安倍元首相殺害　山上容疑者の精神鑑定: 夾竹桃日記

2022年08月09日

安倍元首相殺害　山上容疑者の精神鑑定

安倍元首相を射殺した山上徹也容疑者の鑑定留置が始まっています。鑑定留置の期間は通常３ヶ月ですが、山上容疑者の場合は４ヶ月の期間を申請して裁判所が許可しており、異例の長さです

ただし、過去には精神障害が疑われる容疑者について５ヶ月もの鑑定留置が行われた例もあり、山上容疑者の４ヶ月が必ずしも特別というわけではありません。ただし、山上容疑者に精神病の既往歴があったとは思われませんので、単に刑事責任能力の有無を問うだけの鑑定留置ではないのでしょう

首相を務めたVIPの殺害事件ですから、慎重を期して長めの期間を設けたと解釈するのが妥当なのでは。あまり勘ぐってしまうと陰謀論に結びつきかねません

以下、日刊SPA!の記事から一部を引用します

安倍氏殺害の山上容疑者「精神鑑定で4か月も留置」は口封じの政治的拘束か

https://nikkan-spa.jp/1849850?cx_clicks_art_mdl=3_title

安倍晋三衆議院議員（元首相）が7月8日午前11時半ごろ、奈良市で参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件で、現行犯逮捕された奈良市在住の山上徹也容疑者（41歳）が7月25日から精神鑑定を受けている。奈良地裁が7月25日、奈良地検の鑑定請求（7月23日）を認めた。

山上容疑者は7月10日に殺人容疑で地検に送検された後も、奈良西署に勾留されていたが、勾留満期の29日を待たず、25日に鑑定のため大阪拘置所に移送された。鑑定は11月29日まで4か月実施される。鑑定留置は、専門医が成育歴や生活状況、犯行時の精神状態などを詳しく調べるための手続きで、精神鑑定の結果をふまえ、地検が刑事責任能力を判断する。山上容疑者の起訴は早くても今年末となる。

報道各社は、彼が取り調べで話したとされる「供述」情報を垂れ流してきたが、裁判所は「容疑者の精神状態、責任能力があるかどうかを専門家に聞く」というのだ。安倍氏と「世界平和統一家庭連合」（旧・統一協会、以下、統一協会とする）の関係が取り上げられるのを先延ばしするための政治的作戦としか思えない。

またメディアは＜山上容疑者は遅くとも去年3月から銃の製造を始めるなど計画的に犯行を準備していた一方で、動機には論理の飛躍がみられる＞（毎日放送）、＜山上容疑者は計画的に行動する一方、安倍氏を襲撃した動機の論理に飛躍がある＞（読売新聞）と強調した。

しかし、山上容疑者の主張に論理の飛躍はないと筆者は思う。報道各社は＜（旧統一協会への恨みから）つながりがあると思い込んだ安倍氏を狙ったと供述。一方で、事件前に書いた手紙では「（安倍氏は）本来の敵ではないともつづっていた＞（7月26日『朝日新聞』）と報じた。メディアは、安倍氏と統一協会に深い関係があると「思い込んだ」と強調した。

（中略）

メディアは「安倍元総理の政治信条への恨みではない」と強調

筆者は1984年に出版した『犯罪報道の犯罪』以降、事件報道の被疑者・被害者の匿名報道主義（公人の職務上の嫌疑の場合は顕名）を提唱しているが、この事件は統一協会の悪質性を社会に訴えるために最高実力者の政治家を暗殺した事件として、山上容疑者を顕名にする。

安倍氏暗殺事件では、「山上容疑者は安倍氏の政治姿勢には反対していない」という世論誘導が目立った。NHKは事件の約4時間後＜警察当局によると、現場で逮捕された41歳の容疑者は「安倍元総理大臣に対して不満があり、殺そうと思って狙った」という趣旨の供述をしている一方で「元総理の政治信条への恨みではない」とも供述している＞などと報じた。

続いて、日本テレビも＜調べに対し「殺そうと思って狙った」などと話していることが新たにわかった。一方で、山上容疑者は「安倍元首相の政治信条に対するうらみではない」とも話していて、これまでのところ容疑者について事件につながるような思想的背景や組織的背景については確認できていない＞と伝えていた。他社も「捜査関係者への取材で分かった」と同様の報道を行った。

（以下、略）

記事を書いているのは浅野健一元同志社大学教授で、かねてから日本のメディアの報道姿勢に疑問を投げかけてきた人物です。なので、今回も警察とメディア、政府が手を組んで重大な事実を覆い隠そうとしているのではないか、と疑っているわけです

「山上容疑者の動機に論理の飛躍がある」との表現は読売新聞などが盛んに使っている理屈です。しかし、山上容疑者の狙いは的確だったわけで、政治家と統一教会の関係が厳しく問われる事態になっています。統一教会関係者を殺害してもこうした結果にはならなかったでしょう。もちろん、統一教会にのめり込んだ母親を殺害しても、社会面の片隅に載る程度の事件として片付けられてしまったはずです

ですから山上容疑者の動機に論理の飛躍などなく、極めて冷静に事態を読んで上で決行したと思われます。まあ、本人の想像以上の結果を引き出したのですが

よって、山上容疑者の精神鑑定を政治権力がどうこうしようと、政治家と統一教会の関係を厳しく問う世間の声は抑えられません。上記の記事では山上容疑者の長期間の鑑定留置を「政治的な口封じ」ではないか、と問う内容ですが、いまさら山上容疑者の口を封じたところで、世間が統一教会を容認しないでしょう

テロを称賛するつもりはありませんが、安倍晋三元首相とて統一教会による強引な献金集めを知っていたのであり、知った上で統一教会を利用してきたのですから、山上容疑者の報復は因果応報と表現するしかないと思います

（関連記事）