中国アニメの現在 スポ根ヒーロー物もいまいち

こどもの日にちなんで、というわけでもありませんが久し振りに中国アニメの話題を取り上げます

今年１月の報道で、中国の中央広播電視総台（チャイナ・メディア・グループ/CMG）が２０２２年の新作アニメ２１作品を発表した、とありました。コンセプトは「中国精神、中国文化、中国パワー」を表現する、というものです。少年ジャンプの「友情、努力、勝利」に比べ、ダダ滑りの悪寒がするわけですが

習近平国家主席の広げた大風呂敷が「偉大な中国の復活」ですから、それに迎合しているのでしょう

目玉の１つが、北京冬季オリンピックにも絡ませたアイスホッケーアニメです

こうしたスポ根ヒーロー物については、日本に「巨人の星」、「あしたのジョー」、「アタックNo.1」、「キャプテン翼」、「SLAM DUNK」といった系統があり、視聴者に強い印象と深い感動を与えてきました

さて、中国のスポ根アイスホッケーアニメはどのようなものなのでしょうか？

「氷球旋風」は中学1年生の12歳の少年シャンジンが主人公です。アイスホッケーに情熱を燃やし、少年アイスホッケークラブ「旋風」に参加してプレーを学ぶ姿を描いています。厳しい監督の指導のもとで、シャンジンは無謀で無知な少年から前向きで粘り強くプレーする若者へと成長していきます。チームメイトと友情を育み、互いに励まし合いながら切磋琢磨する姿を描いた作品…のようです（中国語サイトからの機械翻訳をかいつまんだものです）

《冰球旋风》 第20集

よく作っているとは思うのですが、作画は最新の３DCGなのに随分古臭い絵のように映ります。１９７０年代のアニメを観ているかのような錯覚に陥ります

感覚の古さなのか、作り手の好みなのか？

中学生のアイスホッケーチームですが、男女混合の編成で試合をしているのはどうなのか、と突っ込みたくなりますが、男子だけではドラマにならないため、女子も混ぜたのか。あるいは実際に中国では中学生くらいまでは男女混合チームで試合をさせているのか？

まあそれはともかく、表現力不足は否めないのであり、なんとも薄っぺらい物語になっているのが残念です

対して、「SLAM DUNK」の漫画原作の一部を引用します。４分２３秒という尺なのですが、これほどまでに奥行きのあるドラマを表現できていることにあらためて驚かされます。キャラクターの表情の見せ方、切り取り方のセンスも優れていますし、現在進行系である山王高校との試合に過去の回想シーンを巧みに織り交ぜながら１人１人の思いを浮かび上がらせる構想力が見事です。中国アニメにこの表現は不可能でしょう

【スラムダンク】山王戦ハイライト

こうして見比べれば、韓国や中国のアニメが日本に追いつけないのはなぜか、というのが分かるのではないでしょうか？

見栄えの良い、カッコいいキャラクターを並べたところで、物語に深みも幅もなければ単調なだけです

「SLAM DUNK」は劇場版の制作が進行中であり、おそらく山王戦がたっぷりと描かれるのではないかとの期待が高まっています

井上雄彦の作品としては吉川英治の小説「宮本武蔵」を漫画にした「バガボンド」もアニメ化を望む声があり、これも実現すれば日本のアニメの歴史に新たなページを加えることになるでしょう

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