韓国エンタメ 日本に勝利宣言するも混迷

韓国の映画やテレビドラマはポン・ジュノ監督の「パラサイト~半地下の家族」が米アカデミー賞で4部門を受賞し、「イカゲーム」がネットフィリックスを介して世界中に配信され、韓国メディアは「日本を完全に超えた」と自画自賛するほどの勢いでした
ネットフィリックスから多額の制作資金が韓国のドラマ制作会社へ流入し、俳優の出演料も高騰したと聞きます。しかし、「イカゲーム」以降はこれといったヒット作もなく、低迷しています。映画の方も伊藤博文を暗殺した安重根を描く大作など公開しますが、観客を集めるまでには至りませんでした
逆に日本の劇場版アニメが立て続けにヒットし、大きく差をつけられた形です
現代ビジネスのサイトに「韓流映画・ドラマが瀕死の危機にある」との記事が掲載されていましたので取り上げます。長文の記事なので部分的な引用にとどめます。全文を読みたい方は現代ビジネスのサイトへアクセス願います


韓国「日本アニメブーム」のウラで韓流映画・ドラマが瀕死の危機に…いったい何が起こっているのか?
「日本アニメブーム」の理由
韓国メディアは、日本アニメの予期せぬ快進撃を見守りながら、その理由を分析する一方で危機に陥った韓国映画界への懸念を示している。
「朝鮮日報」は、日本アニメ好調の理由を4つに分析した。つまり、「世界市場で決定的優位を持つコンテンツ」、「ジャンル的、産業的多様性を武器に韓国でも強力なファンダムを保有している」、「折れない心(「The first SlamDunk」)、災難以後の慰め(「すずめの戸締り」)など、普遍的共感を持つテーマで観客にアピールしている」、「『ワンソースマルチユース(onesource multi-use)』で人気のバウンダリを広げている」点などだ。(「朝鮮日報」4月6日〈日本アニメの突風、韓国観客の3人に1人が観た〉)
「中央日報」は「ジャンルの多様性」を主な理由として分析した。同紙は、「日本の大衆文化は多様なジャンルを着実に発展させてきており、その中で私たち(韓国)に足りないジャンルがマニア層を形成している」と評価した。
具体的には、「最近の日本のコンテンツはレトロ、ノスタルジア、ヒーリングなどの感性が主流を成しているが、このような感性が、復讐、暴力、不平等などの刺激的な素材一辺倒の韓国コンテンツのニッチマーケットを攻略した」と分析。また、3年間続いた「ノージャパン運動」の反動という見方も併せて紹介した。
(「サンデイ中央」(中央日報週末版)3月18日〈ノスタルジアにハマる~スラムダンクからすずめまで……Jカルチャーブーム〉)

韓国の映画やドラマに欠けているものが日本のアニメにはある、との指摘です
ただ、そうした分析は作り手の側についてのみ論じるものであり、受け手の側については考察を欠いています。エンターティメントは作り手側が一方的に発信する形ではありますが、実は受け手側が示す反応、熱狂、熱量、そして二次創作から関連グッズの売上といった多層的な動きがあってこそ「文化」が形成されます。つまり、韓国の映画やドラマは視聴者がただ消費するだけで、顕著な反応を生み出していかにのでは?
なので、上記のような韓国メディアによる分析は上っ面しか見ていない感がありありです

「コロナで劇場に観客が来られない→100億ウォン以上を投資した韓国型ブロックバスター級の映画が一斉に公開を先送りする→その結果、倉庫には90本ほどの映画が眠っている→劇場がチケット価格を上げて観客の期待値はぐんと高まる→だが、現在上映中の中低予算映画は観客を満足させず、劇場収益はさらに下がる→その結果として新作投資を一斉に止まる……。
このような一連の過程で韓国映画界は『動脈硬化』状態に嵌っている。映画の企画段階から劇場公開までは短くても1年半、平均2年かかるので、 今作り始めた映画は2025年に劇場にかかる。今映画を作らなければ2025年上半期からは上映する韓国映画がなくなる」
(「京畿新聞」4月19日〈 映画界、誰も憎まない者の死 〉)

「コロナ禍によって劇場公開を見送った結果が悪循環を引き起こした」との指摘も何だかなぁ、という気がします。それ以前の、作品の質や内容の問題だと思うのですが。韓国では映画の制作に政府の補助金が給付されるため、公開の目処すら立っていない映画でも制作され、補助金だけ受け取って劇場公開ないままお蔵入りという事態が以前からあったわけで。そうやって糊口をしのぐために観客相手に公開されない映画を作り続けたツケが、今日の事態を引き起こした一因なのでは?
現代ビジネスの記事では、韓国のテレビドラマ・映画のインターネット配信サービスを実施している会社の売上減少にも言及していますが、そちらは割愛します。似たりよったりのサービスが乱立すれば売上が伸びないのは当然で、淘汰されるだけです
朴槿恵大統領は就任時、韓国のマンファ(漫画)を世界に普及させるため補助金を出すと言明していました。その政策が実現したのが、実現しなかったのかは不明です。インターネットで配信される縦スクロールのウェブトーンが、韓国政府の補助金によって普及したというのであれば、補助金政策も実を結んだと解釈できますが、どうなのでしょう
ただ、そうやって補助金頼みの政策がエンターティメントの作品の質を向上させるとは限らず、補助金を食いつぶすだけに終わる場合もあります。自分はエンターティメント作品が作り手と受け手によって育まれるものだと考えますので、受け手側の質の向上も不可欠でしょう
ダメな作品にはダメと言い、良い作品は歓迎する循環が質を高めるというのが理想です
その意味では現在の日本映画は、「誰が見るのか?」と言いたくなるような漫画の実写化にばかり執着しており、首をかしげざる得ない状況です

(関連記事)
「日本漫画は衰退し、韓国ウェブトーンの時代」という記事
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/502553878.html
日本アニメ売上2兆92百億円 韓国アニメは8百億円
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/501836243.html
韓国ドラマ市場 不人気で崩壊寸前
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/501245835.html
韓国産劇場向けアニメ ヒット作なく絶滅寸前
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/499414227.html
「クールジャパン戦略は大失敗」なのか?
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/499328075.html
「韓国コンテンツは日本を超えた」と報じる韓国
漫画家浦沢直樹 「ウェブトーンは退化」と指摘
「マンガ」が「ウェブトゥーン」に敗れる日
「韓国ウェブトゥーン人気に日本漫画負ける」 韓国メディア
ウェブトーン? 日本の漫画バカ売れ
中国メディア「日本のアニメはなぜ特別なのか」
中国ではなぜ「SLAM DUNKが作れないのか」という記事
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/499320744.html
「中国アニメは天才に頼らず日本を超える」との記事
「中国アニメが日本を追い越す日」という記事
韓国アニメ「BASTIONS」 まったく話題にならず
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/500196341.html
韓国アニメ「BASTIONS」はBTSとコラボレーション
韓国 コンテンツ輸出好調と自画自賛
中国を席巻する日本の劇場版アニメ
劇場版「スラムダンク」に熱狂する韓国
中国で「SLAM DUNK」がウケた理由 自己像探求
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/501786520.html
大ヒット映画「アバター2」を負かす日本アニメ
蒸し返される俗説 「演歌の起源は韓国」