犯罪心理学の准教授が妻を刺殺 浅野被告の妄想とは

メディアは記事を掲載する際、十分にチェックを入れているはずですが間違いはあります。当ブログも誤字脱字、誤変換あるあるで、そこは私的なブログだからとご容赦ください
犯罪心理学を教える准教授浅野正が妻を殺害した事件の公判の模様を「FRIDAY」が記事にしているのですが、タイトルが「なぜ刑務官である妻を殺したか」となっているのを見てのけぞってしまいました。殺害された浅野法代さんは刑務官ではなく、さいたま少年鑑別所に勤務する法務教官です。これだけ堂々と間違えると、ライターの能力に疑問を持たざるを得ません
元法務省職員として、こうした間違いには溜息が出てしまいます
さて、本題に入ります。前回は殺害された妻法代さんが書き残したメモを中心に、夫に抱いていた不満の数々を取り上げました。今回は浅野被告が殺害に踏み切るまでの経緯が中心の記事です


「衝撃裁判」犯罪心理学のプロはなぜ刑務官である妻を殺したか②
2020年3月9日、浅野正は妻、あるいは次女を殺害しようと、浦和を訪れた。妻、法代が次女の転入届を出しに来ると予想し、11時から14時まで市役所で待ち伏せるが徒労に終わる。そこで、法務省職員宿舎に場所を変えて張り込むと、次女と三女が現れた。
正は2人の娘を尾行する。彼女たちは徒歩で武蔵浦和駅まで移動し、100円ショップに入った。正は、店内で次女を刺殺しようと考えたものの実行出来ず、更に娘たちを尾行し、官舎に戻る姿を見届ける。
正は法廷で、その時の胸中をこう語った。
「つけました。殺そう、刺せると思いました。でも、刺せなかったです。刺そうという気持ちが完全に失われたので、越谷のマンションに帰りました。自分の内面を変えないと刺せないと思いました」
そして、A4紙の表裏を利用して、計7枚のメモを作成。「人違いでないかよく確認する」「背中を刺す。そして胸を刺す」「用意するもの、包丁、帽子、マスク」「特に昼休みが大切」「人に止められるまで、何度も刺す」「すぐに逮捕され、警察」「自殺より、他殺の方ができる」「出所後、自殺」「最初の一発が致命傷」「しっかりと殺し切る」「やらなければ自殺」「刑務所で一生やっていける」「相手は自分を殺すと考える」「この際、妻でも娘でもいい」などと記した。
正は2022年5月24日に行われた被告人質問の折、証言台に座って弁護側、検察側、そして裁判官からの質問に答えたが、その口調は実にしっかりとしたものだった。特に、心理学者としての自身の足跡を述べる際は、言葉に力が籠っていた。
(中略)
この日の正の証言で最も衝撃的だったのは「今でも次女への怒り、殺したいという気持ちがあります。仲良く暮らしていた頃のことを思い出して、複雑な気持ちになったりします」というものであった。
2022年5月17日の法廷で、次女が父親について「一言では言えない感情を持っている」と証言したことについて正は「もっと僕に対して敵意を剥き出しにしてくると思っていました。どうしても殺したいという気持ちを抑えられなくなっています」と言った。
(中略)
(精神鑑定を担当した)西川医師は、自らの所見を以下のように述べた。
犯行時、正は妄想性障害に罹患していたと診断した。が、被告人は子供を刺すことに抵抗があった。また、刑務所内で生活出来る等、一般的な理解がまったく出来なかった訳ではない。妄想性障害が酷いと、それに支配されて生活が送れなくなる。正の妄想性障害は軽度から中程度であり、彼が語る「非現実的世界」は、妄想に没頭していることを示している。こういった表現が出来るということは、「現実的世界」があるということでもある。
もし、事件当日にバス停で顔見知りの人に「あっ、浅野さん」と声を掛けられていたら、犯行は起きなかったと思う。世間話をしようと思ったら、出来ただろう。
また、正は鬱病となった自分を大学の幹部たちが辞めさせようとしていた、と証言したが、妻を殺害することと、大学を追い出されそうになることは、まったく別だ。大学への妄想が大きいとは思えない。今回の事件は、妻、次女への妄想が起因していると考えられる。
検察側は、この鑑定結果を有力な手掛かりとして、「被告人は日常生活を送る能力があった。犯行の経緯を合理的に述べており、妄想はあったが犯行と直接結びついていない」と、懲役10年を求刑した。
(以下、略)


妻だけでなく娘たちまで殺害しようと思っていた浅野被告ですが、犯行には踏み切れまでんした。それでも次女に対しては「今でも殺したい」と公判の場で口にしています。ただ、「殺したい」と口にするだけで本当に殺せるかは別問題なのでしょう。そこまで憎悪を膨らませた原因がどこにあったのか、これまでの報道を読んでもはっきりした原因があるようには見えません
となれば、浅野被告が妻や娘とのいざこざ、感情的なしこりを元に被害妄想を膨らませ、「殺すしかない」との思いをエスカレートさせたと考えるしかありません。また、鬱病になった結果、大学は自分を解雇しようとしているとの被害妄想を抱いた、と報じられているように家庭環境や職場環境から被害妄想を膨らませ、自らを追い込んだ…という解釈ができます
ただし、浅野被告の妄想に影響された認識と、我々が横から見ていて得られる印象との間には大きな違いがあるのも忘れてはなりません
検察は妄想に影響された犯行という部分を完全には否定しきれず、殺人事件にしては大幅に割り引いた懲役10年の求刑をするしかなかったのでしょう
浅野被告が刑に服するのは当然としても、壊れてしまった家族をどうするのかという問題はそのまま残されます
10年(未決で勾留されている日数がそのまま服役したものと換算されますので、実際に服役する期間はもっと短くなります)後、浅野被告が満期で出所したとしても、殺意を向けられた娘たちが父親を受け入れるはずはないと想像します

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