池袋暴走事故 飯塚受刑者の謝罪と賠償金
高齢者が運転する車が死亡事故を起こしたとのニュースをしばしば目にします。池袋の暴走事故で当時88歳の飯塚幸三受刑者が死亡事故を起こし、高齢者の免許返納が進んでいますが、地方へ行くと80歳を超えても運転している人はめずらしくありません
さて、飯塚受刑者は禁錮5年の実刑が確定し服役しているわけですが、デイリー新潮の記事によれば自動車保険の保険金支払いを巡って裁判が続いており、まだ決着していないのだそうです
さらに、飯塚受刑者が裁判前に条件付きの謝罪に固執していたとも書かれています。条件付きというのは、飯塚受刑者側(当時は裁判の判決が下ったばかりで、服役はしていません)が指定した日に遺族である松永拓也に裁判所へ足を運んでもらい、そこで謝罪をするという内容です
被告が謝罪をしたという既成事実を作るための謝罪でしかありません。控訴審の前に「遺族に謝罪し、一定の理解を得た」とのアリバイ工作でしょう。松永さんがこれに応じなかったため、謝罪は実現せず、飯塚受刑者は控訴を見送って有罪判決が確定しています。それほどまでに飯塚受刑者は遺族に謝罪したくなかったのであり、己のプライドに執着していたのでしょう
自動車保険の保険金支払は任意保険を契約している保険会社と被害者遺族との争いになります。保険契約では対人賠償無制限になっていますが、無制限に保険金を支払ったりはしません。保険会社も商売ですから、自社の算定基準に照らして金額を算出し、遺族側に提示します。これに不服がある場合は、民事訴訟で決着を図るわけです
松永さんは刑事訴訟と並行して20年10月、総額1億7000万円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。裁判は現在も継続中だ。交通事故の責任をめぐる民事訴訟では、相手が任意保険に加入している場合、実態としては損保会社との間で争われる。
被告の申し出は、この裁判の法廷の場での謝罪である。つまり謝罪の事実が法廷で示されれば、「被告の反省」ととらえられ、原告への賠償額を決める際、被告にとって有利にはたらく可能性がある。過去に起きた交通事故の民事訴訟判例では、事故後の謝罪の有無など加害者の態度や言動が、賠償額算定の基準になっている。
事故直後からの飯塚受刑者による謝罪申し出の経緯を辿っていくと、賠償額を抑えたいがための謝罪と捉えられても仕方がないだろう。原告代理人が準備書面でその可能性を指摘すると、被告代理人は、「謝罪の申し入れは賠償額減額のためなどという意図は全くなかった」と明確に否定した。
結局、謝罪は実現せず、飯塚受刑者は申し入れから約20日後に刑務所に収監された。松永さんはその後に東京地裁に提出した陳述書で、このように結んでいる。
「今回の飯塚氏側の立ち振る舞いは、あまりに私たちに配慮がなく、自己中心的でした。専ら『自分たちのためだけの謝罪』の申し出であったとしか思われず、刑事事件が確定したという事実や安堵感が吹っ飛ぶほどの衝撃でした。そのような心情をぜひご理解いただきたいと思います」
(デイリー新潮の記事から引用)
留意すべき点として、遺族である松永さんは保険会社と飯塚受刑者の両方を相手取って1億7千万円の賠償を求め、民事訴訟を起こしていることが挙げられます。自動車保険会社だけ、を相手にしているわけではありません
謝罪を拒み続ける飯塚受刑者に直接、民事上の責任を問うているのです
自動車保険会社が支払う分とともに、飯塚受刑者にも損害賠償を支払う責任を負わせたいと考えたのでしょう
松永さんは妻と娘を亡くしていますので、保険会社の算定で支払う保険金は1億円くらいだと推測します。人の命がその程度か、と思われる方もいるのでしょうが、「自動車事故での死亡」という条件下で一定の算出基準があって弾き出された金額であり、どこの保険会社であろうと大きな差はないはずです。通常の交通死亡事故であれば、保険会社の算出した額を「概ね妥当」と裁判所は認めます
今回はその算定基準を超える分の請求をどこまで裁判所が認めるか、訴訟の結果が注目されます
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