家・技術者が現在384人いるのを、2035年までに2500人まで増やす、と別の報道では書かれています。これも新たに大学院に専門課程を設けたり、他分野の研究者・技術者を再教育して量子コンピューターの最先端を学ばせても難しい目標のように思われます(海外から優秀な人材をスカウトする、との提案も添えられていますが、そう簡単に実現できるのでしょうか?)

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