長野県議会議員が妻殺害 その特殊な精神状況
人を殺害していささかも良心の呵責を感じていない犯人を、「サイコパスだ」と指摘するのをしばしば目にします
これについては「サイコパス」と名指ししただけでは何かを言い当てたことにはならない、と自分は思っています。「サイコパスだから何?」と返されるだけで
この「サイコパス」としばしば混同されるのが「ゲミュートローゼ」と呼ばれる概念です。精神科医の片田珠美氏がそのブログでしばしば「ゲミュートローゼ」を持ち出すので知られた感があります
例えば、神戸市の小学校で後輩教師に悪質ないじめ(激辛カレーを顔に塗りたくり眼に擦り込む)をくりかえした女性教師がいたわけですが、片田珠美氏は彼女を「ゲミュートローゼ」の可能性が高いと指摘します。ドイツ語で「情性欠如者」の意味で、「冷淡かつ冷酷であり、他人に対して陰険で残忍なことを平気でする。しかも、罪悪感を覚えず、反省も後悔もしない人物」であり、「教育によって改善することが不可能」とされます
「情性」という表現は日常で使わないので違和感があるかもしれません。「共感性の欠如」とか、「情緒的な感応力の欠如」と言い換えられるでしょう
この他、片田氏は幾つかの事件の犯人を「ゲミュートローゼ」の可能性がある、と指摘しているのですが、ちょっと大安売りしすぎではないか、という気もします。殺人犯の半分は「ゲミュートローゼ」になってしまいそうで、そうなると逆に特徴がつかみにくくなるのでは?
先に当ブログで取り上げた長野県議会議員丸山大輔容疑者も、自分の妻を殺害し悲劇の夫を演じ続けており、良心の呵責などまったく感じていないかのようでした。あるいは不倫相手を殺害して遺体をバラバラにした土屋勇貴容疑者も、何食わぬ顔をして生活を続けていたのであり、反省とか葛藤があったのかと思うばかりです
妻殺害容疑の長野県議・丸山氏、罪悪感が欠如した「ゲミュートローゼ」の可能性
片田氏は「ゲミュートローゼ」と「サイコパス」の相違について、以下のように説明しています
「ゲミュートローゼ」とサイコパスはどう違うのかという質問を受けることがよくある。「ゲミュートローゼ」は、シュナイダーが「精神病質人格」として挙げた異常人格の10類型の1つであり、精神病質の俗称がサイコパスなので、サイコパスに含まれる。したがって、より広い意味ではサイコパスと呼んでさしつかえない。
シュナイダーは「精神病質人格」を「その人格の異常性に自ら悩むか、またはその異常性のために社会が悩む異常人格」と定義し、情性欠如型以外に意志欠如型、爆発型、無力型、自己顕示欲型などを挙げている。
自己顕示欲型は、「実際あるより以上によく見えるようにと望み」、「あらゆる種類の詐欺並びに欺瞞が問題となる」。
犯罪臨床の場合、容疑者・被告人がどのような人格の類型に該当するのかを考えます。が、類型に当てはめて解釈するのは本末転倒であり、事件前後の行動や言動から彼あるいは彼女ならではの特徴を掴み、解釈を推し進め、本人に投げかけ、反応を探り、仮説を組み上げます
つまり、精神病質人格だから◯◯だと結論付けるのではなく、◯◯だから精神病質人格なのだろうと導き出し、犯行に至る力動を読み解きます
▲▲型の人格だと断じたところで、そこから犯行に踏み切るまでは飛躍があります。犯行に踏み切るまでの心の動き、思考、感情の変化など「力動」と呼びます
丸山容疑者の場合、妻を殺害することに躊躇いも迷いもなく、むしろ妻を殺害された悲劇の夫を演じて周囲の同情を得て、それを政治的な支持に結びつけて己の社会的地位を固め、別の女性をものにしてウハウハ楽しもうという意図があったのでしょうか?
ともあれ、丸山容疑者は己の人格が異常だとか歪んでいるとの自覚は皆無で、「うまくやれている」と思っていたはずです。そして妻殺害も「うまくやれるはず」と信じて疑わなかったのでしょう。「精神病質人格」としては「根拠のない自信に溢れている」との特徴も付け加えておきたいところです
とりとめもなく書いてきましたが、「ゲミュートローゼ」という用語が定着するはずもなく、一般的に使われる可能性はないでしょう。ただ、何でもかんでも「サイコパス」と一括りにして扱うのは止めた方がよい、と思います
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