韓国の量子コンピューター すごい開発内容
東京大学と日本IBMは「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター(KBIC)」内に、127量子ビットの量子コンピュータを稼働させると発表しています。先日、理化学研究所の量子コンピューター1号機の稼働が報じられたばかりですが、実用化に向けた取り組みの速さに驚かされます。IBMが東京大学と手を組むのは、量子コンピューター技術に関して東京大学がさまざまな研究開発を進めており、実績があるからです
相手に相応の技術や研究成果がなければ、企業としては手を組むメリットがありません
さて、こうした量子コンピューター開発の報道を目にして、気になるのが隣の国の取り組むです。いくつか、ニュースを掘り起こしましたので言及します
昨年の夏、韓国メディアは以下のように報道しています
韓米科学協力センター(KUSCO)は、米国と韓国の大学間で様々な量子研究プロジェクトを推進するため複数のセンターを発表した。
具体的には以下の通り。
韓国科学技術院のセンター、NIST、シカゴ大学との量子エラー訂正センター設立。
梨花女子大学、デューク大学と共同でイオントラップ量子コンピューティングセンターを設立。
高麗大学、カリフォルニア工科大学と共同でスピン量子コンピューティングセンターを設立。
エンタングルメントベース量子ネットワークセンター 韓国標準科学研究院、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校との共同研究。
韓国科学技術院、ハーバード大学と共同で「量子リピータセンター」を設立。
高麗大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、マサチューセッツ工科大学と共同で量子センシングセンターを設立。
さらに、シカゴ大学プリツカー分子工学部(PME)の2人の教授が、量子エラー訂正センターの設立を共同で主導するために100万ドル(約1.4億円)を授与されている。また、先週、ワシントンD.C.に、韓米量子技術協力センターが開設され、両国間の量子プロジェクトの支援に乗り出した。
(Korea Timesの記事から引用)
怒涛の如く最先端分野での研究を推進しているかのような印象を与えますが、これは単に大学や研究所同士で共同研究をやろうという了解覚書(MOU)を取り交わしたというだけで、センターが完成して研究がスタートしたわけではありません。この了解覚書をベースに、これから共同研究の骨子を決め、どのような取り組みを進めるか協議を開始するという段階です
そもそも、韓国の大学はまだ量子コンピューターを保有していないのですから、実践的な取り組みは何もできないままで、外国の論文を読みながらああでもない、こうでもないと学生に講釈しているのが実態です
ですから、最初に述べた東京大学とIBMのように、お互いの研究実績を交換し利用するような水準には程遠いのです
同じく昨年の夏、韓国の釜山市はIBMと「量子コンピュータシステム構築に向けた了解覚書(MOU)」を締結したと報じられています
韓国はこの了解覚書が大好きなようで、やたらと了解覚書を交わすのですが、先に述べたように「これから話し合いましょう」という程度の約束であり、IBMが最先端の量子コンピューターを釜山市に設置して共同利用を始めると約束したわけではありません(韓国の人たちはそのように勝手に決めつけている節があります)
釜山市は、6月10日、量子コンピュータ技術開発のパイオニア、そしてグローバルICT企業である米IBMおよび韓国IBMと「量子コンピュータシステム構築に向けた了解覚書(MOU)」を締結した。
現在、これからの地域経済発展の原動力となる「量子コンピューティング」は、実用化を目指しIBM社との協力を多角的に検討している段階で、韓国の量子技術はまだ初期の段階にある。そんな中、本取り組みにより釜山市が量子技術力の底上げを牽引していけるものと期待している。
「量子コンピュータ(Quantum Computer)」は、量子物理学の特性(絡み合い、重ね合わせ等)を活かした次世代革新技術であり、スーパーコンピューターで解析に1万年を要する問題をわずか200秒で解析することができる「超高速演算コンピューター」として知られている。
(中略)
「量子コンピューティング」とは、従来のコンピュータとは全く異なる新たな基盤のコンピューティング技術であり、現存のスーパーコンピュータでは解析が困難・不可能な問題を解決することができるテクノロジーだ。
多岐にわたるビジネス分野(医薬品の開発、次世代のバッテリー設計、腐食分析、自動車の構造解析、新素材の開発など)において抜本的な解決策を見出し、新たな価値の創出に向けて「戦略産業」を生み出せるポテンシャルを備えている。つまり、既存の産業に付加価値を加え、新たな成長産業の創出を可能にするものである。
(中略)
世界最大規模の量子コンピュータを提供するIBMは、毎日、IBM Quantum System(クォンタム・システム)で数十億の回路を駆動する40万人を超える積極的なユーザーコミュニティを構築しており、同コミュニティでは、応用事例(バッテリー化学、海上運輸、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)素子の材料設計、マシンラーニング等)の開発だけでなく、1800編を超える研究報告書が出版されている。
釜山市は、IBMの「量子コンピューティング技術」を釜山地域の公共機関や研究機関などに提供することによりIBMとの継続的な関係を構築し、釜山地域内の商業用量子産業の育成に向けた公共投資サイクルの促進を図っていく。
(釜山市のウェッブサイトから引用)
釜山市が「IBMが世界最先端の量子コンピューターを釜山市に設置する。我々のものだ」と言わんばかりの内容です。なお、IBMはそんな約束をしてはおらず、「量子コンピューターの利用について話し合いましょう」と言っているだけです
釜山市が量子コンピューターの設置のため200億円くらい提供するなら実現するかもしれません(商売ですから)。が、そのような資金を提供する気もなく、IBMが資金も資材もノウハウも出すはず、と決めてかかっているのでは?
この先2~3年後、どうなっているのか見守りましょう。多分、何も実現などしないと予想します
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