「ナウシカはなぜ人工知能を拒絶したか」 文春オンライン
文春オンラインに掲載された「危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』」(徳間書店刊)を紹介する記事について書きます
この本は朝日新聞記者太田啓之が18人の論者に「風の谷のナウシカ」を語ってもらう企画をまとめた1冊であり、「コロナウィルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動…、混迷する現代社会を私たちはどう生きるのか。『これはナウシカの世界を旅する中で、すでに体験したことだ」という宣伝文句がついています
論者の名前を挙げると、赤坂憲雄、杏、稲葉振一郎、大木毅、大澤真幸、大童澄瞳、叶精二、川上弘美といった顔ぶれが並んでいます
記事そのものは本の紹介のため、中身の一部を披露しているだけであり、詳細はこの本を手に取って確かめるしかありません
こうした企画を成立させるため、無理やり上記のような「コロナウィルスやウクライナ侵攻といった危難に遭遇した我々はどうすえばよいのか?」との大前提を持ち出した感がありありです
記事の中で大田啓之自身、以下のように述べており、「ナウシカの行動の意味」をどう解釈すればよいのかという戸惑いと疑問がそもそもの出発点であり、コロナウィルスやウクライナ侵攻というのは本を売るために捻り出した営業トークだと分かります
「そなたが光なら光など要らぬ」なぜナウシカは“生ける人工知能”を否定したのか
https://bunshun.jp/articles/-/60734
「人類はわたしなしには滅びる」
ナウシカは、腐海や王蟲らを手段とする地球再生計画の中枢「シュワの墓所」へと赴く。生ける人工知能のような存在であるシュワの墓所の主は、ナウシカに対してこう告げる。「清浄な世界が回復した時、汚染に適応した人間を元にもどす技術もここには記されてある」「わたしは暗黒の中の唯一残された光だ」「人類はわたしなしには滅びる」と。しかし、ナウシカは墓所の主に対して「否(いな)!!」「そなたが光なら光など要らぬ」と叫び、自らを母と慕う巨神兵の力を使って、墓所を完全に破壊してしまうのだ。
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/502089229.html
長谷正人の論文「宮崎駿試論」を読む
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/501916136.html
「危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』」
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/498868700.html
「風の谷のナウシカ」 リーダーシップ論の在り方
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/495330419.html
「風の谷のナウシカ」 アニメーションを読む方法
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202101article_15.html
「ナウシカ解読」における4つの問いを考える
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202011article_44.html
「風の谷のナウシカ」 深淵と虚無を超えて
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202011article_25.html
「宮崎駿にキメハラ」という記事
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202011article_21.html
「風の谷のナウシカ」 王道と倫理
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202010article_33.html
赤坂憲男「ナウシカ考」を読む その2
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202010article_15.html
赤坂憲男「ナウシカ考」を読む その1
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202009article_17.html
「風の谷のナウシカ」と自然・環境問題 その2
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202009article_13.html
「風の谷のナウシカ」と自然・環境問題 その1
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202009article_11.html
「風の谷のナウシカ」 その世界観を問う
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202009article_7.html
「風の谷のナウシカ」 死と再生を考える
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202009article_4.html
ナウシカの正義とサンデル教授「白熱教室」
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202008article_23.html
「風の谷のナウシカ」に見る宮崎駿の矛盾
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202008article_13.html
「風の谷のナウシカ」は愚行と矜持を描いた叙事詩か
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202008article_11.html
ナウシカとマルクス主義
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202008article_6.html
「ナウシカとニヒリズム」を考える
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202008article_3.html
