福井中学生4人 強姦未遂で家裁は試験観察に

福井県内の中学3年生男子4人が、知人である10代少女を強姦しようとして未遂に終わり、逮捕される事件が2月にありました
この中学生4人が福井家裁の少年審判で試験観察になったのですが、「犯罪者を野放しにするのか」との声が一部に出ているのだとか
一般家庭の親御さんは試験観察と耳にしてもよくわからないと思われますので、解説を交えて書きます


まず、試験観察の決定は最終的な処分ではありません。
試験観察は、ある程度の期間(一般的には3~4カ月程度)を定め、その期間中の少年の行動を家庭裁判所調査官が観察・評価するもので、その結果を考慮して最終的な処分が決められます。
試験観察は、少年を家庭に戻す「在宅試験観察」と民間ボランティアである他の個人・団体あるいは施設に預ける「補導委託」とに分けられます。また、補導委託は、自宅などから補導委託先に通う「在宅補導委託」と補導委託先で生活をする「身柄付補導委託」とがあります。
たとえば、家庭できちんとしたしつけや教育が受けられておらず、それが犯罪の原因のひとつであるような少年については身柄付補導委託が採用されることになるでしょう。
試験観察が用意された狙いは少年の更生を支援するためといえます。少年が再び犯罪を犯さないようにするためには、少年が犯罪を犯した背景・原因を理解したうえで犯罪に至る背景・原因を改善しあるいは除去する必要があります。
それは短期間では困難であり、ある程度の時間が必要となります。試験観察は、短期間で最終的な処分を決めるのではなく、時間をかけてどのような処分が好ましいかを決めるための制度といえます。
また、試験観察を通じて、少年が社会復帰後に犯罪や非行をすることなく健全に暮らすために役立つことを身につけることが期待されます。具体的には、たとえば補導委託では、補導委託先でその家族とのふれあいを通じた健全な人間関係を知ること、社会で必要とされる基本的な生活習慣(たとえば、早寝早起きのような規律ある生活習慣)や勤労習慣を習得すること、他者との交流を通じて人とのつきあい方を学習することなどです。
さらに、試験観察中の勤労を通じて、将来の社会復帰に必要な社会的な責任感や職業能力を身につけることも更生に役立つとされています。
(弁護士ドットコムの記事から引用)


試験観察は中間処分とされ、家庭裁判所調査官が一定期間少年の生活を観察した上で、およそ3ヶ月後を目処に最終的な処分を決めるものです(その際は家庭裁判所に呼び出し審判が行われます)
保護観察の場合は保護観察所の観察官がケースワークを担当し(実際に接するのは担当となった保護司ですが)、遵守事項を定めた上で半年から1年ほど社会での生活を見て観察を解除するかどうかを判断します
試験観察は家庭裁判所調査官がケースワークを担当するのですが、若い調査官は自分でケースワークを担当したいのか試験観察を家庭裁判所の裁判官に具申する場合が多いように感じました
なので、試験観察はあくまで中間処分であり、期間中に再犯に至ったり不良交友を繰り返したりすれば少年院送致の最終処分を言い渡される場合もあります
ちなみにこの中学生4人ですが、警察に逮捕されて取り調べを受けた後、福井少年鑑別所に収容されたはずであり、野放しにはなっていません。少年事件は報道の扱いが簡素すぎるため、事件処理の手続きを知らない人は「野放しにするのか」と言い出すわけです
中学生くらいで少年鑑別所に入れられると相当にビビります。彼らは漫画の世界で描かれた鑑別所とか少年院しか知らないので、「東京リベンジャーズ」のような場所だと思いこんでいるからです。とんでもない不良がいて、部屋の中では殴られたり蹴られたりすると
漫画の描き方にも問題があり、鑑別所の法務教官が腰に拳銃をぶら下げていたりと、随分な脚色がされているのも誤解を生む原因です
実際、男子中学生が「なめられたら困るので」と刃物を隠し持っていた例もありました(入所時に着替えさせるのでバレています)
窓に格子があり、扉は内側から開かず施錠されている居室に収容されると、大なり小なりショックを受けるのが常です。そして「自分はこのまま少年院へ送られるのか」と繰り返し尋ねてくる少年も少なくありません。これが実情です
本件については未遂事件だったため、試験観察で様子を見た上で最終的な処分を決めるとの方針が示されたのでしょう。既遂であれば4人とも少年院送致です
ちなみに福井県の高校入試(一般入試)は彼らが逮捕され取り調べを受けているうちに終わっています。推薦入試で合格が決まっているならともかく、そうでなければ私立の通信制にでも進むのでしょうか。逮捕されて勾留されている間に、「高校入試があるから行かせてくれ」と言ってもダメです

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