中国を席巻する日本の劇場版アニメ
令和の時代になっても相変わらず、「中国アニメがすごい」とか、「中国アニメは日本を超えた」などという報道が散見されます。そうした知見の根拠が「CG技術がすごい」などという、本来の作品評価とは関係のないズレた視点だったりするのですが
あるいは平成の時代にも、「中国や韓国のアニメが日本を追い越すだろう」予言したジャーナリストや評論家が少なくない数いたわけですが、彼らはどこへ行ったのでしょうか。なぜ自分の予言が外れたのか、説明してもらいたいところです
さて、先日は韓国で劇場版「ファースト・スラムダンク」が興行成績好調であると取り上げました。今度は中国で新海誠監督の「すずめの戸締まり」が公開され、好評を博しているようなので取り上げます
今月24日に公開された「すずめの戸締まり」は、29日午後2時の時点で興行収入が3億8200万元(約73億5000万円)に達し、「アントマン&ワスプ:クアントマニア」などを抑えて今年公開された外国映画のトップに躍り出た。日本アニメ映画の中国における歴代興行収入1位は新海監督の「君の名は。」の5億7600万元。「すずめの戸締まり」は1日当たりの興行収入で今も一部の中国映画を抑えてトップをキープしており、記事は「最終的な興行収入が新記録を樹立する可能性は高い」と評した。
そして、4月には「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」、「THE FIRST SLAM DUNK(スラムダンク)」といずれも中国で人気の高い作品が公開予定であることに言及し、「この2作品が新海作品と記録を競い合うことになる」と予想した。
記事は「すずめの戸締まり」のヒットの要因について、新海監督自身の訪中も含めたオン・オフラインでの宣伝が奏功したとの見方を示す一方、作品自体の質も高いと評価。美しい映像に加え、東日本大震災という重いテーマを扱いながらも、日本の伝統的文化を背景に織り込み、またアクションやコメディーの要素も兼ね備えているとした。
このほか、新海監督は過去にどっぷりとつかることなく、若者のトレンドにアンテナを立て、時代の変化や観客からのフィードバックにも目を光らせているとも指摘。主人公の男女の恋愛的な感情があまりに唐突で論理性に欠けるという指摘はあるものの、逆に補助的な視点で描かれた家族の情や友情、見知らぬ人の善意などがより心を打つとした。
日本のアニメ映画の潜在力
記事は、新海監督について「中国の映画ファンの中では宮崎駿氏に次ぐ影響力を持っていると言われ、青春、恋愛、自然などが代表的なテーマとなっている」と説明。「初期の『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』などの作品を通して独自のスタイルを創り出し、清らかで美しい画風によって多くの中国映画ファンをとりこにした。初期の作品に影響を受けた観客は今では映画消費層の中堅へと成長し、中国市場への本格進出に向けしっかりとしたファンの基盤を築いている」と述べた。
また、2016年以降の「君の名は。」と「天気の子」はいずれも中国でヒットしており、監督自身のPR力に加えて映画の質と評価も安定しているとし、「近年の中国恋愛映画の同質化、ストーリーのパターン化の中、彼のアニメ映画は若い男女間の絆を描くことに長けている」と評した。
さらに、日本ではアニメ作品が映画市場の柱であり続けているが、中国市場でもその好調さは顕著だとし、「『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』と『ONE PIECE FILM RED』はそれぞれ2億元(約38億円)と1億8500万元(約35億5000万円)の興行収入を記録し、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』などを抑えて2022年の海外映画興収ランキングでトップ10入りを果たした」と紹介した。
また、「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」、「THE FIRST SLAM DUNK」のほか、6月には「天空の城ラピュタ」が公開されることに触れ、「宮崎監督の『千と千尋の神隠し』(中国では2019年公開)と『となりのトトロ』(同じく2018年公開)は古い作品にもかかわらず、それぞれ4億8800万元(約95億円)と1億7300万元(約33億円)の興行収入を記録し、改めて人気を示した」としたほか、湯浅政明の「犬王」も年内に中国で上映される可能性があると説明した。
(レコードチャイナの記事から引用)
新海誠作品について、随分と熱のこもった記事を書いています。なので、付け加える点はありません
「名探偵コナン ベイカー街の亡霊」が今になって中国で公開されるというのには驚きました。2002年に日本で公開され、劇場版「名探偵コナン」シリーズでは最後のセルアニメであり、以降はコンピューターによる作画になっています。監督もこだま兼嗣で、「コナン」作品ではおなじみであり手堅い演出を見せてくれます。日本では興行収入が34億円でした
1888年のロンドンを舞台にコナンがシャーロック・ホームズと共闘する、などという突飛な発想を巧みな構成と演出で描いた秀作です。テレビシリーズとは一味違った出来栄えながら、これはこれで十分に楽しめる内容です
こうして過去の作品も中国で劇場公開されるというのは、それだけ重要が見込めるからでしょう
ただ、中国はいまだに外国映画の上映本数を制限しており(中国の映画産業を保護するという名目ですが、明らかに政治的な狙いでしょう)、日本の劇場版アニメが人気だとしても次々と上映する許可は出ません
また、日本との政治的な関係が悪化すればたちまち「日本アニメは害悪だ」と、中国共産党がくだらないキャンペーンを開始し、日本文化排除へと舵を切るわけです
まあ、そんな中国共産党が文化政策を主導している限り、中国で素晴らしいアニメーション作品は生まれないのであり、いつまでたっても日本のアニメーションには追いつけません
平成の時代に「中国アニメが日本を追い越す」と予言していたジャーナリストや評論家は、中国共産党がどれだけ愚か者の集団であるか、理解できなかったのでしょう。今の時代でもなお、「少年少女の恋愛を描くのは不道徳だ」などと主張しているのですから、これではボーイ・ミーツ・ガールもなくときめきもない退屈な作品しか作れません
劇場版 名探偵コナン ベイカー街の亡霊 予告
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