光市母子殺害事件 更生より極刑の判断は誤りか?
神戸新聞が少年法の改正にともない、20歳未満で死刑判決を受けた事件(神戸連続児童殺傷事件や光市母子殺害事件)を連続で取り上げ、更生の機会を与えるか極刑に処すべきかを問う記事を書いています
事件を振り返り、見直すのは十分に意義があるわけですが、同時に振り返る段階で重要な情報を切り捨ててしまい誤った判断に読者を誘導しかねない危険も伴います
光市母子殺害事件で死刑判決を受けた大月死刑囚を取り上げた神戸新聞の記事がまさにそれです
光市母子殺害、犯行時は18歳30日 更生より極刑、最高裁が判断
事件は凄惨(せいさん)だった。1999年4月14日、大月孝行(旧姓福田)死刑囚(41)は、集合住宅の一室で、当時23歳の女性を暴行目的で窒息させて殺害。泣き続けた生後11カ月の女の子も、発覚を免れようと床にたたきつけるなどして殺した。
大月死刑囚は当日、18歳と30日だった。犯行時少年で死刑が確定した事件はそれまで、いずれも被害者が4人だったが、この事件で初めて被害者2人で死刑が確定。犯行時「18歳1カ月」での確定も最年少だった。
成人と同様に刑事裁判にかけられた大月少年。12年半にわたった裁判は、死刑か否かで揺れた。今回の取材では、少年法に基づき、裁判の前に大月少年の性格や生い立ちなどを調べた山口家裁調査官らにとって、死刑は「想定外」だったとみられることが分かった。
少年審判は非公開だが、関係者によると、事件から約2カ月後の99年6月2日付の調査官意見書は「人格の偏りもあるが総じて未熟な段階にあり、可塑性(かそせい)を残している」と指摘した。「可塑性」とは、適切な教育や環境があれば立ち直る可能性のこと。家裁調査官は、長期間の施設教育を求めていた。
また、大月少年を収容した山口少年鑑別所も5月31日付の報告書で「人格の偏りは、まだ矯正教育による可塑性を否定するほど固まっているわけではない」とした。
ただし18歳という年齢から、調査官は「相応の責任を負う年長少年」と、同鑑別所も「分別のつくべき年齢」として刑事裁判を受けさせるよう進言した。
だが、2008年の差し戻し控訴審で死刑判決が下り、12年3月、矯正教育ではなく、死刑が確定する。
今月施行された改正少年法は、18、19歳を新たに「特定少年」と定め、家裁から検察官に送致する対象事件が広がった。従来の「故意に人を死亡させた罪」のほか、強盗や強制性交など多くの罪が追加された。成人に準じ、より行為が問われ、刑罰が科されることになる。
(中略)
犠牲になった母子2人の夫であり、父でもある本村洋さんの存在も大きかった。神戸連続児童殺傷事件の被害者遺族、土師(はせ)守さん(65)らと「全国犯罪被害者の会(あすの会)」で活動。裁判の軌跡は、少年法が「厳罰化」され、被害者の権利が拡大する道のりとも重なった。
死刑判断に異を唱えた裁判官もいた。12年の差し戻し上告審で、元最高裁判事の宮川光治弁護士(80)は反対意見を書いていた。
「この少年犯罪をどう見るか。司法は全部同じではない、というメッセージを社会に投げかける必要があった」。死刑という量刑判断で裁判官が全員一致とならない初の事件だったという。
(以下、略)
長文の記事なので一部を省略して引用しています。省略部分を含めて、この裁判を巡る場外乱闘とも言える弁護側と被害者側の応酬には触れていません。弁護側には死刑廃止を主張する人権派とされる弁護士が多数集まり、大月被告の死刑判決を批判する論陣を張りました。死刑廃止を一般市民にアピールするシンポジウムの場で弁護士らは、この事件の被害者である本村さんを槍玉に挙げ批判しまくったのです
確かに本村さんは被害者の立場から大月被告の死刑を求める活動をし、メディアにも登場して訴えていました。が、それは被害者として当然の行動であり、社会通念として許容されるべきで、人権派弁護士から名指しで批判される行為だったとは考えられません。しかし、人権派弁護士たちは殺人事件の被害者家族を批判し、死刑に処すべきとの訴えを否定し批判したのです
世間一般の反応としては大月被告の残虐な犯行を挙げ、更生の機会を与えるより死刑を望む声が一弾と高まりましたし、弁護団への批判も寄せられました
加えて大月被告が、「無期懲役になっても長く服役することはなく、すぐに社会復帰できる」という趣旨の手紙を知人に送っていたと報じられると、大月被告への非難が一段と高まりました。「雄犬がメス犬と出会い、やっちゃっただけ。これで罪になるのか?」との表現も、反省が感じられないと問題視されました
上記の記事の趣旨からすれば、大月被告の発言は18歳とは思えないほど未熟で幼稚な人間だったという証なのでしょうが、世間はそれを許さなかったのです
あるいは死刑廃止運動の尖兵でもある安田弁護士による公判での弁論、「ドラえもんに生き返らせてもらうつもりだった」とか「首に蝶々結びをしただけ」など、一連の発言も問題視されたのですが、ここでは省略します。当ブログの過去記事を読んでいただければ、この人権派弁護団の無茶苦茶な主張が読めます
先に当ブログで書いた「神戸連続児童殺傷事件と匿名性を考える(続き)」で引用した弁護士の発言を借りるなら、「本来、更生とは、自分の犯した罪と向き合わないかぎり、成しえないものです。しかし、日弁連は加害少年を被害者と向き合わせようとしない。被害者と向き合わせると、更生が妨げられると考えているのです」とあるように、人権派弁護団はひたすら大月被告を庇い、甘やかし、増長させ、罪と向き合わないにさせたと言えるのではないでしょうか。もちろん、被害者である本村さんとも向き合わないように
大月被告はこの先、再審請求をするかもしれませんが、事件と向き合わずに再審を求めるなど笑止千万です。それとも40歳を超えてもまだ未熟なままなのでしょうか?
上記の神戸新聞の記事は大月被告の何を問いたいのか、さっぱり分かりません
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