福島祖母殺害 19歳を起訴し実名公表

先日、福島家裁郡山支部で検察官送致となった強盗殺人事件の少年について、検察が起訴し実名を公表しています
自分の祖母を鉄パイプで10回以上殴打して殺し、銀行のキャッシュカードを奪って金を引き出し、彼女にプレゼントを贈るという何とも呆れた犯行です。情状酌量の余地もないでしょう
地元メディアの報道を2つ、引用します


福島県塙町で起きた強盗殺人事件で、検察は被害者の孫で19歳の鈴木敬斗被告を強盗殺人などの罪で起訴した。福島県内で検察が起訴した18歳・19歳の特定少年の氏名を公表するのは今回が初めて。
起訴状によると、福島県矢祭町の建築板金業・鈴木敬斗被告は2022年2月に塙町の住宅で祖母の頭を持っていた鉄パイプで十数回殴って殺害し、キャッシュカードなどを奪って口座から現金300万円を引き出したとされる。
鈴木被告は19歳だが、改正少年法が施行されたことから福島地方検察庁郡山支部は起訴にあわせて鈴木被告の氏名を公表した。福島地検は「改正少年法の趣旨などを踏まえて本件は重大事案で地域社会に与える影響も深刻であることから諸般の事情を考慮し氏名を公表する決定をした」としている。
家庭裁判所郡山支部は「刑事処分が相当」として5月9日に鈴木被告を検察へ送り返していた。
今回の事件について福島テレビでは、結果が重大で社会的影響も大きいことや法改正の趣旨も踏まえて総合的に判断し実名で報道することとした。
(福島テレビの記事から引用)


背景どこまで考慮 福島大・高橋有紀准教授(刑法)
今回の事件では、実名公表にあたって生い立ちなど配慮すべき点を考慮しづらかったと受け止めている。しかし、どうして事件が起き、検察が実名を公表する際にどこまで背景が考慮されたのか社会で議論を重ねる必要がある。
また、実名での報道は本来、刑事司法が適正に行われているか透明性を確保する観点で行われるものだ。一方、更生という観点から見れば、実名報道されること自体が烙印(らくいん)になってしまい、「悪いことを犯した人」という認識を強めてしまう懸念があるのは確かだ。
読者や視聴者の中には、検察官送致(逆送)された段階で犯行が極めて悪質という印象を持ったかもしれない。実名が出たからといって更生の可能性がないと受け取らないようにしてほしい。
検察の秘匿を危惧 専修大・沢康臣教授(ジャーナリズム論)
検察庁は特定少年とした19歳を起訴した場合、原則きちんと実名を含めて公開するべきだ。改正少年法が施行して1カ月が経過したが、検察庁が(特定少年の起訴を巡って実名を)非公表にしているケースが相次いでいるように見える。検察官が(実名を)秘匿する権限があるのか疑問を持っており、危惧している。刑事手続きを公開しなければ、市民の目が届かなくなってしまう。
報道機関は秘密処罰を防ぐため、市民に検証材料を提供することが重要な役割だ。ただ、それは制裁目的ではないことを心する必要がある。例外があることは否定しないが悪いやつだから書く、悪くないから書かないではない。刑罰がかかる裁判になる以上、誰がどう裁かれようとしているのか隠すべきではない。
更生へ実害大きい 少年事件に携わる倉持恵弁護士
特定少年の実名公表や実名での報道は控えるべきだ。実名公表で更生の可能性が低くなってしまう。東京などの大都市とは異なり、本県など地方は匿名報道でも特定される可能性がある。それが実名ならばなおさらだ。社会に戻って仕事を探す時、実名公表の影響で本人が職に就けないなど悪循環にもつながる。だからこそ、実名を公表すべきではない。もちろん事件に関する報道は必要で、再発防止や、必要な法改正に向けた提言など報道機関が担える役割は多い。ただ、そのために実名が本当に必要かは疑問だ。
更生の観点から見ても、実益より実害の方が大きいのではないか。実名か匿名かよりも、犯した罪に向き合わせ、きちんとした生活環境を整えていくことが大事ではないか。
(福島民友新聞の記事から引用)


成人の刑事事件であれば、微罪扱いの事件を除いて氏名が公表されるのが常です。性犯罪のように被害者が特定される場合は別ですが
したがって、成人が「実名が公表されたので更生を妨げられている」などと主張しても、笑われるだけです。もちろん、少年といえども同じであり、18歳であろうと19歳であろうと違いはありません
当ブログでは多くの事件を扱っているため、時折「ブログに実名が掲載されており、再就職の妨げになっているから削除しろ」と弁護士経由で申し入れが寄せられます。その主張に半ば呆れ、半ばうんざりさせられます
更生できないのは本人の意志の問題であり、後ろ指をさされようと陰口を叩かれようと、社会の中で立ち直った姿を示すという意地が不可欠でしょう。周囲の信頼を得るための努力を重ねれば、受け入れてもらえます(世の中には絶対に受け入れないという人もいて、いかに何を言おうが拒絶されるのは仕方がありません)
なので実名を隠せば更生できるかのような主張は大間違いだと自分は考えます

(関連記事)
福島祖母殺害 19歳孫に無期懲役判決
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202209article_26.html
福島祖母殺害 初公判で殺意否認する19歳
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/202209article_19.html
福島祖母殺害 19歳を検察官送致
いわき強盗殺人 逮捕した容疑者は服役中受刑者
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/502024820.html
いわき市で連続殺人 高齢者2人殺害される
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/498049974.html
伊那市強盗殺人 85歳女性殺害で容疑者逮捕
https://03pqxmmz.seesaa.net/article/501406232.html
甲府放火殺人 「家族全員殺すつもり」
甲府放火殺人 少年A(19歳)の生き様
寝屋川強盗刺殺事件 18歳と19歳被告の実名公表
寝屋川強盗刺殺事件 刺殺の19歳少年は検察官送致
ビットコイン殺人 共犯少年に懲役18年の判決
ビットコイン強盗殺人事件 主犯は無期懲役
日進強盗殺人事件を考える1 強盗目的を否認
日進強盗殺人事件を考える5 懲役8年以上13年以下
三重・中学生殺害事件を考える 犯行の狙い
三重・中学生殺人を考える5 懲役5年以上9年以下
「少年犯罪は厳罰化しても減少しない」説への異論
千葉女性監禁殺害事件を考える3 中野被告は無期懲役
千葉女性監禁殺害事件を考える4 主犯格少女は殺意を否認
千葉女性監禁殺害事件を考える5 主犯格少女も無期懲役
アポ電強盗殺人 懲役28年から27年の刑
呉市の宝石店強盗 中学生2人を逮捕

この記事へのトラックバック