戸田市中学校襲撃 ネコ虐待でも立件

授業中(試験中)の中学校に無断で侵入し、教育をナイフで切りつけ殺害しようとしたさいたま市の少年は、鑑定留置を終えてさいまた家裁に送致されました。おそらく刑事責任能力に問題はないという精神鑑定結果が出たものと推測されます
少年が18歳以上であれば家庭裁判所が「刑事処分相当」として検察官送致の決定をするところです。が、本件は17歳ですから微妙なところであり、家庭裁判所がそのまま少年院送致決定をする(相当長期間の矯正教育を実施すべき、と処遇勧告をつけ20歳を超えても収容を継続させる)のかもしれません
被害者が死亡していれば迷わず検察官送致で刑事裁判とし、懲役刑を科したでしょう


ことし3月、埼玉県戸田市の中学校に侵入し教員をナイフで切りつけ大けがをさせたとして逮捕されたさいたま市の17歳の少年について、検察は6日家庭裁判所に送りました。
さいたま市浦和区の17歳の少年は、ことし3月1日戸田市の中学校の教室に侵入し、制止した60代の男性教員をナイフで切りつけて大けがをさせたとして、殺人未遂の疑いで逮捕されました。
警察によりますと、当時、教室では28人の生徒が期末テストを受けていましたが、避難したためけがはありませんでした。
当時、事件に使われたとみられるナイフをはじめ複数の凶器を所持していて、これまでの警察の調べに無差別殺人に興味があったという趣旨の供述をしているほか、「以前から人を殺してみたかった」とも話しているということです。
この少年についてさいたま地方検察庁は刑事責任能力を調べるため5日まで鑑定留置を行っていましたが、6日さいたま家庭裁判所に送りました。
家庭裁判所は、今後、生活状況や家庭環境を詳しく調査し、処分を決めることになります。
(NHKの記事から引用)


別の報道によれば、少年は事件前にネコを虐待していたとして動物愛護法違反容疑でも書類送検されており、こちらも家庭裁判所に追加で事件送付され少年審判の対象となります
神戸の児童連続殺傷事件以来、少年による小動物虐待が殺人衝動の予兆だと注目されるようになったのですが、実際に事件として立件されるのは珍しいと感じます(自分が感知していないだけで、実例は多いのかもしれませんが)
野良ネコの場合、飼い主がいないため被害届が出されず、警察も本気で事件にしない事情があるのかなと思ったりしますが、確証はありません
さて、この事件を巡っては、「神戸の児童連続殺傷事件と同じだ」などと安易に同一視する声もあるわけですが、大いに疑問です。神戸の事件は根本に性の問題があり、その葛藤が少年をして神に生贄を捧げる儀式というファンタジーを生み出し、殺人によって自分が何者かになれるとの思い込みを誘発したと解釈されます
小学生高学年時には野良猫を解剖したり、舌を切り取ったりするようになり、中学生になってからは人を殺して内蔵を引き出しそれをむさぼり食う場面をイメージして自慰に耽るようになった、と少年Aの家庭裁判所審判決定(判決文)には記載されています
その中で精神鑑定結果では、「3)性衝動の発言時期は正常であるが、最初からネコに対する攻撃(虐待・解剖)と結びついていた。その原因は分からない。自分の中にありながら自分では押さえられないネコ殺しの欲動を魔物ち認識し、その人格的イメージに対し、酒鬼薔薇聖斗と名付け責任を分離しようとした。4)ネコ殺しの欲動が人に対する攻撃衝動に発展した。現実に他人を攻撃すれば罰せられるため、性衝動は2年近く空想の中で解消されていたが、次第に現実に人を殺したいとの欲動が膨らんできた。5)他人と違い、自分は異常であると分かり、落ち込み、生まれて来なければ良かった、自分の人生は無価値だと思ったが、次第に自己の殺人衝動を正当化する理屈を作り上げていった」と表現されています
少年A自身、なぜそれほどまでにネコ殺しに執着したのか、言語化して説明できなかったのでしょう
なお、精神鑑定書は2つ存在し(2度、精神鑑定が実施されたので)、200ページ近い一大論文めいたものだそうです。残念ながら精神鑑定書の原本は事件の裁判記録とともに、神戸家庭裁判所によって廃棄処分にされ、残っていません。おそらく鑑定を担当した医師の手元には複写が残っていると思いますが
対して、戸田市中学校襲撃事件ではネコ殺しと本件殺人未遂がどのように少年の中で結びついていたのか、が問題です
そこに踏み込まないまま、同じ事件だと決めつけるのは避けるべきでしょう

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