「少年A」裁判記録を神戸家裁が廃棄(3)
神戸連続児童殺傷事件など、各地で起きた少年による重大事件の記録を家庭裁判所が廃棄していたとして問題視されています
最高裁は重大事件の記録は永久保存するよう通達を出していましたが、まったく考慮されなかったわけです
なぜ、そんなに簡単に廃棄されてしまったのか、と一般の国民は訝るはずです。ワイドショーのコメンテーターであるタレントのカズレーザーも、「誰かが廃棄しろと命じないと廃棄されないのでは?」と、何かしらの意図があったのではないかとの疑念を呈するのも、至極当然かもしれません
お笑いコンビ「メイプル超合金」のカズレーザー(38)が21日、フジテレビの情報番組「めざまし8(エイト)」(月〜金曜前8・00)にコメンテーターとして出演。神戸の連続児童殺傷事件をはじめとする重大な少年事件の記録が、各地の家裁で廃棄されていたことに言及した。
神戸家裁は記録廃棄の経緯に関し「仮に当時の職員に聴取したとしても個人の見解の範囲にとどまると考える」などと調査に否定的な姿勢を示した。愛知県や長崎県で起きた他の複数の重大少年事件でも同様に各地の家裁が保管していた事件記録を廃棄していたことが各家裁への取材で判明した。各家裁は廃棄の理由を「不明」や「調査中」などと説明している。最高裁は調査しない方針で、廃棄の経緯や非公開だった少年審判の検証は困難な見通し。
MCの谷原章介が「どういうプロセスで廃棄に至ったのか、それが分からないんですよね」と言うと、カズレーザーは「期間が来たから機械的に破棄するというような、ずさんな管理だったから廃棄されたとしたら、同時期に廃棄された記録とか時系列を照らし合わせれば、機械的だったんだっていうのは確認できるし、そうしたら誰の責任かって分かりやすいと思う」と指摘。
そのうえで「本当に素人の考えなんですけど、こんな大きな事件の記録って、何度もこれまで照会される機会が多かったと思うんですよ。別で管理するのが自然だと思う。多くの中にポンじゃなくて、何度も使う記録だからって別管理されるから、廃棄されるってな時は“これ本当に廃棄していいんですか”って確認するのが当たり前だと思うし、誰かが廃棄しろって命じないと廃棄されなそうな気がするんですよね」と自身の見解を話した。
(スポーツニッポンの記事から引用)
ただ、こうした疑念は官公庁での文書管理の実態を知らない方が抱くものであり、実態を知る人間としては「ああ、そうか」と思うだけです
公文書はその内容、区分ごとに分けられ、保存期間が定められています。雑文書とされるものは1年保存で廃棄となり、特に重要と定められた文書は永久保存とし、それぞれ区分された文書庫の棚に収められます。官公庁は会計年度で動いていますので、4月1日から新年度となり、3月31日までの文書は前年度のものとして上記のごとく区分され、保存台帳に文書綴の名称、保存期間など記載して文書庫に移します。が、これがなかなか大変な作業で、実際に担当するのは職員1人だけだったりするため、保存やら廃棄の作業にかなり時間がかかります
さらに文書庫が既にいっぱいだったりすると、保存期限の到来した文書を廃棄してスペースを空けないと、新たな文書を保管できなかったりします
自分が勤務した法務省の出先機関などは文書管理が杜撰で、保存期限が切れた文書が文書庫の床に山積みのまま放置されていたり、文書の保存台帳が整備されておらず記入もされていないとか、保存期限を過ぎた文書が文書庫ではなく、倉庫に放置込んである、といった状態でした
要は歴代の課長たちが文書管理に無頓着で、係員任せで放置してきた結果です
なので、文書廃棄台帳を新たに作って期限を過ぎた文書を記載し、何月何日に廃棄処分したと記録して焼却処分するところから取り組みました。仕事は山積みなのにそれに取り組めないまま、焼却炉で延々と過去20年以上も放置されていた保存期限切れの文書の束を焼く、という作業に取り組まざるを得なかった苦い思い出です(現在なら古紙回収し、溶解して処理する業者に委託となるのでしょう)
日本では戦後の混乱期に少年犯罪が激増し、それに対応するため少年院が各地の設けられたのですが、昭和30年代半ばを過ぎると少年犯罪も減少し、少年院の統廃合始まります。廃庁された少年院の保存文書は近隣の少年院が保管することになり、移されました。が、その文書を誰も触ろうとしないまま、保存期間が切れても廃棄せずに放置してきたという現実もあります
少年簿のように最初から永久保存の扱いになっているものはともかく、それ以外の文書はほとんどが10年保存して廃棄という扱いです
家庭裁判所の文書管理規程がどうなっているのかは知りませんが、裁判関係の記録でも保存期間が定められているからには機械的に廃棄するのが仕事です。なので、誰かが意図的に廃棄したのではなく、家庭裁判所の事務官が優秀であり、きちんと文書の保存期限を確認し管理していたからこそ重大事件の裁判記録であろうとも廃棄処分になった、と解釈します
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