小学校に軽トラ突入 学校対応の遅れ

不測の出来事に遭遇すれば誰もが慌ててしまい、十分な対応ができないのは珍しくありません。ただ、多くのこどもたちが通う学校の場合、十分な対応ができないと守れたはずの命を守れない事態に陥るかもしれません。そのために「外部から不審者が侵入した」とのケースを想定して訓練を実施したり、対応マニュアルを整備しているはずです
宮城県栗原市の市立若柳小学校に7月6日、軽トラックで侵入し児童4人がはねられる事件がありました。学校では対応マニュアルがあったものの、連絡役として指名されていた教員が出張で不在のため、各方面への連絡、保護者への連絡が大幅に遅れる事態になったと報じられています
また、逮捕された小野寺章仁容疑者については、精神的に不安定な人物だったとの報道もあります。事件前に交番を訪れ、「頭がおかしい気がする」旨を申し出ており、対応した警察官は家族に医療機関での受診を促したのだとか


■「痛い」泣く児童
事件が起きた6日午後3時頃、同小ではクラブ活動の最中だった。北側の通用口と校庭を結ぶアスファルトの通路で、児童約15人と教職員2人がクラブ活動でロケットの発射実験をしていた。小野寺容疑者が運転する車が通用口から侵入した時、多くの児童は通用口に背を向けていた。
車に気づいた小学5年の女児(10)は「誰かのお母さんかな」と思った。だが車はゆっくりと直進し、そのまま児童たちに突っ込んだ。市教育委員会によると、現場にいた教員は「音が聞こえないくらいのスピードだった」と話しているという。
はねられた小学4年の男児(10)は突然、背後から強い衝撃を感じた。車とぶつかったはずみで肘や膝をアスファルトに打ちつけ、「びっくりしたし、怖かった」。「痛い」と泣く児童もいた。
■容疑者見失う
事件後、同小の教員らは負傷した児童の対応などに追われ、小野寺容疑者の行方を一時見失った。結果的に通報も遅れたため、危機管理マニュアルを見直すという。
市教委は7日、臨時の学校長会議を開催。その後、報道陣の取材に応じた千田知幸校長と千葉睦子教育長によると、事件直後、現場近くにいた教員が職員室に急行し、報告を受けた教頭と養護教員らが負傷した児童を介抱した。
一方、車に小野寺容疑者がいなかったため、教頭は児童から「校舎の方に行った」と聞き、校舎内に入るのを発見。取り押さえて窓のない放送室に連れて行き、110番した。
マニュアルでは、教頭とは別の教員も連絡を担当するとしていたが、この日は出張で校内にいなかった。このため、消防への連絡は教頭が行い、午後3時25分になったという。また、教頭はメールでの連絡役も担うなど業務が重なり、保護者への連絡は午後7時頃に遅れたという。
また、文部科学省は3月17日付で、校門などの施錠対策が十分かどうか確認するよう通知を出していたが、同小は業者が入る通用口は確認していなかった。
同小は10日に授業を再開し、スクールカウンセラーが児童や教員の心のケアを行う。千田校長は「別の教員が任務をしっかりカバーし合える態勢を整える必要がある」などとし、マニュアルの見直しや警備の強化を進める考えを示した。
■模擬訓練を指示
今回の事件を受け、市教委は市内の小中学校に対し、こうした事態に備えて教員の役割や動きを検証する模擬訓練を行うよう指示した。また、教育施設の出入り口の状況を緊急調査し、バリケードを設置するなどの不審者対策も行う方針だ。
(読売新聞の記事から引用)


小中学校、高校も含め、出入り口が複数箇所ある学校は珍しくありません。さらに門を閉鎖したとしても、教職員のいる校舎との間とは距離があるため、業者が来るたびに数十メートル歩いて門扉を開けに行くのは大変です
門のところに守衛を配置するにしても、その予算がありません
学校の出入り口から校舎の配置まで、抜本的に見直さないと解決は困難であり、すぐに対策を講じるのは難しいところです。つまり、日本中のほとんどの学校は不審者が簡単に侵入できる構造になっており、同種の事件が起こる危険がある、という結論になります
さて、地震や火災、不審者侵入などなどの緊急時の対応としてはどこの学校もツリー形の「緊急対策本部」を用意し、学校長を本部長として各教員に役割を分担させているものと推測します。しかし、教員の人数も限られていますから若柳小学校のように連絡役が不在となり、児童の保護者への連絡が後回しになるケースも生じます。ツリー形の組織図は明瞭で各人の役割を把握しやすい利点はありますが、誰かが不在だったりするとたちまち役割をこなす人手が不足となり、対処が遅れてしまう欠陥も生じます
結局は教員、事務職員が学校に出入りする人物を監視するしかないのでしょう。ただ、不審者が侵入するケースなど1年に1度あるかないかですから、教員、事務職員が常に気を張って監視するなど困難であり、監視の隙が生じるのかもしれません
追記:小野寺被告側は精神障害の影響を理由に無罪を主張し、検察は刑事責任能力に問題はないとして懲役5年を求刑していました
仙台地裁は医療機関での治療を受けることを条件に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡しています。執行猶予の上限は5年ですから、裁判官は今後5年以内に再犯に至る可能性を考慮して限度一杯の執行猶予期間を申し渡したのでしょう。5年以内に再犯に至れば執行猶予は取り消され、懲役3年の実刑が加わります


去年7月、栗原市の小学校に軽トラックを運転して侵入し、児童3人に衝突させるなどしてけがを負わせた罪に問われた被告に対し、仙台地方裁判所は22日、執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
去年7月、小野寺章仁被告(35)は栗原市の若柳小学校の敷地内に軽トラックを運転して侵入し、当時9歳の児童3人に衝突させるなどしてけがを負わせたとして傷害と建造物侵入の罪に問われました。
これまでの裁判で、検察側は懲役5年を求刑し、弁護側は「当時、心神喪失の状態だった」として、無罪だったとした上で適切な医療を受けさせる必要があると主張していました。
22日の判決で仙台地方裁判所の東尾和幸裁判官は、被告は心神喪失の状態にはなかったと判断した上で、「犯行は非常に危険で、小学生を無差別で狙ったという点も悪質だ」と指摘しました。
一方で、「被害者2人と示談が成立し、専門医療機関の治療を受ける意向を示している」などとして懲役3年、執行猶予5年の判決を言い渡しました。
(NHKの記事から引用)

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