戸田市中学校襲撃 過去の事件と共通点?

埼玉県戸田市の中学校に刃物を持った高校生が侵入し、教員を切りつけた事件について3度目の言及になります
以前から気になっていたのですが、このような少年事件が起きるとメディアは「神戸連続児童殺傷事件に似ている」とか、「第2の酒鬼薔薇聖斗だ」とか報道します。何をどう報じるかはメディアの勝手ですが、心理臨床や非行臨床をやっている者の中で、「あの事件とこの事件は似ている」とか、「同じ事件だ」などと断定する人はまずいないでしょう


3月1日、埼玉県の中学校で教員が切りつけられた殺人未遂事件では、17歳の男子高校生が逮捕されました。「誰でもいいから人を殺したいと思った」と供述している今回の事件は、過去に起きた少年事件とも共通点がありました。
(中略)
調べに対して容疑を認め、「無差別殺人への憧れがあった」という趣旨の話もしている男子高校生。
事件の前、現場近くでは不審な事件が起きていました。
さいたま市では2月中旬以降、小学校や公園などで切断されたネコの死骸の一部などが相次いで見つかっていました。男子高校生は猫を殺したことについて、自分がやったという趣旨の供述をしているということです。
「動物への虐待」から「殺人」へとエスカレートしたのでしょうか。犯罪心理学の専門家は、過去の少年事件との類似点を指摘します。
関西国際大学の中山誠教授:「ネコですね、ネコの動物虐待。『酒鬼薔薇』の場合も全く同じような動物虐待をいくつか繰り返しています」
中山教授は、動物虐待から殺人への移行は、少年事件では共通してみられる特徴の1つだといいます。
中山教授:「(人の死に)異常に関心を持つ。人が死んでいく過程を見たい、自分で殺してみたいというところにつながってきて。一般の人にはとても考えられないような動機なんですね」
(中略)
事件を未然に防ぐために、私たちには何ができるのでしょうか。
中山教授:「予兆というか、ちょっとおかしいなと思った時に気付いていれば、そこでとめられたと思うんです。早く気付いて、専門医に見てもらうことが一番大事だと思います。多いのは共感性が低いということですかね、他人の気持ちになって考えられないとか。でもそういう子はたくさんいるので、どこから異常でどこから正常か、線を引くのは非常に難しいと思います。やっぱり上手に話を聞いてあげるということです。『そんなことしてはダメ』『あんなことしちゃダメ』『これもダメ、あれもダメ』『そんなことをしているからお前はダメなんだ』みたいなことを言うと、もう子供は話をしなくなりますから。何でもとりあえず受け入れて、ひとまず聞き入れて、それでちょっと考えさせる。あまりその子のやったことを否定しない。いったんは受け入れるということも大事だと思います」
(東海テレビの記事から引用)


容疑者はどのような人物なのだろうか。小学校時代を知る学校関係者はこう話す。
「X君(容疑者の男子高校生)のご両親はともにしっかりした方で、1人いるお姉さんもエリート校に進学しています。姉弟の関係も悪くなく、お母さんは学校の行事にもよく参加していて、とてもいい印象でした。お母さん仲間の間では、今回の事件を受けて気の毒に思う声が多いのが事実です。
小学校時代はやんちゃな性格で、先生は生活指導に手を焼いていたところもあったようです。でも、X君がメンタル的に問題があったという印象はありません。成績も良かった」
習い事もしており、趣味もあったようだ。
「空手を習っていましたが、すぐにキレたりするような印象はないし、暴力をふるっていた記憶もない。アニメが好きで、とくにポケモンが大好きでしたね。よくポケモンのキャラクターの絵を描いていました。中学に入って不登校になってしまったようですが、その理由はわかりません」(同前)
学校を狙った理由について、「人が多くいるため」などと説明しているという男子高校生。真相究明が待たれる。
(NEWSポストセブンび記事から引用)


東京大学の試験会場前で受験生を刃物で刺した東海高校の元生徒は猫を殺していなかったのでは?
あるいは事件の現場となった戸田市立美笹中学校の女子生徒が昨年、渋谷の路上で母娘連れを刺した事件でも彼女は猫殺しをしていたとの報道は目にしていません
単に猫殺しをしていた少年事件をいくつか並べ、「共通点がある」と決めつけるのは止めたほうがよいでしょう
共通点を並べるのではなく、むしろ相違点を探し、この事件ならではこの少年ならではの特徴を見つけ出した方が犯行の背景や少年の力動を把握するのに役立つのでは?
猫殺しという外見をもって「神戸連続児童殺傷事件と同じだ」などと決めつけたのでは、酒鬼薔薇聖斗が「勝手に同一視するな」と怒るかもしれません
確かに思春期のサディズムの発露して小動物を殺害する行為はままあるわけですが、それが殺人行為とどのように結びつくかは人それぞれであり、その特徴が非行の力動を解明する鍵になります。人を殺す経験=神に生贄を捧げるイニシエーションを経てこそ、自分は何者かになれるといった複雑な物語を想起する少年もいれば、自分の性の葛藤を解消するため「誰かを殺さなければならない」と強迫的な思いに駆られる少年もいます。根底となる部分では確かに共通するものはあるにせよ、それがどのような行動となって発現するかに着目しなければなりません
「同じ事件だから同じ結論になる」などと考える臨床家はいないはずです
メディアの記者たちはそれが理解できないようです

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