ストーカー問題 自我・他我はどう形成されるのか2

2021年10月に甲府市内に住む夫婦が殺害され住宅が放火された事件があり、その家族の長女に交際を申し入れて拒絶された定時制高校の生徒が逮捕・起訴されています。起訴されらのが昨年4月ですから、2022年のうちに公判が開かれるかと思ったのですが年を越しています
それほど複雑な背景があるとは思えない事件なのですが、公判前の争点整理に手間取っているのでしょうか?
この甲府放火殺人を引き合いにして、ストーカー問題を考えます
月刊誌「創」の篠田編集長はこの事件について以下のように思いを綴っています。「匿名報道か、実名報道か」という問題は、ストーカー事件と無関係だと感じる方もいるのでしょうが、自分は本質に関わるものだだと考えます


甲府放火殺人事件19歳少年の実名報道めぐる議論と東京新聞の独自方針
(前略)
甲府事件の真相解明はとても大事なことだ
その記事の最後にも書いたが、片思いの後輩女性に冷たくされ、その実家に忍び込んで親を殺害と、この事件は極めて衝撃的だ。片思いから家族殺害という事態への飛躍が理解できないし、精神鑑定の内容を含めて、どうしてこういう事件が起きてしまったのか、真相解明はぜひ進めてほしいと思う。
改正少年法をめぐる一部の議論では、少年への社会的処罰あるいはどう責任をとらせるかという意味合いで実名公表を論じる向きも少なくないのだが、本当はそうでなく、真相解明という大事な使命のためにどこまで踏み込み、それをどう報じるかを議論すべきだと思う。真相解明のために別に実名を明かす必要がないのであれば、更生可能性を考えて匿名で良いと思う。少年が変わっていく可能性(可塑性)を考えて保護すべきという少年法の趣旨は尊重すべきだと思う。
(中略)
いずれにせよ、事件の真相解明は大事なことだ。昨年の大阪ビル放火殺人事件が、容疑者が亡くなったことから捜査終結とか言われているのが本当に信じがたい。裁判が開かれないのなら何らかの形で捜査で明らかになった情報を開示するといったことを考えるべきだと思う。
犯罪というのはある意味で社会に対する警告であり、その事件から社会が何も教訓化できないというのはあってはいけないことだと思う。この甲府放火殺人事件も、いったいなぜあのような凄惨な事態が起きたのか、ぜひ解明しなくてはいけない。
既存の司法のシステムが果たして十分に機能しているのかという問題はあるが、ジャーナリズムの役割と責任も大きいと思う。その意味でも今回の事件の報道がどうなされていくか今後も検証していきたい。


名前と本人との関係
社会に重大な影響をおよぼすような残虐非道な犯行であれば、特定少年として実名を明かす扱いも肯定されるべき、と自分は考えます
甲府の放火殺人は匿名の19歳少年による犯行ではなく、遠藤裕喜容疑者によって引き起こされた事件であり、遠藤容疑者という個人の人生観や価値観、彼の経験が深く関わっているのです。これを匿名にし、どこの誰かもわからない人物による事件として論じるのは大間違いでしょう
神戸の連続児童殺傷事件も東慎一郎という個人の人生とは無関係ではなく、あくまで東慎一郎の事件として語られるべきです
実名を公表することが犯行当時少年だった人物の更生の妨げになると決まっているわけではなく、これもまた刑務所や少年院を出た後の生き方によって決まるものです
彼個人の事件として扱う重要性
篠田編集長は上記の記事のように真相解明が重要だ、と強調しています。ならばなおさら、匿名の少年Aの事件ではなく、遠藤裕喜容疑者の事件として扱う必要があります。特にストーカーに起因する事件の場合、容疑者自身が「自分はストーカーではない」と否認するケースが少なくありません。裁判においては「被告人による犯行」だと認定するのが大事であり、「自分の犯行ではない」との逃げを許さず、罪を特定して罰するプロセスが重要です
自身のなした犯行だと自覚しなければ、何も始まりません
真相解明、振られた男としてどう振る舞うか
その上で真相解明が重要なのは異論がありません。ただ、裁判を「真相解明の場でなければならない」と表現するのはジャーナリストの勘違いです。裁判はあくまで「検察の立証に対して弁護側が反論し、裁判官がどちらの言い分に軍配を上げるか」でしかなく、検察の立証も関係者の供述や証拠の上に組み上げられた推論です。必ずしも「真相」がそこで暴かれるとは限りません
遠藤容疑者は同じ高校に通う女子生徒に恋をし、入れあげてしまったまでは周囲の証言から判明しますが、遠藤容疑者の心の内は彼が供述しない限り誰にも分かりません
あるいは、遠藤容疑者は「女子生徒から手ひどくフラれた。侮辱された。自分こそが被害者だ」と主張し、「彼女が自分の交際申し入れを断ったのは間違いであり、自分の好意を受け入れるべきだった」と今でも思っているかも
女子高生の側にすれば誰と交際するかは重要な問題であり、強制されるものではないはずです
他者を他者と認めないストーカー
つまり遠藤容疑者は彼女が独立した人格で誰と交際するか選択する権利を有している、とは認めたくないのでしょう。これは随分と身勝手な認識です。彼女に選択の自由を与えず、遠藤容疑者の言いなりになればよいという歪んだ考えです
結局、遠藤容疑者は彼女を己の所有物として扱いたいのであり、彼女に意思など無視し、一方的な要求のみつきつけてるも同然でしょう
もし交際すると応じたなら、「オレの女なんだから、オレの言うことをきけ」と命令するに決まっています。そして逆らうことは許さず、自己主張も封じるはずです。それが「オレの女になれ」という意味です
遠藤容疑者には、己と対等の自我を有した他者という存在が理解できないのかもしれません。そんな者が存在する世界を想像もできないし、認知もできないのかもしれません
自我と他我を認め合う世界に我々は生きているつもりですが、そうでない人もいると認めざるを得ません。他人を理解したり、その思うところを共感したり…といった情緒的な関係を構築できない人がストーカーになると考えられます

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