新潟連続強姦殺人事件を考える7 死刑求刑

新潟県新発田市で起きた連続強姦殺人で、既に無期懲役刑が確定して岐阜刑務所に服役していた喜納尚吾受刑者が、別の殺人と強制わいせつ致傷の疑いで起訴された裁判の続報です
新潟地検は喜納被告に対し、「被害者が1人であっても悪質な犯行であり、極刑にするべき」として死刑を求刑しています
例の永山基準を引用し、いずれの基準と照らし合わせても死刑を回避する選択はないと強気の論告求刑を行いました。立証に自信があるのでしょう


新潟県新発田市で2014年に会社員女性(当時20歳)を殺害したなどとして殺人と強制わいせつ致傷などの罪に問われた喜納尚吾被告(39)の裁判員裁判の論告求刑公判が7日、新潟地裁(佐藤英彦裁判長)であった。検察側は「生命軽視が甚だしく更生が期待できない。極刑を回避すべき事情はない」として死刑を求刑。弁護側は直接証拠が乏しく「犯人で間違いないとは言い切れない」と無罪を主張し、結審した。判決は18日に言い渡される。
起訴状などによると、喜納被告は14年1月15日、信号待ちをしていた女性が運転する軽乗用車に乗り込み、わいせつな行為をして約1週間のけがをさせた上、何らかの方法で溺死または窒息死させたとされる。
検察側は論告で、遺体発見現場近くに放置された女性の車のハンドルから、女性と喜納被告の混ざったDNA型が検出されたことなどを挙げ、犯人性の根拠の一つとした。量刑については、最高裁が死刑判断の基準として9項目を挙げた「永山基準」(1983年)に照らしつつ、「被害者が1人だから結果が軽いとは言えない」と指摘。喜納被告が7年半にわたって服役して矯正教育を受けたにもかかわらず、別の女性に対する強姦(ごうかん)致死事件などを起こした点も踏まえ、死刑求刑を決めたとした。
被害者参加制度で遺族代理人の弁護士が意見を述べ、喜納被告から反省や謝罪の言葉は一切なく「極刑を科すのが相当だ」と訴えた。
一方、弁護側は最終弁論で「付着物から検出された混合DNA型には3人分のDNAが含まれている可能性がある」などと強調。積雪に伴う事故死の可能性も否定できず、8年前の出来事で喜納被告の記憶や証人出廷した目撃者の証言も「曖昧だ」と主張した。喜納被告は初公判から一貫して否認している。この日の意見陳述では「この件に全く関係していない。わかることは何もない」と述べた。
喜納被告は別の女性への強姦致死罪などで18年3月に無期懲役が確定。岐阜刑務所に服役中の20年2月に今回の事件への関与が発覚して殺人容疑などで逮捕され、同3月に起訴された。
(毎日新聞の記事から引用)


永山基準のおさらいです
(1)犯行の罪質(2)動機(3)態様(特に殺害方法の執拗=しつよう=さや残虐さ)(4)結果の重大性(特に殺害された被害者の数)(5)遺族の被害感情(6)社会的影響(7)犯人の年齢(8)前科(9)犯行後の情状——を総合的に考慮して「やむを得ない」ときに死刑選択が許される、という判断基準です
裁判官3人の評議では、過去の裁判例と比較しながら、これらの項目に沿って検討。結論は全員一致が原則だが、時間をかけてもまとまらなかったときは多数決で決める、とされますが、「死刑は全員一致であるべきだ」との意見もあります。現在は裁判員が加わっていますので、裁判官3人と裁判員6人の多数決で決めるのが一般的な原則のようです
以前にも書いたように、世間の同情が集まり「永山則夫に死刑を科すべきではない」という当時の世論を納得させるため、これら9項目に照らして検討してもなお死刑に処すしかないとの方便で、永山基準が設けられたと自分は解釈しています。別段、これら9項目に縛られる必要はないのであり、永山基準に代替する新たな基準を設けてもよいのではないか、と思っています。ただ、裁判官たちは前例踏襲のままであり、新たな基準を提示しようとの気概に欠けているのが残念です
さて、話を戻します
別の報道によれば喜納被告の元妻が証言に立ち、犯行のあったとされる日は夫が仕事を終えても帰宅しなかったと法廷で述べています。2014年1月15日という特定の日の記憶が定かかどうか、弁護人は問題視しているのでしょう。他の証言についても、8年前のことを鮮明に覚えていたというなら不自然、と疑義を呈しています
判決は11月18日に言い渡されます

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