19歳少年の実名報道は 少年法改正
甲府市の放火殺人で起訴された被告について、甲府地検は改正少年法の施行を受け実名で公表しています
各メディアが実名報道の是非を巡って大騒ぎし、「報道はいかにあるべきか」との記事をそれぞれ掲載しています
ただ、実名報道自体は事件の本質と無関係であり、単にメディアが大騒ぎしているだけです。些末な事柄でしかないものを、さも重大事のように扱い、字数も割いて記事を書いているのですから呆れてしまいます
「重大事案で、地域社会に与える影響も深刻」。8日午後3時ごろ、甲府市中心部の法務総合庁舎にある甲府地検で、岡本貴幸次席検事が特定少年の起訴を発表した。改正少年法施行に伴い、検察が特定少年の実名を公表したのは初めてだ。
岡本次席は最初に、実名入りの起訴状の一部を淡々と読み上げた上で、集まった約30人の記者に実名を明らかにした理由を説明。事件の動機や証拠の中身に関する言及は避けたが、実名を公表すると被告に伝えたかどうかを問われ、「していない」と付け加えた。
被告の弁護士は起訴を受け、これまで社会に実名が明らかにならないよう求めてきた経緯を踏まえ、地検の発表を「遺憾」とするコメントを出した。その中では、報道機関に対し「少年の健全育成、更生が不当に妨げられることのないよう、(実名報道の)必要性を厳格に判断し、内容や方法を慎重に検討することを求める」とした。
今回の改正少年法の施行に至る経緯には、実名報道を巡る歴史的な紆余(うよ)曲折がある。
現行の少年法61条は、少年の立ち直りの妨げになるとして、実名や顔写真の報道を禁じているが、罰則はない。戦前の旧少年法には罰則があったが、戦後になると、表現の自由を尊重する趣旨で禁止規定を維持しつつも罰則を廃止した。
戦後しばらく、61条は順守されない傾向があったが、日本新聞協会が1958年に少年事件報道の方針について「氏名、写真は、報道すべきではない」とする原則を発表。人権意識の高まりとともに、多くの報道機関が匿名報道を選択するようになっていた。
今回の法改正は、起訴された特定少年を61条の適用外とした。これに伴う実名報道の解禁には賛否両論があるが、報道各社は自主的に判断していくことになる。
(毎日新聞の記事から引用)
本来ならもっと長文の(中身のない駄文)記事を引用するべきところなのでしょうが、無駄なので止めます
大学教授、弁護士の中には実名報道が更生の妨げになると発言する人もいます。しかしそれは更生の本質を間違って解釈しているのではないでしょうか?
先日も書いたように神戸連続児童殺傷事件の犯人東慎一郎は医療少年院を出る際、別の名前を与えられ地縁も血縁もない広島へ移り住んだとされます。保護観察所が彼を見えないように隠し、ガードしたわけです。ただ、そんなやり方が更生といえるのか大いに疑問です
実名報道が更生の妨げになると主張する人たちは、18歳~19歳の非行少年が名前を伏せ、顔写真も出回らない環境の中で生きる姿を「更生」と呼ぶのかもしれません。ですが、本当にそうなのでしょうか?
彼らが地元に帰住すれば、皆が彼らの犯罪を知っているのであり、あれこれ言うでしょう。実名報道されずとも、事件を起こし逮捕された情報は地元に出回ります。悪さをし逮捕された彼らが少年院を出たから、刑務所を出たからといって更生したと認められるわけもなく、近隣の人たちは疑いの目を向けます。そうした視線に耐え、悪事をなさず、近隣の人たちの信頼と信用を勝ち取ってこそ更生と認められるのでしょう
「実名報道が更生の妨げになる」発言は机上の空論めいた話です
逆に、名前を変え、社会の中に姿を消した東慎一郎(大学教授や弁護士の理屈に従うなら、それは更生した姿です)ですら、「更生していない」といまだに一部のメディアから書かれる始末です
まあ、それは東慎一郎がいまだに被害者家族と向き合っていない=事件と向き合っていないためであり、要は名前を変え姿を隠したゆえ、被害者家族はいまだに彼を許してはいないためでもあります
メディアは犯罪少年を匿名で報道するか、実名で報道するかという形式的な議論を繰り広げるのでなかく、その先にある更生と刑罰に目を向け、もっと実のある議論をしてもらいたいものです
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