大阪倉庫放火 損害は80億円
放火は江戸時代に死罪とされ、重罪扱いされていました。木造建造物ばかりだった街中で火災が起きれば、周囲を巻き込んで甚大な被害を及ぼすからです。現在でも放火は重罪であり、現住建造物等放火罪は「死刑、または無期もしくは5年以上の懲役」と定めています
強盗殺人や不特定多数を殺害する目的での犯行以外の放火で死刑判決が下される例はないとしても、多大な損害を与える犯行であり、世間からは厳しい眼が向けられます
大阪市の日立物流倉庫が放火され、焼失した昨年11月の事件では、派遣社員として働いていた男が逮捕されています。事件当時19歳でした
大阪市此花区の人工島・舞洲(まいしま)にある物流会社「日立物流西日本」の倉庫で昨年11月に起きた放火事件により、日立物流側に少なくとも約80億円の損害が生じていたことが14日、同社への取材で分かった。大阪府警は同日、現住建造物等放火の疑いで逮捕した元派遣社員の男(20)=事件当時(19)=について、同社が賃借する別の倉庫にも放火しようとしたとして同未遂容疑で追送検し、捜査を終えた。
府警によると、男はいずれの倉庫にも派遣社員として勤務。「先輩から毎日仕事について注意され、暴力も受けていた。全てなくなれば離れられると思い、ライターで放火した」と容疑を認めているという。府警は追送検容疑について、起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。
昨年11月29日に起きた舞洲の倉庫の放火では、延べ約5万3千平方メートルのうち約3万平方メートルが焼け、鎮火までに5日を要した。
日立物流によると、損害額は倉庫の解体・撤去費などで約73億円、保管商品の代替輸送費で約6億7千万円に上るという。
今年1月14日、今回の追送検容疑となった大阪市西淀川区の同社の倉庫でもぼやが発生。当時ここに派遣されていた男が先の舞洲の火災も含めて関与を認めたため、府警は舞洲での放火容疑で逮捕していた。男は1月末から約4カ月間、刑事責任能力の有無を調べるため鑑定留置され、今月2日に起訴された。
追送検容疑は1月14日午前、大阪市西淀川区中島の5階建て倉庫の日立物流西日本が賃借する区画で、薬品が入った段ボールの上に置いた紙に火を付け、倉庫を燃やそうとしたとしている。けが人はなかった。
(産経新聞の記事から引用)
下記の関連記事にも挙げておきましたが、埼玉県にある寝具メーカー西川産業の倉庫に放火した事件は懲役4年の判決でした。被告には軽度の知的障害があったとして、その分減刑されたものと考えられます
大手企業の場合、火災保険に加入していますので被害額の内のいくらかは保険金で賄われるとしても、すべての損害がカバーされるはずもなく、企業が穴埋めしなければなりません。倉庫を管理する幹部社員たちは責任を問われ、降格されたりボーナスが吹き飛んだりします
下請けとして作業させている派遣会社の社員の待遇が悪いからこうなる、との意見もあるわけですが、組織の問題だけでなく個人の資質も絡んでいるのでしょう
実際、派遣会社が個々の派遣社員の性格や人格を把握できているはずもなく、十把一絡げで契約先企業に派遣しており、その分あちらこちらでトラブルも起きています。派遣という雇用形態に依存するのも考えものです。終身雇用を脱して労働力の流動性を高めることが日本の将来のためには必要、などと竹中平蔵らが主張していました。その竹中平蔵は人材派遣大手のパソナグループ会長です
さて、本件の場合、派遣会社がどれだけ損害を補填するのか、会社同士の力関係で決まるのかもしれません
逮捕された元派遣社員に数億円もの賠償を担う資産などないのであり、自己破産の手続きをして免責を得るのでしょう
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