反撃能力保有は憲法違反なのか?

他国から攻撃を受けた際、「反撃してはいけない」とか、「反撃は憲法違反だ」などの声が噴出するのは世界中で日本くらいではないか、と思います
なのでウクライナがロシアから攻撃を受けた際、「ウクライナは反撃せずに降伏すべきだ。その方が犠牲が少ない」などという珍妙な意見を述べる人たちが出てくるのでしょう。反撃せずの降伏したほうが犠牲は少ないなどと誰が保証できるか?
現にロシアは占領地域のウクライナ住民を拉致してシベリアの極寒の地へ追放する措置を取っており、ウクライナ人を生かしておこうとの考えがないのは明らかです。民族ごと殺してしまおうという悪意の前に、降伏とか無抵抗などという手段は無意味です
ニューズウィークには「ミサイルが飛んできても反撃しないことこそ日本の抑止力だ」とする、意味不明の記事が掲載されています。筆者は藤崎剛人という、埼玉工業大学非常勤講師でドイツ思想史の専門家です


ミサイルが飛んできても「反撃しない」ことこそが日本の抑止力だ
「反撃能力」とは先制攻撃能力のこと
「反撃能力」という言葉を聞くと、日本が攻撃されたのちに反撃する対象に他国の基地も含めるかどうかという問題だと思ってしまう。しかし実際はそうではない。「反撃能力の保有」とは、相手国が「攻撃に着手」した段階で、他国の基地や司令部中枢を攻撃する能力を保持しようとするものだ。
さらに「攻撃に着手」とはいかなる事態を指すのかは具体的に定義されていないため、極端な場合、たとえば他国が軍事演習を行うために部隊を移動させたり、艦船が日本領海に接近したりすることを「攻撃に着手」とみなして軍事的に攻撃することもできてしまう。「反撃能力の保持」とは事実上、日本が先制攻撃を行うこと、つまり戦争を仕掛けることを可能にするのだ。
「反撃能力の保持」は明白な憲法違反
日本国憲法は「国際紛争を解決する手段として」の戦争を否定し、そのための「戦力」保持を禁止している。しかし日本が攻められた場合の自衛能力は憲法によって否定されていないとして、「国際紛争を解決する手段として」ではなく自衛のための最小限の手段として、自衛隊および様々な兵器を保持してきた。
自衛隊の保持については、これまで様々な憲法解釈が学問的に積み上げられてきており、違憲論もあれば合憲論、あるいは違憲合法論(違憲だが合法というもの)もある。自衛隊が憲法違反かどうかは別として、自衛隊が憲法上、正統性が曖昧な組織であることは、国内において軍拡的・好戦的な議論を抑制するために一役買ってきたといえる。
しかし、まだ攻撃を受けていない段階での先制攻撃を可能にする「反撃能力の保持」は、「国際紛争を解決する手段として」「武力による威嚇又は武力の行使」を行うというはっきりとした表明だ。それは「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意した」という憲法前文の国際観に明らかに反している。これはどのような憲法解釈によっても正当化することはできない。
そうはいっても、実際に「近隣諸国」の「脅威」がある以上、こうした「抑止力」を保持しなくては敵の前に無防備で身を晒すだけではないか、と考える人もいるだろう。有事の際は、日本は敵の初撃を必ず受けるしかないのか。犠牲は防げないのか、と。
ある意味ではその通りなのだ。もちろんこれまでの政府の憲法解釈でも、専守防衛の範囲内で防げる初撃は、自衛隊は防ぐことができる。しかし敵基地からミサイルが日本の都市に発射されることが確実に分かったとしても(現実的にはそもそもこれがレアケースでしかないだろうが)それには手を出さず、甘んじてそれを引き受けるべし、というのが、これまでの日本国家の政策であった。
(以下、略)


日本国憲法の前文や9条を巡って思うところを書くと長くなりますので、簡単に述べます
憲法は侵略戦争を禁じているものと解釈するのが現実的であり(解釈は時代と状況によって変化するものです)、侵略に対して反撃する行為は侵略戦争ではありません。また、一部の人たちが主張する「憲法はあらゆる武力行使を禁じている」というガチガチの解釈は非現実的です。お花畑に住んでいるならともかく、我々は敵対する国、あるいは非政府の暴力集団の脅威の中で存在しているであり、反撃能力は憲法批判だからと全否定するような意見は耳を貸しても無駄でしょう
東京湾に武装した北朝鮮の船が出現し、お台場の日本市民にミサイルを向けたとして、これを先んじて攻撃し撃沈しない理屈があるのでしょうか?ミサイルが発射されるまで反撃するなとか、一発だけなら誤射かもしれないなどという、バカげた主張を尊重する必要があるとは思えません
政府は国民の安全を守らなければならないのですから、「先んじて攻撃し撃沈せよ」と命じるのが正しい選択でしょう
韓国メディアは日本が敵基地攻撃能力を保有するため巡航ミサイルを導入するとの報道に反応し、「朝鮮半島への先制攻撃には韓国の承諾を得る必要がある」との社説を掲載しています
北朝鮮への先制攻撃があるとするならば、日本は同盟国であるアメリカの承諾を得ればよいのであって、韓国の承諾を事前に得る必要などありません。事前に先制攻撃を韓国に伝えたなら、韓国はすぐに北朝鮮に情報を流すでしょうから
戦争を未然に防ぐ外交努力が重要なのは言うまでもありませんが、外交努力が通用しない国・武力集団もあるのを忘れてはなりません

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