中国ではなぜ「SLAM DUNKが作れないのか」という記事

お約束のように、「なぜ中国では『スラムダンク』を生み出せないのか」という記事を中国メディアが掲載しています
さらに記事にはお約束のように、見当外れな分析が並んでいます
記事を読めば中国に漫画やアニメーションの批評というものが根付いていないのが一目瞭然で、現状分析もできず、専門外の記者による雑感を書き並べているだけです。これでは質の高い漫画やアニメーションを生み出せないのも当然でしょう


中国メディアの工人日報は7日、「なぜ中国は『スラムダンク』を生み出せないのか」との記事を掲載した。
井上雄彦原作の漫画・アニメ「スラムダンク」は中国でも非常に人気が高く、4月20日に中国で公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」も前売り分の興行収入が1億1500万元(約22億3000万円)を超え、中国で上映された海外アニメ映画の前売り最高記録を更新するなど大ヒットしている。
記事は、映画「スラムダンク」のヒットを見るとどうしても頭をよぎる疑問があるとし、それは「なぜ中国では『スラムダンク』(のような作品)を撮ることができないのか」ということだと説明。「もちろん芸術に国境はなく純粋に作品を楽しめば良いのだが、現実として芸術家には母国があり、文化はその国のソフトパワーの一つだということは、すでに共通認識になっている。そのため、中国人である私たちが『スラムダンク』に少しだけ羨望(せんぼう)や嫉妬の念を抱くのも人情だろう」とした。
その上で、「中国アニメが日本アニメに勝てないということをさらに細かく見ることもできる。例えば、スポーツをテーマにした作品では、なぜ中国は『スラムダンク』のような爆発的ヒット作を生み出すことができないのか。中国にも『大鬧天宮(大暴れ孫悟空)』や『??』などヒットしたアニメがあるためこのような言説に納得できない人もいるだろうが、中国のアニメが日本のアニメのような社会現象を巻き起こすような作品を生み出すのが難しいというのは争いようのない事実だ」と論じた。
そして、「日本のアニメには完全な産業チェーンがあり、漫画家から声優、音楽、アニメーション技術、視聴者に至るまで暗黙の好循環が形成されている。しかし、中国でアニメといえば依然として子どもに見せるものというステレオタイプなイメージがある。また、『スラムダンク』『キャプテン翼』『タッチ』などは何十年にもわたって人気であり続けているが、中国のアニメは散発的でそれに携わる人々もそこそこ売れればそれでいいという気構えだ」と日中を比較した。
記事は、今年初めに中国で公開された卓球を題材にした映画「中国??之絶地反撃」が期待されながらも興行収入はやっと1億元(約19億5000万円)を超えるほどと惨たんたる結果だった一方、「スラムダンク」は公開から5日で4億元(約78億円)を超えたことを挙げ、「両者のコントラストに胸が詰まる思いだ」と言及。「中国はスポーツにおいて日本よりも強く、卓球は中国において国技と言われる誉れ高いものだが、なぜ私たちのスポーツ作品はヒットしないのか」と改めて疑問を提起した。
そして、「技術や資金面の問題というよりも、むしろ人の創作理念だろう。後は、物語をより面白く、より感動的に表現することだ」とし、「映画は総合芸術であり、画面、音楽、ナレーションなどはとても重要だが、いずれも内容に沿ったものでなければならない。感動的なストーリーを語っても、最終的には観客に共感してもらわなければならない」とした上で、「『スラムダンク』では主人公が敗れたり、平凡な生活に戻ったりする結末が描かれる。“青春に無念さは付き物”というストーリーを描くのは非常に高度だ。一人ひとりの平凡さを直視し、それぞれの光る部分にフォーカスする。このような描き方は、すべての人に自分の可能性を感じさせ、結果として共感を呼びやすいのではないだろうか」と分析した。
一方で、中国の作品については「(女子バレーボールを描いた)『奪還』にしろ、『中国??之絶地反撃』にしろ、壮大さを追求しすぎており、優勝に向かってひた走るというテーマの中で人物は詳しく描かれずに薄っぺら。観客の心に響くことはないため、興行収入が理想的でないのも道理だ」と指摘。「『スラムダンク』をノスタルジーに乗じているだけと批判する人もいるが、そんなに簡単なものではない。それは心の共鳴、感情の触発、時間の浸潤を必要とする。だから、お金を払って映画館で観賞する人たちはばかではないし、何度も観賞する人も狂っているわけではない。作り手が芸術を尊重すれば、観客はその作品を尊重する。簡単な理屈なのだ」と結んだ。
(レコードチャイナの記事から引用)


長々と引用しました
あちらこちらツッコミどころだらけの記事です。まず、日本の漫画文化の蓄積、層の厚さというものが理解できていないのは明らかです
特にスポ根作品は少年漫画作としては鉄板で、その分読者の厳しい評価にさらされ、長期連載が実現するものはわずかです。どこかで見たストーリー、キャラクターでは読者から飽きられてしまいます。その点では、あだち充の描く野球漫画は類似したキャラクターばかりですから、あれで根強い支持を得ているのは奇跡としか言いようがないのですが
それでも読者が共感し、感情移入できるのは話の作り方が巧みで、さまざまな工夫が凝らされているからでしょう。これも長い年月をかけ、幾多のスポ根漫画の蓄積があったからこそ、いかに読者を惹きつけ飽きさせない展開で話を進める技術が練り上げられたものと解釈できます
あれこれ言うより、中国のバスケットバールアニメをご覧ください
「SLAM DUNK」とは比べ物にならない凡庸な作品です。まず、バスケットボールをプレーしているというリアリティが決定的に欠けており、試合での選手の動きがダメダメです。アニメーターの表現力不足をどうにかしないと
そしてカッコいい主人公だけが浮いた存在であり、切磋琢磨するだけのライバルが不在もしくは弱すぎというのも問題です
制作陣は「SLAM DUNK」を繰り返し見て参考にしたと思うのですが、何も学び取れていないのではないか、と思ってしまいます。それだけアニメーション制作陣の感性も鈍いのでしょう。多くの漫画やアニメを見て育った日本の漫画家やアニメーターとは感性でも表現力でも作品にかける意気込みでも、大きな違いがあるのです
では中国で話題になった熱血バスケットボールアニメを御覧ください

籃球 (バスケ) 旋風

おそらく「黒子のバスケ」風な作品にしたかったのでしょうが、日本のアニメファンが見たら「何だこれは?」と思うだけで、チャンネルを切り替え二度と視ないのでは
全部で52話も作られたそうですから、その意気込みだけは感心します
人物描写も平板ですし、背景の作画も手抜き、ストーリーにひねりもなく、日本でなら全13話で企画して3話まで放映して打ち切り宣告でしょう

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