神戸弘陵高生徒殺し 被告の主張は矛盾だらけ

神戸市で高校2年生の男子生徒を刺殺した事件の公判が続いています
公判でのやりとりを報じた記事がいくつもあり、それぞれが断片的な内容なのでこれを整理し、繋ぎ合わせるのが大変です
これまでの報道で目を通したものから判断すると、泉龍都被告の言い分にはいくつもの矛盾が垣間見えます。ただ、矛盾しているからといって直ちに有罪と決めつけてよいものではありません。「矛盾点を衝いて論破すれば勝ち」というものではなく、なぜ矛盾した主張をあれこれと続けるのかを考える必要があります
裁判まで十分時間があったはずで、弁護人とも打ち合わせもしており、公判で出される質問にもどう答えるか模範解答も用意したはずです
それでも泉被告が語れば語るほど矛盾がボロボロと出てくるのであり、不思議に思えてきます


神戸市北区で2010年、高校2年の堤将太さん(当時16)が死亡し、殺人罪に問われた被告の男(30)に対する裁判員裁判の第2回公判が8日、神戸地裁で開かれた。この日は約4時間にわたって被告人質問があり、検察側と弁護側のほか、堤さんの父・敏さん(64)も質問に立った。
前日の初公判に続いて黒のスーツ姿で入廷した被告は、落ち着いた様子で質問に答えた。
起訴内容は10年10月4日夜、同区内の路上で、座っていた堤さんの鎖骨付近などをナイフで刺して殺害したというもの。公判の争点は殺意と当時の精神状態に絞られている。
被告は、弁護人との質疑の中で、当時持っていたナイフは護身用だと述べた。「ナイフで刺したら死んでしまうと思わなかったのか」との問いには「思いませんでした。傷つけようとはしたが、ナイフで刺すと死んでしまうかもしれないとか、痛いとかは全くわからなかった」と答えた。
事件の翌年、小学校時代の同級生2人に「人を殺した」と明かしたとし、理由は「当時は誰でも誰かを殺したことがあると思っていた」からだと主張。「18、19歳の頃は悪いことをしたと思っておらず、その後、事件の記憶も薄れていった」と述べ、自首も考えなかったという。
(朝日新聞の記事から引用)


矛盾した発言
「ナイフで刺しても死ぬとは思わなかった」との主張に違和感を覚える方は多いはずです。これは「殺意がなかった」と公判で主張するため、弁護人から「殺してやろうと思ったなど、殺意があったと解釈されるような発言は絶対にするな」と釘を刺されているからでしょう
刃物で複数回、それも相当の力を込めて刺したと思われますので、「殺意はなかった」と取り繕うために「死ぬとは思わなかった」との表現を使っているのでしょう。ただ、その言い回しが裁判官や裁判員にも違和感を与えるのであり、「本当は殺意があったのでは?」と疑念を抱かせる結果になります
また、別の報道では、「誰を刺したのかは知らないままだった。被害者が死亡したのも知らなかった」とも泉被告は語っているのですが、上記の記事によれば事件のあった翌年に「人を殺した」と知人に打ち明けており、殺人を明確に意識していたのは明らかです
なおかつ、泉被告は高校生を殺害するという小説を書いて公開してのですから、2010年に神戸で男子高校生を殺害した記憶を持ち続けていたと解釈されます
矛盾だらけの主張が出てくる理由
1つは、犯行時の被告の精神状態が不安定であり、記憶も矛盾だらけで「正常な状態ではなかった」と裁判官や裁判員に印象付けようとの狙いです。「人を刺しても死ぬとは思わなかった」発言も、「この人、かなりおかしいぞ」と思わせる意図があったのでは?
2つ目に考えられるのは、被告の人格に偏りがあって行動や発言にもその影響が及ぼしている可能性です。事前に弁護人と打ち合わせはしているものの、用意した筋書き通りの発言ができず、その場で思いつくまましゃべっているのかもしれません。ただ、もしそうであれば弁護人が介入して発言を修正させたりするでしょう。が、そうしないのは被告が自分の主張を全面に押し出し(それが矛盾していても)、あくまでもその線で裁判を闘うと弁護人に伝えており、弁護人もそれを承知しているのか?
現時点ではこれと断定するわけにはいきません。が、報道されている限り泉被告は頑固で融通の効かない性格らしく、法廷で臨機応変に受け答えできるような人物でないのは明らかです。なので、現在でも「あの時の自分の行動(堤さんを刺した)は間違っていない」と思い込んでおり、反省も後悔もないのかもしれません。または、1点でも自分の非を認めてしまったら自分が保てないという強迫的な心情があって、裁判官にどう言われようとも節を曲げる気はない…との心境なのでしょうか
ただ、裁判としては泉被告の内心がどうであれ法によって裁くのであり、「犯行当時は刑事責任能力があり、堤さんに対する殺意があって刺した」と認定するものと予想します

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