犯罪心理学の准教授が妻を刺殺 「更生は可能か」の記事
さいたま少年鑑別所の統括専門官だった浅野法代さんが殺害された事件について、週刊誌「FRIDAY」掲載の記事では「刑務官である妻」というタイトルになっています。記事を書いた林壮一の誤りなのですが、訂正されないまま第二弾の記事が掲載されています
一般の方にはどうでもよい話でしょうが、職名が統括専門官であり、官名は法務教官と書くのが正く、少年鑑別所勤務の職員は刑務官ではありません
つまり、林壮一は本当に取材した上で記事を書いているのか、疑わしく思われるのです。「FRIDAY」の編集部には官名を誤っているとの指摘がいくつも寄せられているはずですが、訂正する気はないようです
刑務官である妻を殺した”犯罪心理学のプロ”は「更生」可能なのか
1995年から法務省で働き始めた浅野と妻は同期であった。2年目の研修で出会った2人は愛を育み、1998年に結婚。妻・法代はまさか、その22年後に2歳下の夫によって自身が殺害されるとは、思いもしなかった筈だ。
3人の娘に恵まれ、仲睦まじく暮らした時期は過ぎ去り、事件の1年ほど前から、夫婦はほとんど会話の無い生活が続く。浅野は弁護士に離婚を相談するようになり、次女が通いやすい川崎市登戸にマンションを借りて、別居を選択。
ほどなく次女との関係も悪化し、「妻と次女が結託して自分の財産を奪おうとしている。自分を自殺に追い込もうとしている。殺すか、殺されるかの真剣勝負が始まった」と感じて、犯行に及んだ。
事件時、浅野は鬱病を発症して通院しており、妄想性障害に罹患していた。検察側は「心神耗弱ではあったものの、直接、妻や次女を殺しにくるような切迫したものではなかった。身勝手で自己中心的な犯行」とし、懲役10年を求刑した。
一方、浅野の弁護士は「妄想が存在していたことは疑いようがありません。妄想が不可思議に発展したからこそ、事件に発展したのです。文教大学で“申し分のない先生”と評価されていた被告の人格と、行動の乖離が大きい。温厚な人が妻を殺害するに至ったのは、妄想が入り込んでいたからこそです。行動をコントロール出来ていたら、(凶器となる)包丁を買ったり、メモを作ったりは出来ない。浅野さんは、医療観察の下で治療を受けなければいけない。刑罰ではなく、治療が必要なのです」と無罪を主張した。
さいたま地方裁判所の小池健治裁判長は、5回目の審理で出廷した西川寧医師の鑑定結果を重視した。西川医師の所見は、「妄想性障害の影響により、浅野は視野狭窄に陥って犯行に及んだが、次女の殺害は一度躊躇(ためら)っており、論理的な判断は出来る。思考は一定程度残されていた。妄想の圧倒的な影響を受けていたとは認められない」とした。
主文を読み上げた後、小池裁判長は被告に向かって「浅野さん、判決はわかりましたかね?」と話し掛けた。浅野正が「はい」と応じると、裁判長は言った。
「あなたに、正常な判断が出来る部分があったというのが、当裁判所の判断です。今後、治療を受けることになると思います。かつて愛情を感じた人を殺害した行為について考えることが出来るようになった時、きっと苦しむことになると思いますが、刑に服して引き起こしたことを見つめ直して頂けたらと思います。今後のことは、よく弁護士先生と相談して下さい」
浅野正は6度に及んだ審議の際も、判決を言い渡された日も、いつも同じ服装をしていた。スポーツ刈りが伸びたような白髪交じりの頭髪に、顔の半分以上を覆い隠した白いマスク。薄い茶色の皴(しわ)の目立つジャケット、白と黒のチェックのシャツに、茶色のスラックス。妻を殺害した3月ならともかく、初夏を感じさせる季節には、場違いな出で立ちだった。
私は本件に関する裁判の全てを傍聴したが、浅野の目は虚(うつ)ろで、終始ぼんやりしており、病が深刻であることが窺えた。だが、その反面、5月24日に行われた4度目の審議における被告人質問の折には、驚くほどハッキリとした口調で、自身の来し方や殺害の経緯を語った。特に、法務省に勤めながら、南イリノイ大学院に留学した時期についての供述は、弾んだ声で応対した。
(以下、略)
読んで判る通り、浅野被告の側に寄り添った記事の書き方になっています。なので、殺害された浅野法代さんの遺族・関係者に取材しているようにも思えません
浅野被告が毎回同じ服装で公判に姿を見せているのは、彼が精神的に崩壊して服装に無頓着になっているからであるかのような書き方になっていますが、どうなのでしょう。浅野被告に親族が衣服を差し入れていないのではないか、という気もします。娘たちは母親を殺害した浅野被告のため衣服の差し入れなどしないでしょう。あるいは差し入れがあっても、その衣服を着るのを拒絶している可能性も考えられます
さて、記事の引用部分の末文では、浅野被告が公判で南イリノイ大学への留学時代を明瞭に語ったと記されています
以前にも書いたように、法務省からは南イリノイ大学に毎年のように留学させており、人気のコースです。そして、留学した法務省職員の中には帰国後、法務省を辞めて大学教員に転じる者が少なくありません。なので、この時点で浅野被告も大学教員への転職を模索していたのであり、留学がかなったのが嬉しかったに違いありません
ただ、その反面、妻の法代さんは幼いこどもを育てつつ日本に残って勤務を続けていたのではないでしょうか?
ワンオペ育児で相当にしんどい思いをしたはずです
加えて、少年鑑別所でも少年院でも、あるいは刑務所でも管理職は女性であっても監督当直勤務があり、5日から8日に1度(施設の規模によって異なります)は当直として泊まり込みで務めなければなりません。その際、実家でこどもを見てもらうなりしなければならず大変です
記事を書いた林壮一はそんな法代さんの苦労には思いが及ばないようで、夫婦仲が悪化したのは事件の1年前だと書いています。実はもっと前から夫婦間の亀裂があり、葛藤が繰り返されていたのでは?
浅野被告は自分のことばかり優先で、子育てに協力しない父親であったと推測されます。そこに目がいかないまま、事件の記事を書いても説得力に欠けます
医療刑務所で精神疾患のある受刑者にどのような治療が行われるか、林壮一がまったく取材していない点も気になります。「オレのほうが詳しいんだぞ」とマウントを取るつもりはありません。もう少し丁寧に取材した上で記事にしてもらいたいものです
「更生は可能か」と問われれば、昨日も書いたように「やってみなければわからない」というのが実際です
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