日韓海底トンネル計画と東国原の変節

宮崎県知事選挙への立候補を予定している東国原英夫(そのまんま東)は、かつて知事をしていた時代に日韓トンネル計画に賛同を表明していました。ところが現在では「反対の立場」であると言明しています。ただ、なぜ当時は賛成して現在は反対なのか、明確な理由の説明はありません
東国原英夫は「何度も説明している」と言いますが、どこでどう変わったのかには触れていません


前宮崎県知事でタレント東国原英夫氏(64)が25日までにツイッターを更新。日本と韓国を結ぶ「日韓トンネル」構想に関する過去の発言について釈明し、現在の考えを示した。
日韓トンネル構想が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とのつながりを指摘されるなど問題となる中、ネット上では東国原氏が宮崎県知事時代に同トンネルの建設を推進する発言をしていたことが取り沙汰されている。
東国原氏は年末に実施される同県知事選(12月8日告示、同25日投開票)に出馬すると正式に表明している。この発言についてネットユーザーから真意を尋ねられ、「何回、説明すれば良いのか。日韓トンネルに関する発言は、十数年前、当時の九州経済界や議員連盟等からの進言を受けて発言したもの」と釈明。「現在はまるっきり逆で、日韓トンネル建設には反対の立場です」とした。
(日刊スポーツの記事から引用)


過去、さまざまな地域ごとに日韓トンネル実現のための協議会、推進会議などが設けられ、国会でも推進議員連盟が活動していたのですが、現在は解散しています
推進議員連盟解散の理由について、自民党安倍派の重鎮衛藤征士郎衆院議員は取材で、「我々は韓国の国会議員にも懸命の働きかけをしたが、韓国側はB/C(費用対効果)のコストから非常に冷ややかだった。もう1つは、旧統一教会がいかにも自分たちのイニシアチブ(主導)でやっているんだということが前面に出てきた。これは我々の言う両国政府の国家的プロジェクトの思惑から外れてしまうとの事で、私どもの日韓トンネル推進議連は解散した」と説明しています。東国原英夫もこれくらいの説明はするべきでしょう
さて、さまざまなメディアが日韓トンネル計画について記事を掲載しているのですが、その中からNEWSポストセブン掲載の記事を取り上げます。日韓トンネルは技術的には可能でも必要性が乏しく、ビジネスにはならないと指摘しています

総工費10兆円の「日韓トンネル」構想 技術的には可能でも必要とは思えない
https://www.news-postseven.com/archives/20220828_1787656.html?DETAIL
「日韓トンネルですか。調べてみましたけど、日本の技術なら可能です。でも、何もメリットはないでしょう」
海洋土木に強みのある中堅建設会社の施工管理技士が語る。こういった内容では学者より海洋土木の現場を知る技術者のほうが、経験に裏打ちされた肌感など有意に思う。ちなみに本稿、専門用語や業界特有の言い回しなどは適時置き換えている。ヒアリングの本旨はあくまで「日韓トンネルは実現可能か、必要か」という点にある。
(中略)が
日本の海洋土木はいまも世界トップレベル
「トルコのボスポラス海峡の海底トンネルも日本が手掛けました。大成建設は世界最深度への沈設も成功させました」
ヨーロッパとアジア(オリエント)を隔てるボスポラス海峡はトルコのイスタンブールにある。この要衝にトンネルを作ることはトルコ150年の夢と言われた。強潮流で水深の深い箇所のあるボスポラス海峡に沈設することは難しいとされてきたが2011年2月、日本は大成建設を中心にこの夢を実現した。「地図に残る仕事」というキャッチフレーズでこのプロジェクトを紹介したCMは記憶に新しいだろう。
「ユーロトンネルも日本の技術が貢献しています。川崎重工のTBMが使われています」
かつて「ナポレオンの夢」と呼ばれたユーロトンネルはドーバー海峡、イギリスとフランスの間をつなぐ50.49kmの海峡トンネルである。TBMとはトンネルボーリングマシン(全断面トンネル掘進機)のことで巨大なカッターヘッドで岩盤をドリルのように掘削する超大型トンネル掘進機である。古くからの爆破(発破)作業を伴うことなく高速掘進が可能で、掘削そのものを完成断面にできる。
「日本の技術力低下がよく言われますが、海洋土木はいまだに世界トップレベルにあります。個人的には技術面では日韓トンネルの接続は可能だと思います。その意味では、決して荒唐無稽ではありません。しかし実現度としては、おっしゃる通り荒唐無稽でしょうね」
(中略)
対馬市議会は2013年に日韓トンネルの早期実現を求める意見書を採択している。対馬は韓国人の人気観光地として知られるが、古くから日本を守る国防の島でもある。しかし人口はピーク時の7万人から3万人あまりとなってしまった。
「実のところ、技術的に一番ハードルが高いのは対馬から釜山の深度だと思うのです。ルートにもよりますが西水道(対馬海峡の韓国側)は200メートル級の深度で遮られています。東水道なら深いところでも100メートル前後、これでも大変ですが、やる前提なら対馬まででよいのでは。もっとも、いずれにしろ資金面で難しいと思いますが」
一部政治家や研究者の間でさかんに起こる「日韓トンネル」計画。しかしネットも含めた一般国民は日韓両国とも反対か興味なし、もしくは「非現実的」と笑うような代物である。
それでも九州の地方議員や研究者を中心に「日韓トンネル推進会議」的な団体があり、今年の6月11日にも「日韓トンネル実現九州連絡協議会」(会長・梶山千里九州大学名誉教授)の総会が開かれている。この計画を本気で実行しようとしている人々もいる。
10兆円で韓国と地続きになるとされる日韓トンネル、このコロナ禍と少子化、福祉政策をはじめとする財政危機の中、本当に必要なのだろうか。

統一教会が対馬などでトンネル掘削を開始していると報じられてはいますが、いずれもデモンストレーション目的であり、本格的な計画があって掘っているわけではありません。当然、海底部分にも到達しておらず、陸地から数百メートル掘っただけです
献金を集めるため、あるいは政治家や地方自治体の議員に見せて賛同を得るため、トンネルの形をしたものを実際に造って見せる必要があったのでしょう
可能性は皆無ですが、仮に日韓両政府がトンネル計画の実現に乗り出したとしても、統一教会の掘ったトンネルがそのまま使われたりはしないのであり、別の場所に新たにトンネルを掘るはずです
また、当ブログで何度も書いているように韓国側には「韓国の土木技術は世界一であり、韓国の技術をもってすればトンネル開通は可能」との自負があります。これはシールドマシンを使ったトンネル掘削ではなく、コンクリート製の箱を海に沈めて繋げトンネルにする沈埋工法でやれる、と考えているためでしょう
ただ、対馬海峡は深い所で水深190メートルあり流れも早いため、沈埋工法でやれるかどうかは不明です。海流に逆らってクレーン船を安定させ、水深190メートルの海底に重さ100トンくらいのコンクリートの箱を精密に下ろさなければなりません。技術的な困難さは計り知れないと思うのですが
ともあれ、統一教会問題で日本の世論が沸騰している現在、日韓トンネル計画の実現可能性はますます低くなったのであり、このまま消えてなくなるのを期待します

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