木下ほうか 週刊誌を民事で提訴
存在感のある脇役俳優として活動していた木下ほうか(58)が、「演技指導をしてやる」などと理由をつけ、新人女優や女優を目指す女性に性的暴行を加えていたとされる事件で、これを記事にした「週刊女性」の発行元の主婦と生活社ら相手取り民事訴訟を起こしたと報じられています
民事訴訟を起こす権利は国民に保証されているわけですが、いかにも無理筋という感がします
最初にこの件を報じた「文春オンライン」を木下ほうかは訴えておらず、なぜ「週刊女性」だけを狙ったのか、不可解です
女優への性加害を報じられ、芸能活動を無期限停止中の木下ほうか(58)が22日、ツイッターを更新し、ニュースサイト「週刊女性PRIME」や「週刊女性」に掲載された記事が事実と異なるとして、発行元の主婦と生活社などを被告とした民事訴訟を東京地裁に提起したことを報告した。
木下は「令和4年4月11日に週刊女性PRIMEに掲載された記事及び同月12日に発売された週刊女性に掲載された記事」について、主婦と生活社及び担当記者を被告として提訴したことを報告。「私といたしましては、記事上の女性Sさんを強姦(ごうかん)した事実は御座いませんので今後は法廷の場において明らかにさせていただきたく存じます」との考えを明らかにした。
提訴の対象となった記事では、女優Sさんが15年に木下に性行為を強要され損害賠償を所属事務所に請求したことや、木下側が両名合意の元に性行為が行われたことなどを主張して賠償に応じなかったこと、それを受けてSさんが刑事告訴したことなどが報じられていた。
木下については、3月23日に「文春オンライン」で、女優2人が過去の「性加害」を告発する内容の原稿が掲載され、所属事務所の契約解消と芸能活動の無期限停止に追い込まれていた。木下は「文春オンライン」の報道については「報道について、事務所と協議していたことでご報告が遅くなり、女性の方々はもとより、関係者の皆さまに多くのご迷惑をおかけしてしまい、深くおわび申し上げます」と謝罪した。
その上で、一連の報道について「一部事実と異なる点や10年程度前のことで記憶にないこともございますが、おおむね間違っておりません。ただ、現在週刊誌から質問されておりますが、女性から明確に拒否されているにも関わらず関係を持ったことや、薬物を用いて関係を持った記憶はございません」と一部否定しつつ「それを前提としたとしても、私の軽率な行動の結果、女性の方々が心に深い傷を負ったことに間違いはございませんので、深くおわび申し上げます」とした。
さらに「女性の方々に対しては、本来であれば私が直接謝罪をすべきところではございますが、そのことでさらに傷つけてしまうこともあると考え、今後の皆様への対応につきましては代理人を立てて誠心誠意行わせていただく所存です」とし「このようなことをした私が、今後、皆様の目に触れる芸能活動を続けることはできませんので、芸能活動については全て無期限に休止させていただきます」としていた
(日刊スポーツの記事から引用)
上記の記事も含め、状況を整理しましょう。木下ほうかが問題にしているのはSさんという女性についてのみ、であり彼女との関係を報じた「週刊女性」の記事が事実と異なると主張しているようです
よって、Sさん以外の女性に対する性的暴行は認めているものと解釈できます
Sさんは木下ほうかを刑事告訴していますので、検察がこれを受理して起訴すれば刑事事件になります。他方で、Sさんは木下ほうか相手に損害賠償請求はしたものの応じてもらえない状態なので、今後は民事訴訟を起こす可能性があります
民事訴訟と刑事訴訟の違いですが、後者の方は警察・検察が取り調べを行い、証拠を整え、時にはさまざまな鑑定を実施して犯罪事実を裏付けた上で訴訟に持ち込みます。民事訴訟の方が訴えた側の弁護士が損害を立証する証拠を整え、訴訟に持ち込みますが、刑事事件ほど厳密な証拠を要求されるわけではありません
5年も10年も前に性的暴行について、木下ほうかは「証拠なんてないだろう」と決めつけているのかもしれませんが、被害者の証言に十分な信憑性があれば(当時の状況を説明した上で、かくかくしかじかのやり取りがあり、性的暴行を受けた)、具体的な証拠を欠いていても被害が認定される場合があります。Sさんのケースではまず刑事告発をし、検察に犯罪事実の立証をさせた上で刑事罰を求め、それを踏まえて民事で損害賠償を求める手順なのでしょう
なので、「証拠はないから罪には問われないはず」と安易に構えていると足元をすくわれます
最近の裁判傾向としても、「(性交について)同意があった」と主張しても脅迫や恫喝によって無理やり合意させられたようなケースでは、それが通用しないのであり、「合意があった」ですべてをチャラにできると決めつけるのは間違いです
問題になった映画監督など含め、いまだに「合意があった」と主張すればチャラにできると考えている人間がいるようですが
以前は確かに、酒を飲まされて酩酊状態の女性が明確に拒絶の意思を示さなかったので「女性が合意したものと男性(被告)思い込んだのは自然である」などとする、とんでもない判決が出たりもしました
追記:木下ほうかは週刊女性を相手取った民事訴訟を2023年6月に取り下げたと報じられています
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