神戸弘陵高生徒殺し　再度の精神鑑定要求: 夾竹桃日記

2022年08月05日

神戸弘陵高生徒殺し　再度の精神鑑定要求

神戸市北区の路上で高校２年生の少年が刺殺されたのが２０１０年１０月４日夜です

あれから１０年を経て泉龍都被告が逮捕・起訴されていますが、まだ初公判の目処は立たないまま争点整理が神戸地裁で続いています

報道のよれば弁護人が泉被告の精神鑑定を要求しており、神戸地裁が実施するかどうか検討するのだとか

泉被告に対してはすでに神戸地検が起訴前に精神鑑定を実施しており、いまさら再度の精神鑑定が必要なのかと思うばかりです

神戸市北区で平成２２年１０月、私立神戸弘陵学園高校２年、堤将太さん＝当時（１６）＝が刺殺された事件で、殺人罪で起訴された愛知県豊山町の被告の男（２９）＝事件当時（１７）＝について、被告側が精神鑑定を請求したことが４日、関係者への取材で分かった。裁判所が実施の必要性を検討する。

男が逮捕されてから４日で１年。神戸地検は犯行時の責任能力を調べるため、昨年８月から約５カ月間鑑定留置を行い、今年１月に殺人罪で起訴した。

関係者によると、被告側は６月２２日付で再度の鑑定を請求。男は事件直前に医療機関で精神疾患があるとの診断を受けていたといい、公判では責任能力の有無や程度が争点になるとみられる。

事件は１０年以上未解決となっていたが、堤さんの衣服から検出されたＤＮＡ型が、男のものと一致したことなどから、兵庫県警は殺人容疑で昨年８月４日に男を逮捕した。男はこれまでの調べに「堤さんが女子生徒と一緒にいるところを見て腹が立った」との趣旨の供述をしているという。男と堤さんに面識はなかったとみられる。

（産経新聞の記事から引用）

以前にも書いたように、精神鑑定はそれを実施する精神科医や大学研究者によって用いる精神医学理論や心理学理論が異なります。なので２人が鑑定を実施すれば、異なる内容の鑑定結果通知所が２通できあがります。そのどちらを採用するかは裁判官しだいです

昔、テレビのニュース番組の解説員が「精神鑑定に用いられる理論は統一されておらず、鑑定人によって別々の鑑定結果が出るのは問題だ。用いる理論を統一すべきだ」などとバカな主張をしていました。人間の人格や性格、資質というものをさまざまな理論によって縦から眺めたり横から眺めたりすることで、その人物像というものが浮かび上がってくるのであり、たった１つの理論に「統一して鑑定しろ」などと主張するのはあまりに愚かな主張です

ただ、１回の精神鑑定に７０万円から１００万円近い費用がかかり、これは国費で賄われます。なので、必要もない精神鑑定を２回も３回も繰り返すのは無駄でしかありません

多くの場合、精神鑑定は１回です。裁判官が公平・更生な裁判のため再度の精神鑑定が必要だと判断するなら尊重しますが

弁護人としては精神鑑定により、「犯行当時は精神病の影響により心神耗弱状態だった」との鑑定結果が欲しいのでしょう。心神喪失なら刑事責任を問えないと判断されますし、心神耗弱なら刑事責任能力は限定的であったと判断され罪一等を減じた判決になります

犯行そのものに争う余地がないとしても、減刑狙いで精神鑑定を求めるような法廷戦術は厳に慎んでもらいたいものです。もちろん、神戸地検が実施した精神鑑定に重大な瑕疵や見落としがあるなら別ですが

神戸地裁の判断がいつ示されるか不明ですが、夏休み期間がありますので精神鑑定を再び実施するなら８月下旬からとなり、結果が示されるまで３ヶ月かかります。となれば、初公判を年内に開くのは無理で来年に持ち越しでしょう

事件としては単純な殺人事件であり、複雑な背景があるとは思えません。事件前の精神疾患の診断を受けていたとしても、「電波が人を殺せ、と命じてくる」といった幻聴に悩まされていたのならともかく、そうでなければ争点整理に時間をかける必要があるのか、と思ってしまいます

被害者遺族にとって初公判が先送りされるのは辛いのであり、速やかに初公判に漕ぎつけてもらいたいものです

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