裏口入学事件 元文部官僚は冤罪と断定する記事

文部科学省科学技術・学術政策局長だった佐野太被告は受託収賄罪で起訴され、東京地方裁判所で執行猶予の付いた懲役2年6か月の有罪判決を受けています。現在は判決を不服として控訴しており、まだ判決が確定していない段階です
佐野被告は東京医科大に次男を入学させる見返りとして、文部科学省の事業への東京医科大参加を認めるという裏取引をしたというのが事件のあらましです
講談社から「東京医大不正入試事件~父と息子の闘い」と題した本が出版され、佐野被告側の言い分(東京地検によって強引に犯罪者に仕立てられた)が明らかにされています
この著作のあらましに沿って、講談社系メディアの現代ビジネスに記事が連載され、佐野被告は冤罪であったとの主張が展開されています
数回にわたって連載されている長い記事なので、その一部だけ引用します


「裏口入学」の汚名を着せられながら医大に通い続ける日々…東京医大「不正入試」事件、キャリア官僚の息子の“その後”
縁故や寄付金の額に応じて不合格でも合格に
東京医大は同窓生の医師など縁故者の子息を一般試験で優遇するため、遅くとも02年頃には、縁故者からの依頼があれば、理事長や学長の判断で1次試験または2次試験の小論文の得点に適宜加点して、正規ないし補欠で合格させる措置を講じるようになった。
その際は依頼した縁故者と受験生との関係や、合格後に受験生の父兄から納付が見込まれる寄付金の金額などの条件が考慮され、該当する受験生の得点が1次試験の通過基準に達しなくても合格させることさえあった。
こうした不正な仕組みの権限を一手に握っていたのが、名実ともに東京医大の最高権力者である理事長の臼井正彦被告だった。公的給付金の獲得額の増加や大学病院の収支改善など、学長時代(08年10月~14年6月)に数々の功績を残した同被告は、その当時から単独で1次試験終了後に結果資料を確認し、縁故者から優遇措置を依頼された受験生に一定の点数を加算していた。
入試システムにアクセスして点数を改竄
学長を退任して入試手続きに関与する立場でなくなってからも、臼井被告は依頼を受けた縁故者の意向に沿えるよう配慮。後継学長の鈴木(衞)被告に持ち掛けて、15年度入試からプレビュー(注:加点対象者やその加点幅を決めるため、試験翌日に臼井、鈴木両被告、それに教育部医学科学務課長が秘密裏に集まって開く会議)を主宰し、引き続き縁故者絡みの受験生への加点を続けた。鈴木被告は公判で次のように話した。
「受験生への加点を2人で議論、検討することはほとんどありません。私が検討対象とする受験生も含め、加点するか否か、何点加算するかを判断・決定するのは臼井さん。私は意見を述べることはあっても、臼井さんの決定に異論を差し挟むことはありませんでした。臼井さんの決定内容は、プレビューに同席した学務課長が大学に持ち帰り、その後に担当職員がコンピューターの入試システムにアクセスして点数データを改竄していました」
さらにこうしたプレビューとは別に、臼井被告は鈴木被告に伝えることなく自身の縁故受験生の受験番号を学務課職員に伝え、職員も学務課長に伝えることなく、臼井被告の意向に合わせてこの受験生に加点するケースもあった。鈴木被告はこの事実を全く知らされていなかったという。
(以下、略)


記事そのものは上記のように佐野被告は冤罪だという、佐野被告側だけの主張が貫かれていますので、読者は東京地検特捜部が冤罪を仕立てたと判断するかもしれません
が、記事にもあるように東京医科大学では長年にわたって得点操作を行い、不正に合格者を出していた事実があります。文部官僚である佐野被告であれば、大学の不正入試を知った以上当然これを省内に報告し、不正を糺す側に立つのが職務です。ところが不正入試を利用して息子を合格させるよう働きかけており(佐野被告は否認していますが)、とても冤罪だったとは認められない行動です
さらに利害関係のある東京医科大学関係者と幾度も会食を重ねており、これも文部科学省局長として批判されるべき行動でしょう
要するに状況としては黒、なのです
ただ、息子の入試成績がたまたま合格ラインを超えていたため、裁判では不正はなかったと主張しているのであり、合格ラインに達していなければ加点されたのでしょう。そもそも学力試験の結果を左右するほど面接評価のウェイトが大きいとか、無茶苦茶です。これは受験生泣かせ以外のなにものでもありません。模擬試験の結果などまったく通用しない、闇鍋状態です
次男は第一志望だった東京慈恵会医科大学は点数が足りなくて不合格になっていますので、私立医科大に合格できるかどうかギリギリの学力だったのだろうと推測されます
総合的に考えれば、大学合格を取引材料にした請託と収賄があったと判断されるのであり、冤罪だったという記事の趣旨は大いに疑問です
佐野被告が東京医科大幹部と会食などせず、働きかけをきっぱり断っていたならこんな事件にならなかったわけで

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