大阪交番襲撃 控訴審で心神喪失認め無罪判決
1審大阪地裁での懲役12年(求刑は懲役13年)判決を不服として控訴していた飯森裕次郎被告について、大阪高裁は統合失調症に心神喪失を認め刑事責任を問えないとして無罪を言い渡しています
飯森被告が抱えていたさまざまな妄想については前回、当ブログで書いたところです
今回の控訴審判決では、これらに加え「日米の俳優を殺す」ために拳銃強奪を計画した、との話が明らかにされています
大阪府吹田市の交番で2019年、勤務中の警察官が包丁で刺され拳銃が奪われた事件で、強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告(36)の控訴審判決が20日、大阪高裁であった。
斎藤正人裁判長は「重い統合失調症による心神喪失の状態だった」と認定し、懲役12年とした一審大阪地裁の裁判員裁判判決を破棄し、無罪を言い渡した。
斎藤裁判長は、統合失調症の強い影響を指摘する精神科医の鑑定意見の信用性を否定した一審の判断手法には誤りがあったと指摘。さらに、大阪府北部の山中まで日米の有名俳優を殺害しにいくというのが犯行の動機や目的で、統合失調症の影響で形成されたものと認めた。
その上で、一審で有罪の根拠とした犯行時や前後の計画的な行動についても、「動機や目的に支配され、あらがえなかったことを示している」とし、正常な精神機能は残しているものの、犯行を思いとどまることは不可能だったと結論付けた。
男性被告は19年6月、吹田市の交番で警察官の左胸を包丁で刺し、実弾5発が入った拳銃を奪ったとして起訴された。
大阪高検の小弓場文彦次席検事の話 判決内容を精査した上で適切に対応する。
(時事通信の記事から引用)
1審の判決では、「統合失調症の影響はあったものの犯行は極めて計画的であり周到なもので、限定的ながら刑事責任能力はあった」と認めて懲役12年としています
控訴審を前に再度の精神鑑定が行われ、刑事責任能力を問える状態ではなかったとの鑑定結果が出たのでしょう
ただ、精神鑑定の結果が絶対というわけではなく、あくまで裁判官の判断の目安であり、鑑定結果をどこまで判断に取り入れるかは裁判官次第です。裁判官が精神科医と同等の医学知識を持っているはずはなく、被告をつぶさに診断したわけでもありません。2度目の精神鑑定に裁判官を納得させるだけの報告が盛り込まれており、説得力があったと解釈するしかありません
この無罪判決という結果に、大阪府警も大阪高検も苦い顔をしているはずで、最高裁に上告するのでは?
最高裁は飯森被告の精神状態について審議をやり直すよう求め、差し戻しの決定をするのではないかと予想します。結果として裁判が続くわけであり、長引きます
統合失調症などの影響があったとして、どの程度の刑事責任能力が残されていると判断するかは裁判官によります。昔は統合失調症の名がついているだけで「責任能力なし」とする雑な判決もありました。最近の傾向としては、統合失調症ではあっても刑事責任能力を限定的に認め有罪とする判断が増えたように思います。本件の1審判決のように
これは殺人や殺人未遂のケースでは、犯人を厳しく罰するべきとする世論が後押ししている影響でしょう。この事件のあった当時、交番を襲って警察官から拳銃を奪おうとする事件が相次いだわけで、許されない犯行だと感じた方は多かったはずです
追記:大阪高検は上告を断念しており、2審の無罪判決が確定しました
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