「スラムダンクと反日主義」 韓国紙コラム

朝鮮日報が哲学者の寄稿という形で韓国で大ヒット中に劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」と、韓国に根強く残る反日主義について語らせています
井上雄彦の漫画「SLAM DUNK」は韓国で登場人物をすべて韓国人に置き換え出版され、大ベストセラーになりました。作品のどこが韓国の読者の心を捉えたのかはともかく、それだけ登場するキャラに感情移入できたのでしょう。つまり、「これは自分たちの物語だ」と受け止め、没入したものと考えられます
そして劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」の公開によって人気が再燃しています。が、現時点ではこれが韓国の漫画ではなく、日本の漫画が原作だと誰もが知っているところです
その「SLAM DUNK」を引き合いに出し、反日主義は克服されなければならない、と記事は主張します。長文の記事なので、一部を引用します。全文を読みたい方は朝鮮日報日本語版にアクセス願います


【寄稿】古臭い反日主義、無責任な扇動は歴史の退行に過ぎない
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/04/07/2023040780109.html
(前略:ソン・テソプ【宮城リョータ】の生い立ちの説明)
人の心は、時として一晩で変わる。テソプもそうだった。死んだ兄を恋しがる悲しみが、健全な勝負欲に変わった。このように、ある感情が別の感情へ、否定的な内面の要素が肯定的な何かへと変化する心理的動きを「昇華(sublimation)」と呼ぶ。個体が液体の段階を経ることなく気体に変わる現象を指す物理学と化学の用語を、人間の心に当てはめた表現だ。
こんにちわれわれは「否定的な感情を肯定的に昇華させる」という言葉を、とても慣れ親しんだものとして使っている。だが、厳然として原作者がいる。ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが、まさにその主人公だ。『人間的な、あまりにも人間的な』で彼が投げかけた問い、「どうして理性的なものが理性的でないものから、感覚のあるものが死んだものから、論理が非論理から、無関心な直観が情熱に満ちた意志から、利他的な生き方が利己主義から、真理が誤謬(ごびゅう)から生じ得るのだろうか」
19世紀の時点でも欧州を支配していたキリスト教的観点から見ると、われわれが持つ良きものは全て神の恩寵(おんちょう)かつ贈り物であって当然だった。反抗児ニーチェは、異なる見方をした。これは全て「昇華された行為に過ぎず」、「最も美しい色が、浅薄かつ取るに足らない材料から得られるという結論」に到達するのだ。
(中略)
否定を昇華させて肯定に至る道。これは韓国が経験してきた歴史的軌跡でもある。漢江の奇跡は、植民支配者だった日本に対する怨恨、北朝鮮と金日成に対する憤怒、また戦争が起きるかもしれないという恐怖といった否定的感情が肯定的に昇華した結果物なのだ。
韓国だけでなく、ほとんど全ての開発途上国は、先進国を追って「ファストフォロワー」の道を歩もうとした。だが、韓国のように成功した国はない。「日本にはじゃんけんでも負けられない」という気持ちで歯を食いしばり、食い付いていったからだ。かつらを作っていたのが戦闘機を作るようになった植民地上がりの国は韓国だけだ。北朝鮮の侵略に備えようと軽工業から重工業へ産業構造の改編を断行し、成功したからだ。反日と反共は、単純な善悪の構図で語るべきことではない。韓国が生まれて成長してきた精神の歴史そのものだ。
20世紀の反共主義は、時として罪なき人々に苦痛をもたらした。21世紀の今は、むしろ反日主義が悪用されている様子が目に留まる。国際秩序が揺らぎ、新たな冷戦の黒雲が押し寄せている今、韓国には他の選択肢がない。古い親日フレームは昇華ではなく退化へと至るだけだ。民主党と李在明代表は無責任な反日扇動をやめて、痛ましい過去の肯定的昇華のために力添えをすべきだ。
『SLAM DUNK』に戻ろう。ソン・テソプが持っている否定的感情は、悲しみだけではない。背が低いテソプは、劣等感といら立ちを感じていた。そんな心理的弱点をつかんだ相手チーム、山王は、テソプを集中マークする。「ゾーンプレス」で押していき、挫折させる戦略だ。どうやって克服すべきだろうか? 背が低いという短所ではなく、代わりに素早いという長所に集中することで、仲間たちにパスを出して味方がもっと点を取れるようにサポートするのだ。「抜け、ソン・テソプ!」 チームマネージャーのハンナ(彩子)の応援で力を得たテソプは、短所を長所に昇華させることに成功し、その活躍に力を得てプクサンは勝機を取り戻す。
一部では、『SLAM DUNK』のヒットをあざける。「ノー・ジャパン」と言っていてどうして日本のアニメーションに熱狂するのか、というわけだ。もちろん、一部の人々は恥じ入って当然だ。だが日本の漫画を見て育った私たち韓国人が、日本にドラマや音楽を輸出する国で生きていることもまた事実だ。韓国は既に否定を肯定に昇華させたのだ。後は、あしき扇動にふける退行的政治さえ克服すればよい。


「SLAM DUNK」からいきなりニーチェに飛びつき、短所を長所に変える発想と努力・技術で韓国は先進国になったのだから、古臭い反日主義も克服すればよい、という横っ飛びの論旨です。ニーチェとかトインビー、バートランド・ラッセルなど著名な学者の言葉を引用して一文を成すというのが韓国メディアの流儀です。己の知性や見識をひけらかそうとの狙いがあり、同時に自分の発言の裏付けとなる権威として利用する狙いがあるものと推測します
ただし、韓国産業の近代化には日本の支援があった事実をスルーし、あたかも韓国が自力で先進国になったとの書き方は、韓国人特有の欺瞞です。日本の支援を受けた事実を隠したい、認めたくないという気持ちの現われです。「韓国が独力で成し遂げた」という架空の事実にしがみついて手放そうとしないのですから、客観的な事実を受け入れる気はないと分かります
反日主義とは、彼らの理想であり憧れである日本への嫉妬にほかなりません。日本のようになりたかったけどうまくいかず、日本の手助けによってどうにか近づけたが、日本の手を借りた事実を認めるのはプライドが許さないのでどうのこうの、という複雑な感情です
哲学者といえども、韓国人特有の歪んだ現実認識に囚われているのが透けて見えますおそらく「SLAM DUNK」が日本の漫画だとは知らずに熱狂してしまった事実も、恥ずかしくてそうとは言えないのでしょう
日本人の中にはビートルズの曲に熱狂したり、マイケル・ジャクソンに惚れ込んだりするのを「恥ずかしくて言えない」という論理はありません。なので、彼ら韓国人の中にある「日本の文化が好きだとは言えない」論理が自分には理解不能です

劇場版「THE FIRST SLAM DUNK」預告

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