林真須美死刑囚の孫虐待死 「サインを見逃すな」

こどもの自殺や虐待、不登校、いじめ、校内暴力などなど、こどもを巡るさまざまな事象への対応として、「サインを見逃すな」との警句が発せられたのはもう30年以上前だと思います
こどもの仕草、表情、行動の微妙な変化を見逃さず、周囲の大人がこれを察知して早めに対応するべきとの提言です。しかし、サインというのは発する側と受け取る側の合意ないし了解があってこそ成立するものであり、大人の側にサインを受け取る気がなければ意味をなしません
和歌山カレー事件の林真須美死刑囚の孫、鶴崎心桜さんが両親から虐待を受け、16歳で誰からの助けも得られず死亡した事件で、和歌山県の検証委員会が報告書をまとめており、「サインを見逃すな」との警鐘を発しています。またか、というのが実感です


和歌山市の鶴崎心桜さん(当時16)が虐待を受けて死亡した2021年の事件で、県の検証委員会が29日、当時の学校や児童相談所の対応と問題点をまとめた報告書を発表した。虐待に気づくきっかけになりえた「サイン」が見過ごされつづけた背景が浮かびあがった。
心桜さんは中学卒業後の21年6月、搬送先の病院で死亡した。心桜さんの母親(当時37=死亡)とともに心桜さんに暴力をふるうなどして虐待し、衰弱後も医療措置を受けさせず死亡させたとして母親の再婚相手(42)が保護責任者遺棄致死の罪で有罪判決を受けた。判決は、心桜さんが中学1年だった18年の秋ごろから母親による暴力がはじまったと結論づけている。
検証委が挙げる「サイン」のひとつは、心桜さんの中学時代の不登校だ。
報告書によると、心桜さんは中学2年から欠席がちになり、3年生は出席が0日だった。教員が家庭訪問を試みたが母親に断られ実現しなかったこと、連絡をメールで済ませ、学校が心桜さんを目視できない状態に陥っていたことなどが明らかになった。
県教委がつくった不登校問題の「手引き」は、欠席がつづいた場合に家庭訪問をしたり教職員で会議したりすると定めている。今回は、担任だけで対応するなど徹底されていなかった。
和歌山市教委は取材に対し、「母親と連絡がとれていることで安心していた。一定の対応はしていたが、背景の家庭事情に踏みこんだ調査・対応につながらなかった」と説明している。
「サイン」の二つ目は児童相談所とのつながりだ。
心桜さんが中学1年のとき、当時同居していた実父が心桜さんの生活態度について相談するなど、児童相談所がかかわりを持ったことが2度あった。だが2度とも「状況が改善した」としてそのときどきでかかわりを終了させ、継続的な支援につなげられていなかった。
報告書は、心桜さんの「サイン」を受けとった友人の存在にも触れた。心桜さんは中学2年のとき、「母親にやられた」と言って自身のあざを中学校の友人に見せたことがあったという。ただこれも具体的な支援につながらなかった。
委員長をつとめた桑原義登・和歌山信愛大学教授は29日の会見で「学校や児童相談所で気になるリスクが出てきているのに、それぞれで処理されている。学校や市、児童相談所がもっと有機的に連携していってほしい」と話した。
(朝日新聞の記事から引用)


亡くなった鶴崎心桜さんを「和歌山カレー事件の林真須美死刑囚の孫」と形容するのは心苦しいところがあります。その血縁こそが彼女を苦しめ、追い詰めたと考えられるのですから。生まれてくるこどもは親を選べず、心桜さんが林真須美死刑囚の孫だったというのは逃れられない宿命と言わざるを得ません。死んでもなおそう形容するのは、死者に鞭打つ行為と同じです。ただ、そう形容しなければ心桜さんの置かれた絶望的な状況を表現できないと考え、敢えて書いています
さて、上記の記事をざっと読めば、先日取り上げた大阪府摂津市の3歳時に熱湯を浴びせて殺害した事件における児童相談所の無責任な対応に通じるものがある、と分かります
和歌山県の教育委員会はともかく、和歌山市の教育委員会や中学校の教師、それに児童相談所は心桜さんが林真須美死刑囚の孫だと承知していたのではないか、と勘ぐりたくなります。「あの林真須美の家系のこどもだから、関わらないでおこう」との意識があったのでは?
下手に関わってもトラブルになりそうだ、と敬遠する気持ちがあったからこそ放置したように思えてなりません。検証委員会がそこに突っ込んだのかどうか(突っ込んで質問を重ねても、当事者らが否定したならそれまでです)
東京のような都会であれば、登校しない中学生をそのまま放置するケースもありそうですが、和歌山市がそれほどの大都会ではありません。担任の教師やその他の教師が家庭訪問をしなかったのか(母親に家庭訪問を拒絶されたのを幸いに、さぼっていたのでは?)
電話やメールで済ませていたのも、「連絡を取っていた」という口実に使えるからでしょう
ともかくも、教育委員会にしろ中学校にしろ児童相談所にしろ、本気で心桜さんと関わろうという気がなかったのは明らかです。つまりは誰も心桜さんを助けようとはせず、見殺しにした…と
「関係機関との有機的な連携が必要」との提言も30年以上前から言われていたはずです

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