大阪養子縁組保険金殺人 高井容疑者自殺の波紋

他の事件を取り上げるつもりでしたが、大阪府警福島署の留置場管理が杜撰だと判りましたのであれこれ思うところを述べます
自分が法務省の施設に勤務していたとき、県警本部の研修の一環として各警察署の留置場担当者が拘置所や刑務所、少年鑑別所を見学して回っていました。質疑応答も行い、勤務上の要諦など話し合った経験があります。生意気なようですが、話をしていて「レベルが低いな」と感じたものです
もちろん、彼らは警察署内の一部門であり、その勤務内容の特殊性から簡単に他部門の警察官で代替できない勤務を担当しているのであり、本音では留置場の係などやりたくないのでしょう。留置場が一杯で忙しいとしても、他部門の警察官を臨時に据えて留置場で勤務させるわけにはいきません。容疑者の扱いにしろ留置場の管理運営にしろ、経験のない警察官にはできない業務だからです
今回の高井容疑者の自殺も、そうした留置場勤務の特殊な事情があると考えられます


大阪府高槻市で2021年7月、会社員の高井直子さん(当時54歳)が自宅の浴槽で溺死した事件で、殺人容疑などで再逮捕された養子で無職の凜容疑者(28)が1日朝、勾留先の大阪府警福島署(大阪市福島区)の留置場で心肺停止状態で見つかり、救急搬送された。府警は現場の状況から衣類の一部を使って自殺を図ったとみている。
1日夜、心肺停止状態で救急搬送された凜容疑者の死亡が確認された。大阪府警に殺人容疑で再逮捕されてからこの日で1週間。重大事件の容疑者に対する留置管理は適切だったのか。府警幹部らに衝撃が走った。
府警は午前11時、府警本部で凜容疑者の搬送を発表した。管理体制の評価に質問が集中したが、対応した府警留置管理課の戸山明夫調査官は「調査中でコメントを控える」などと繰り返した。
府警は内規の留置管理規定で具体的な運用を定め、容疑者の言動や体調に応じて警戒度を3段階で設定している。
最も警戒レベルが高いのは「特別要注意被留置者」。自殺や自傷行為への具体的な懸念がある容疑者が位置づけられ、主に24時間態勢の対面監視を実施する。規律違反の行為が危惧される場合に指定されるのは中リスクの「特異被留置者」で、凜容疑者はこれに該当していた。
府警によると、凜容疑者は「逃走を考えている」と漏らしていたほか、収容された留置場の居室内から署員の様子をうかがうような仕草が確認され、8月19日から「特異者」に指定されていた。消灯する午後9時から起床時間の午前7時について、1時間に不定期で4回程度実施する巡回数を5回に強化していたという。
福島署では発生当時、署員3人が留置管理を担当していた。うち1人が午前6時44分、凜容疑者が布団に横になっているのを確認した。凜容疑者の異変に気付いたのは、起床の点検をしていた18分後の午前7時2分。既にぐったりした状態だったという。
室内には、複数のTシャツの裾部分を重ねたひも状のものが残されていた。いずれも凜容疑者のTシャツの一部とみられ、居室の外にある私物保管庫から裾部分だけが裂かれた複数のTシャツが確認された。
各容疑者の保管庫は月2回、署員が点検するルールになっている。直前の8月26日に凜容疑者の保管庫をチェックした際は不審点がなかったと報告されていた。また、31日の就寝時は寝具や室内の様子に異変は確認されなかったといい、凜容疑者がどのようにTシャツの一部を準備したのかは分かっていない。
(毎日新聞の記事から引用)


まず、私物の保管庫の点検を月に2回しか実施していない書かれているのを読んで、のけぞってしまいました。拘置所でも少年鑑別所でも監房の点検及び私物の点検は毎日実施しています(その日によって、何を重点的に調べるか指示します)。もちろん、それでも見落としはあるわけで十分とはいえませんが
別の報道では、高井容疑者の所持する便箋に自殺をほのめかす記述があったとされ、警察署では把握していたと判明しています。それでも対面での監視に踏み切らなかったのは、留置場の勤務者だけでは夜間に対面での監視をするだけの人数が足りなかったからではないか、と思われます。対面での監視といっても夜9時から朝7時まで、1人配置で済むわけもなく、途中で交代させ休憩を与えなければなりません。夜間の時間帯の勤務者を増やせば翌朝には非番として帰さなければならず、今度は昼間の時間帯の勤務者が不足します。上述したように留置場勤務は警察官なら誰でもできるというわけにはいかず、交通係や機動隊の警察官を替わりに配置したりはできません
しかも高井容疑者は黙秘を続けており、取調べがいつ終わるか先の見えない状態です。黙秘されて供述調書が1枚も取れない状態で、警察の留置場から大阪拘置所に身柄を移すのは警察のメンツが許しません。高井容疑者を福島署の留置場に置いたまま2週間も3週間も取調べを続けるというのは、対面で監視を2週間も3週間も続けることであり、留置場勤務者から悲鳴が上がるはずです。平素でもギリギリの人数で勤務をしているのに、対面監視でさらに1日余計に勤務させられる状態となれば、年次休暇も取れないと
そのため、対面での監視を必要とする「特別要注意被留置者」には指定しなかったと推測されるのです
まあ、事情としては身内の都合を優先させたのであり、結果として自殺されては本末転倒ですが

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