20年前の性暴行に賠償命令判決

民法の規定で不法行為によって損害を受けた際の賠償請求は20年を超えると時効により、請求できなくなります
ちなみに刑法では強制性交罪の時効は10年で、強制性交致傷罪の時効は15年になっています
大阪地裁の判決で、20年前の小学生時に近所の男兄弟から強制わいせつ行為を受けた女性が民事訴訟を起こし、この兄弟に損害賠償請求をして認められるという判断が示されました


幼少期に幼馴染の兄弟から性暴力の被害を受けたことを成人してから訴えた女性の裁判で、大阪地裁は11月14日に女性の訴えを全面的に認めて2人に計440万円を支払うよう命じました。
大阪府内に住む20代後半の女性。訴えによりますと、女性は20年ほど前の小学1年生の頃から約4年間にわたって、近所に住む上級生の兄弟2人から下着を脱がされて触られたり相手の股間を触らされたりしたほか、性行為の被害を受けそうになったとしています。兄弟から「誰かに言ったら警察に捕まって2人とも死刑にされる」などと脅されて、幼かった女性の心には大きな傷跡が残りました。
(性暴力を受けた20代後半の女性)
「普通に友達と遊んでいる時とかでも、その場では楽しいんですけど、頭の中ではそういう過去のことがよみがえってきたりとか、その場をあまり楽しめない」
両親にも打ち明けることなく過ごしてきましたが、3年前、兄弟の1人が突然女性の母親に女性の様子などを尋ねる電話をかけてきました。
(性暴力を受けた20代後半の女性)
「接触してきた気持ち悪さもあったし、殺されると思って。これは言わなあかんかなって思いました」
これをきっかけに母親に被害を打ち明け、その後、心療内科を受診。「複雑性PTSD」と診断されました。
診断から1年後、女性は2人に対して440万円の損害賠償を求めて提訴。裁判の中で相手側は「損害賠償請求の時効が成立している」などとして訴えを退けるよう求めましたが、女性側は「性暴力が不法行為に当たると理解できたのは心療内科の診断を受けた3年前であり、権利は消滅していない」と主張しました。
性暴力の時効をめぐる裁判は全国で起きていて、北海道では実の叔父から受けた性暴力被害をめぐり「被害女性がうつ病と診断された時点が不法行為の起算点」とする判決があります。その一方で、別の裁判では原告が敗訴するケースもあり、判例も確立していないのが現状です。
そんな中で迎えた11月14日の判決。大阪地裁は「心療内科で診察を受けて初めて、抑うつ気分やフラッシュバックの原因が2人による性暴力行為だと認識でき、損害賠償請求できることがわかった」「女性の無知に乗じて性暴力行為を行い悪質」として、女性の訴えを全面的に認めて、2人に対して計440万円を支払うよう命じました。
(女性の代理人 仲岡しゅん弁護士)
「期間が経っていたとしても声を上げることに意味があるんじゃないかと思ってくださる方がいればいいなと思っています」
女性は「同じような被害にあった方の何かしらの役に立てたら幸いです」とコメントしています。
(MBSニュースの記事から引用)


兄弟のうちの兄か弟か不明ですが、女性宅に電話で様子を尋ねてきたというのですから、強制わいせつを繰り返して被害を与えた自覚があったのでしょう。
民事訴訟を提起する前に、被害女性は弁護士を介して兄弟に賠償請求をしたはずですが、請求に応じなかったため訴訟になったのでしょう
20年前のこどもの頃のいたずらであり、いまさら賠償などする必要はないと考えて
しかし、大阪地裁は被害女性側の主張を認め、兄弟に440万円の損害賠償を命じています。「こどもの頃のいたずら」で片付けられないとの判断です
なお、PTSDとの診断を受けたのが3年前であり、その時点を性暴力による心的被害を認知できたものとして時効計算の起算点とした判断も重要です。民法上の損害賠償請求の時効は20年でも、不法行為によって損害を受けたと認知した時点が3年前ですから時効はまだ成立していないとと大阪地裁は認めたわけです
刑法上は強制性交致傷の時効が15年であり、強制わいせつ致傷の時効も15年となっています。この時効の考え方も上記の判決を引用し、PTSDと診断を受けた日が被害を認識した日としたならば、刑事告発して刑事処分を求めることも可能となります(ただし、記事にもあるように判例として確立しているわけではないので、刑事裁判では時効が成立しており罪に問えないとの判決が下される場合もあります。最高裁での判断が示されてから、判例として確立したものと扱われます)
ただし、本件の場合は加害者である兄弟が当時おそらくは14歳未満のこどもであり、刑事罰の対象にならない年齢だったと推測されますので、刑事告発はしないのでしょう

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