名古屋夫婦強盗殺人 やり直し裁判で死刑判決

1審では殺人と窃盗罪が成立するとして無期懲役判決を受けた山田(旧姓松井)広志被告について、控訴審である名古屋高裁は強盗罪にあたると1審判決を批判し差し戻しを決定しました。そのやり直し裁判の判決公判があり、検察の求刑通り死刑判決が言い渡されています
山田被告は判決を不服として控訴したと報じられています


6年前、名古屋市南区で夫婦2人を殺害し現金を奪った罪に問われ、一度は「無期懲役」の判決を受けた後に審理を差し戻された男に、名古屋地裁の森島聡裁判長は、死刑判決を言い渡しました。
被告の男は、2日付で控訴しました。
<名古屋地裁 差し戻し判決のポイント>
・「2人を殺害した直後に室内を物色していて、当初から強盗目的があったと推認される」
・弁護側は「軽度の知的障害が事件全体に影響している」と主張していたが、裁判長は「被告にはタクシー運転手などの職歴があり、完全責任能力がある」と指摘。
・「死刑を回避すべき事情がない」
山田被告はこの間、まっすぐ裁判長を見つめ続け、裁判長の「わかりましたね?」との問いに、うなずきながら「はい」と短く答える。
男はステージ4末期のすい臓がんで、医師からは手術や放射線治療はできず、余命は「1年」とも告げられたといいますが、遺族は「この裁判と山田被告の病気(すい臓がん)とは全く関係ない。死刑宣告してもらいたいと思います」と裁判で意見陳述していました。
起訴状などによりますと、名古屋市南区の山田広志被告(48)は2017年3月、南区の住宅で大島克夫さんと妻のたみ子さんの首などを刃物で刺して殺害し、現金少なくとも1200円が入った財布を奪った強盗殺人の罪に問われています。
一審は「殺人」と「窃盗」にあたるとして「無期懲役」を言い渡しましたが、控訴審で名古屋高裁は強盗目的が認められることを前提に審理を差し戻していました。
ことし1月に始まった差し戻し審で、検察側は改めて「強盗目的があった」として死刑を求刑。
弁護側は「強盗目的はなかった」と、無期懲役の判決を求めていました。
2日に名古屋地裁で行われた差し戻し審の判決で、森島聡裁判長は主文を後回しにした上で、「強盗殺人が成立する」と判断し、死刑判決を言い渡しました。
2日に名古屋地裁で行われた差し戻し審の判決で、森島聡裁判長は「2人を殺害した直後に室内を物色していて、当初から強盗目的があったと推認される」と指摘。
弁護側は「軽度の知的障害が事件全体に影響している」と主張していましたが、森島裁判長は「タクシー運転手などの職歴があり、完全責任能力がある」として、求刑通り、山田被告に死刑判決を言い渡しました。
山田被告は、2日付で「控訴」しました。
(CBCの記事から引用)


山田被告の知的障害がどの程度なのか、報道されていないため不明です。タクシー運転手をしていたと記事にありますので、読み書きは可能で足し算や引き算は理解できたのでしょう。加えて、強盗や殺人が重罪であると分かっていたものと推測されます。なので弁護側の主張するような、罪一等を減じなければならないほどの知的障害があったとは思えません。おそらく知的障害云々は山田被告が主張したのではなく、弁護人が減刑の口実となるよう持ち出したものと推測されます
さて、前回取り上げたところの被害者である大島たみこさんが、パチンコ帰りの山田被告に「昼間から遊んでいい御身分ね」と侮辱する発言をしたとする供述ですが、大島さんがアパート住人である山田被告の私生活に熟知していたとは考え難いのであり、むしろ山田被告自身がそれを負い目として意識していたため、大島さんの何らかの発言を侮辱と受け止めたのでは?
自分が誰かから揶揄されたり、侮辱されたり、蔑まれているとの負い目が、大島さんの発言をきっかけに怒りとして沸騰し、「殺してやる」との衝動に結びついたのかもしれません。ただ、この時点で金を奪おうとの考えが芽生えていたのかどうかは不明です
本気で金を奪う目的で強盗を企図したのであれば、家の中を引っ掻き回してでも金を探したでしょう。しかし、山田被告は1200円入りの財布を盗んだだけです
気が動転して金品を探す余裕がなかったのか、物音で近隣住民に気づかれてしまったと焦ったのか、山田被告がどのように供述したかは報じられていないので不明です。また、当時の自分の心境など言語化し、整然と表現するだけの能力が山田被告にあったかどうか?
ただ、前回も述べたように盗んだ金がわずかであれ2人を殺害しているのですから、強盗殺人で死刑判決を下すのが当然と思います
追記:山田広志被告は2023年12月、病死しています。来年1月に控訴審判決が言い渡される予定でしたが、被告人死亡による裁判は終結します

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