佐川一政 パリ人肉食事件を考える3
いわゆるパリ人肉食事件で、女性を殺害してバラバラにし、その遺体の一部を食べたと自称した佐川一政が亡くなり、各メディアが訃報や事件発覚当時のセンセーショナルな取り上げ方を回顧する記事を掲載しています
そのいくつかを読んだのですが、どれもが佐川一政を人肉食の異常者という扱いのままです
当ブログで繰り返し書いているように、人肉食は佐川一政の虚偽の申し立てであり、彼は自ら意図して人肉食の異常者を演じていたに過ぎません。Wikipediaを見れば、フランスから強制送還された佐川一政が東京都立松沢病院に収容され、そこでの診断により人肉食が詐病であり、虚偽であると結論付けられたと分かります
しかし、訃報を書いている記者たちは改めてWikipediaを見ようともせず、自分の頭の中にある人肉食の異常者というイメージのまま語り続けていると分かります
追悼 佐川一政 -「パリ人肉事件」で知られる作家の心の霧は最期に晴れたのか?
(前略)
筆者(澤)は当時の事件時とその後の狂騒を知る者として、簡素な新聞記事の行間や、抑えた伝え方に却って深い闇と戦慄を覚えた。恐らく芥川賞作品のモチーフの人物でなければ、一般紙は報じなかったのではないだろうか。だが『…手紙』のほうは題材として佐川氏の事件が用いられているが、氏の意に反した引用により当人が知らない間に刊行されたという。それを知った氏により一気にまとめられた『霧の中』は本人の言葉として、ヒトが人間を食べるための行動を詳細に記しており、大変読む者を選ぶ生々しさがある。「まったりとした」など味わいの感慨や調理の詳細まで記されているのだから。
人間にとって最大のタブーである人肉食が飢餓などの極限状態でもないのに行なわれ、しかも小柄な日本男性が大柄な外国人女性を……というニュースは当時、世界中で大変センセーショナルに報じられ、時をおかず2冊の刊行物がベストセラーになったことも騒動になった。
ことはさらに数奇な経緯を辿る。佐川氏はフランスでの精神鑑定の結果、不起訴となり、仏日の法の狭間で刑事処分を受けることなく日本に送還される。事件の資料は渡されず、日本の精神病院を退院。その頃はまさにバブル期で、すでに「著名人」である佐川氏はMの連続少女殺人事件論評を行なったり、様々な「表の」文化人の対談や刊行パーティーに出るなどある種の「寵児」となった。
(中略)
晩年2019年にはドキュメンタリー映画『カニバ パリ人肉事件38年目の真実』で弟に介護される様子が見られた。病院で息を引き取ったという佐川一政氏の心に最期に浮かんだものは何だっただろうか、霧は本人には晴れただろうか。書籍の類が現在大変探しにくいが、『霧の中』は電書で読める。
何かしら佐川一政に思い入れのある人物が書いた追悼の記事ですが、追悼文を書くにしても新たに取材するわけでもなく、事件時の報道を調べ直すでもなく、ただ記憶の中にあるまま書いているだけです
つまり、メディアの人たちは佐川一政が人肉食のモンスターであって欲しいのであり、そうではない佐川一政というのは興味も関心も湧かないのでしょう。理解不可能な異常者、人の肉を食らうモンスターという畏怖すべき存在をこそ求めたわけです
そして今でも、過去のイメージを抱いたまま、手放そうとしないのが見て取れます。なので、事件の真相などいまさらどうでもよいのでしょう
同じように佐川一政も世間が求める異常者、モンスターを演じ続け、一時期はメディアにも登場していました。が、やがて飽きられ、忘れ去られてしまいました。こうなっては、「人の肉を食べたなんで嘘です」と告白する機会もありません
もちろん、メディアだけを責めるわけにはいかないのであり、社会の中に佐川一政のような突き抜けた異常者を求め、それを指さして非難せずにはいられない心根があるのかもしれません
気取った言い方をするなら、「時代が人肉食事件を求め、スキャンダルとして持て囃し消費して捨て去った」と
先日、埼玉県飯能市で一家3人を殺害する事件がありました。「異常な殺人」と書き報道するメディアは、容疑者を異常者として告発し非難したくてうずうずしているように思えてなりません。しかし、逮捕されて車に乗せられる容疑者は髭も剃っており、髪もきれいに刈り込んでいてどこかのサラリーマンみたいな風貌でした。精神障害のある人の場合、身なりへの関心が薄れますので無精髭を生やし、髪もボサボサという場合が少なくありません。ただ、身なりがきちんとしているだけに、逆にサイコパスという印象を受けた方もいるのでしょう
異常か異常でないかはこれから判別するわけで、先入観だけで物を言うのはお互いに控えましょう
ちなみに連続幼女殺人犯の宮崎勤の場合も、取り調べや公判の中で発せられた異常な言動は虚偽であり、異常者あるいは解離性同一性障害を演じていた可能性が高いとの見解があります。猟奇的事件を起こしたのだから異常者に決まっている、などという思い込みは事件を読み間違える危険があります
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