東大試験会場で刺傷事件 少年は東海高校自主退学

受験シーズが到来しています。昨年の1月15日、共通テストの試験会場となっていた東京大学のキャンパス前で東海高校の男子生徒が刃物を使って受験生らを刺傷する事件がありました
あれから1年になるのですが、逮捕・起訴された少年の公判はまだ始まっていません。始まらない理由が何かあるのか、よく分かりません。少年は犯行を否認しているわけでもなく、精神障害もなく、使用した凶器が発見されないとか訴訟上の支障はないはずです。公判前の争点整理で揉める要素は皆無ですから、速やかに公判が開かれてもよさそうなものですが
集英社オンラインが被告少年の父親を直撃取材し、その発言を記事にしていますので取り上げます


「偏差値70台だ!」「来年は東大を受験するんだ!」…名門高生徒による共通テスト東大前刺傷事件から1年。少年はその後高校を自主退学。父親が語る面会時の様子とは
(前略)
少年は高校を自主退学。父が少年と最後に会ったのは?
――息子さんの面会には行かれていますか。
「それもなかなか行けてなくて、弁護士さんにお任せしてますので、あまり知らないところもありますが、なんとか反省して過ごしてるようです」
――ご近所のみなさんがご心配されていました。
「みなさん挨拶してくださり普通に接してくれて感謝しかないです。事件があってたくさんの人が来たのでだいぶご迷惑をおかけしてしまったのに……。本当になんであんなことになったんだろうと思います。命はかけがえのないものだと言い聞かせてきたのに足りなかったのかなとか思うところはあります」
――事件前日の息子さんの様子はどうでしたか。
「それがわからなくて……前日からいなくなってたもんですから家族で血眼になって探してたんですよ。いなくなる前も普通だったもんですから、本当何も変わらずで」
――18歳になった息子さんと成人の日に会えないのは辛いですか?
「そうですけど、やっぱりまずは被害者の方に早く回復していただきたいなって気持ちです、息子はその次ですね」
――ご家族の生活の状況や影響はどうですか?
「加害者側がこれを言ってはいけないと思いますが、全然元になんかは戻れてないです。まわりの目が気になったり、弟や妹が学校に行けない日もあったりとか。まだ小さいので、わかっていない部分もあって」
――お子さん達がお兄さんの状況をちゃんと理解してないんですか?
「面会には数回一緒に行ったりもしたんで多少は理解してると思いますけど」
――息子さんの様子はどうでしたか?
「元気ではなかったです。被害者の方に申し訳ない気持ちだと言ってました」
(以下、略)


記事の前段部分は引用していないのですが、記者はあくまで受験競争の弊害とか受験生の挫折という視点でのみ、この事件を語ろうとしているのがありありです
「そうじゃないだろう」と言いたくなるのですが、自分個人の見解は過去の記事で述べてきたので、再度書くのは止めておきます
一般の方は「自分のこどもが少年鑑別所や拘置所に収容されたら面会に行って何を話すべきなのか」などと、考えたりはしないのが当たり前です
自分はこうした施設に勤務し、面会にも数多く立会ってきました。怒りをぶつける親もいれば、何も語らないまま親子ともども涙涙という面会もありました。基本として拘置所や刑務所の面会では立会する刑務官が面会の内容に口を挟んだりはしません。犯罪をそそのかしたり、不穏当な会話があれば阻止しますが
少年院や少年鑑別所では立会する法務教官が発言を促したり、適度に介入する場合があります。
親として面会したらああも言ってやろう、こうも言ってやろうと思っていても、実際に顔を見れば言葉が出てこなくなるのが通常の反応です。ただ、それでは面会になりませんので、親なり少年なりに投げかけ発言を促し、会話が成立するよう図ります
面会の時間は限られているため、十分な会話ができません。なので、手紙のやり取りをするよう促します。手紙は手許に置いて何度も読み返せますので、親子間の意思伝達の手段として有効です
なので、上記の記事にもあるように父親が面会のため拘置所へ頻繁に出向くようなことをせず、手紙でやり取りをしているのは妥当な対応でしょう
裁判はこれからですが、裁判官はどうこの事件を扱うのでしょうか?
反社会性が著しいとまでは言えないのであり、実刑を科すとしてもどれくらいの量刑にするか難しいところです。懲役2年の実刑としても、被告少年は未決勾留されている期間が長いのであり、未決勾留期間を服役したものと見なす従来の慣例に従えば、実質の服役期間は1年少々にすぎません。これで仮釈放の対象になれば、服役期間はさらに短くなり懲役刑を科す意味が疑わしくなってしまいます
執行猶予付き判決にするくらいなら、最初から少年院送致(概ね20歳に達するまでの間収容、という処遇勧告付きで)にしておいて方がよかったわけで。裁判官としても頭を悩ませるのではないでしょうか

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