ストーカー対応 治療は現在でも手探り

男女交際のもつれから、相手を殺して自殺するという事件が散見されます。別れ話がこじれて相手へのつきまとい行為を繰り返し、職場にまで押しかけるほど行動をエスカレートさせたりするわけですが、異常な行動であるとの自覚は欠けています。愛情の現れであると思いこんでいたり、自分と向き合おうとしない相手が悪いと憤ったりするだけで、周囲の迷惑など度外視してとことん突っ走るのが特徴です
そうしたストーカー行為ですが、ストーカー規制法などで取り締まることはできても、直ちに解決というわけにはいきません。接近禁止の命令や損害賠償支払いなど意に介せず、最終的には相手を殺害するまで歯止めがかからないケースもあります
FNNプライムオンラインの記事が、ストーカー治療の現況を取り上げていますので言及します
長文の記事なので、前段部分は省略します。ここでは50歳代の男性が職場の20代女性に繰り返し交際を求め、ストーカーとして逮捕・起訴された挙げ句に執行猶予付き有罪判決を受け、治療を受けるに至った経緯が紹介されています


元ストーカー加害者が語る事件とカウンセリング…高齢者ストーカーの孤独 求められる治療の義務化
(前略)
警察の抑止やカウンセリングでは効果が期待できないほど衝動性が強く、殺意をいだいているような切迫したストーカーには、2013年から連携している病院で「条件反射制御法」という治療を受けさせるようにして、効果をあげているという。
「ストーカー行為をする人が被害者への行動を制御できない疾患のレベルなら衝動性を抑える治療、行動を制御できる不健康のレベルなら思考に働きかけるカウンセリングなどが効果的です。禁止命令を出すときにその判断ができ、危険なストーカーには治療が義務づけられるようになるべきです。治療法が広まり治療施設も増えることが必要です」
高齢者のストーカー化
そして最近は高齢者のストーカーの相談が増えていると小早川さんは感じるという。
「特に男性は退職などで仕事がなくなると一気に孤独になる傾向があります。女性は買い物や料理、友達付き合いなどあるが、男性は家族がいても妻や子供、孫との付き合いが希薄なことが多い。こうした人が見ず知らずの人や知人程度の相手に対し関わりを求めすぎて、突如ストーカー化することがあるのです」
警察庁のまとめでは昨年の60歳代以上のストーカー加害者は約12%となっている。
高齢化社会を迎える中で、孤独などから生じるストーカー行為の対策も求められる。
虐待やいじめが影響も
「幼少期から大切な両親とか友人らに大切にしてもらえなかった寂しさや怒りが、執拗に復縁を迫るような事件になることはありえます」
警視庁などからの委託を受けて、ストーカー規制法違反で逮捕された患者らの治療に「認知行動療法」であたっている国立精神・神経医療研究センターの平林直次診療部長は、子供のときの虐待やいじめなどの経験がストーカー行為に結びついていることもあると話す。
「患者にはその事件だけでなく、どういう風に育ってどんな学校生活だったか、親との関係はどうだったのか、なぜストーカー行為がおきたのかを聞き取ります。本人と一緒に紙に書くなど模式図にして、本人の中でおきていることを一緒に理解することがスタートだと思います」
「その上で、ふと寂しさを感じストーカーの相手に会いたいと思った時に、これまでは相手にメールをしていたが、認知行動療法では今までとは違った行動を取らせるために散歩や音楽など本人が好きなことをあらかじめリストにしておき、実際に行動します」
こうした別の行動を繰り返すことで、ストーカーにつながる気持ちを変えていくという。
変わろうとする意思があるか
一方で多くの患者が警察からの指示で来ているので、ストーカーの被害者や警察への反発があり、治療費も原則自己負担なことから治療のスタートラインにつけないこともあるという。
「精神科治療はすべてそうですが、患者に自分が変わろうとする意思があるかどうかが大切です。警察からある意味強制されてきて、お金を払って治療を受けることもあり、途中で病院に来なくなることが多いのも現状です」
患者が少なければ症例も集まりにくくなる。
「私たちもそれほど多くの患者を診ているわけではありません。一般的に病気は各病院の多くの症例から治療法が確立していきますが、受け入れ施設も限られている中では診断基準や確立された治療法も定まってきません」
(以下、略)


治療は手探り状態ですが、それでも効果的な対処方法が皆無、というわけではありません。要は本人にどれだけ治療を受けて問題行動を克服する気があるか、にかかっています
なので本人任せにするのではなく、家族や周囲の人たちの理解と支援も不可欠でしょう。治療が1年以上続くのも珍しくはなく、むしろ2ヶ月や3ヶ月で「治った。自分はもう大丈夫」などと安易に決めつけ治療を中断しないよう周りの人が気をつけておく必要があります
手探りの治療であれ、ともかく「自分を変える」という意志の上で取り組んでみるのが一番です。行動しなければ何も始まりません
外野にいる我々としては、中途半端に相談に乗ったり、生半可な助言などするのは止めて、プロに任せるという判断も重要です。ストーカーに悩む知人の相談に深入りし、身動きが取れない状態に陥るのは危険です
カウンセラーであれ、他の心理職であれ、自分の手に負える事案かどうかを見極める判断力が必要であり、手に負えないのであれば他の相談機関や医療機関に委ねる決断をしなければなりません。それができないと自身が潰れてしまいます

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