ナウシカに学ぶ女性リーダーシップ論
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202007article_27.html
「ナウシカ研究序説」を読む
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202007article_17.html
ナウシカの辿り着いた場所 漫画版エンディング
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202007article_11.html
「風の谷のナウシカ」の神話学を考える
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202007article_2.html
構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その1
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202006article_32.html
構造主義の立場で「風に谷のナウシカ」を語る その2
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202007article_1.html
上記以外の宮崎駿に関する記事は、本文右のラベルリストから「宮崎駿」を選択すると表示されます
論者の名前を挙げると、赤坂憲雄、杏、稲葉振一郎、大木毅、大澤真幸、大童澄瞳、叶精二、川上弘美といった顔ぶれが並んでいます
記事そのものは本の紹介のため、中身の一部を披露しているだけであり、詳細はこの本を手に取って確かめるしかありません
こうした企画を成立させるため、無理やり上記のような「コロナウィルスやウクライナ侵攻といった危難に遭遇した我々はどうすえばよいのか?」との大前提を持ち出した感がありありです
記事の中で大田啓之自身、以下のように述べており、「ナウシカの行動の意味」をどう解釈すればよいのかという戸惑いと疑問がそもそもの出発点であり、コロナウィルスやウクライナ侵攻というのは本を売るために捻り出した営業トークだと分かります
「そなたが光なら光など要らぬ」なぜナウシカは“生ける人工知能”を否定したのか
https://bunshun.jp/articles/-/60734
「人類はわたしなしには滅びる」
ナウシカは、腐海や王蟲らを手段とする地球再生計画の中枢「シュワの墓所」へと赴く。生ける人工知能のような存在であるシュワの墓所の主は、ナウシカに対してこう告げる。「清浄な世界が回復した時、汚染に適応した人間を元にもどす技術もここには記されてある」「わたしは暗黒の中の唯一残された光だ」「人類はわたしなしには滅びる」と。しかし、ナウシカは墓所の主に対して「否(いな)!!」「そなたが光なら光など要らぬ」と叫び、自らを母と慕う巨神兵の力を使って、墓所を完全に破壊してしまうのだ。
物語はその直後、ナウシカの「生きねば……」という独白と共に終幕を迎える。その後も腐海による地球環境の浄化は進むだろうが、まさにそれによって、現生人類は遠くない将来に絶滅するとしか思えない――。そんな終わり方だった。理性的に考えれば、ナウシカの決断は、本書の論者の一人・生物学者の長沼毅さんが指摘するように「時間をかけた人類の自決」に他ならず、とうてい認められるものではない。しかし、ナウシカの長く苦しい旅を共にし続けてきた読み手の私たちは、ナウシカの一見理不尽な決断に対して、心のどこかで深くうなずいてしまっている自分自身を発見することになるのだ。
なぜナウシカは「シュワの墓所」を破壊したのかなぜ、ナウシカは人類の滅亡も辞さず、「シュワの墓所」を破壊してしまったのか。そこには納得できる理由はあるのか。宮﨑さんはなぜ、物語をこんな形で終わらせたのか――。今になって振り返ると、僕がこの企画を立ち上げた最大の理由は、各界の最前線で活躍する方々の力を借りて、この物語が投げかけてくる「巨大な謎」に対して、何らかの答えを導き出したかったからだと思える。大半の論者の方々にとっても「シュワの墓所でのナウシカの決断」は深く考え込まざるをえないテーマだったのだろう。インタビュアーである僕が水を向けるまでもなく、自らの考えを熱く語り始めてくれた。
「ナウシカ」を巡る謎は単なる物語内での齟齬というレベルにとどまらず、私たちが現代を生きる上で直面する本質的な課題と、深いところでつながっている。それゆえに私たちは、何度でもこの物語に立ち戻らざるを得ないのではないか――。ナウシカを愛する方々との対話を通じて、僕はそのことを強く実感させられた。ナウシカの物語の背景は「火の七日間」と呼ばれる核戦争があり、人類は絶滅を免れるため人工知能を作成し「シュワの墓所」にこれを設置しましたところから始まります。「シュワの墓所」は各時代の権力者を誘い込んではその支配強化に力を貸し、やがて腐海が世界を飲み込んだ後に始まる清浄化の際には人類の遺伝子を組み換え、新たな環境に適した人類を生み出すようプログラムされています
そのため、ナウシカら汚染された環境に生きる人類は清浄化された環境に適応できず滅びるしかないわけです
こうした「人類存続のための高貴な目的」に翻弄されることに嫌悪感を抱いたナウシカが、「シュワの墓所」の思惑を拒絶し、破壊を決断したのは漫画を読んでいれば自然と理解できます。が、漫画を閉じて考えてみると、ナウシカの決断と行動は人類の未来を閉ざす暴挙であると気がつくわけです
もちろんナウシカも自身の行動が暴挙であると理解しており、大罪を背負ったものと自覚しています。そして、滅亡しかあり得ないと分かっていながらも、絶望の淵に立つ人々を導くため、「嘘をつき続ける」覚悟をしたところで物語は終わります
ですから、「コロナウィルス感染後の社会をどう生き抜くか?」などという問いに直接応えるものではないと、大田啓之は理解しているわけですが、ともあれ本を売るために上述のような惹句を用いたのでしょう
まだ本書を読んでいませんので、これから発注して読むつもりです
漫画版「風の谷のナウシカ」はいろいろと考えさせられるテクストであり、繰り返し読むに値する作品です。こうした作品を生み出した宮崎駿のクリエイターとしての力に恐れ入るばかりです(ただ、恐れ入っているばかりではいけないので、下段にあるようにあれこれ論評を書いています)
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